異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

93.光の精霊術士と領主の、二つのうわさ話

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 カインハウザー様は、鍛冶氏のオジサンに、穢れを祓った事を、口外しないように依頼した。
 オジサンも、それを承知した。

 理由は、今回は、くだんの巡礼者から落ちたてのけがれでまだ濃度も低く、カインハウザー様のリードがあればこそ、祓いやすかったから出来た事で、またこの先、濃厚な穢れや瘴気を発見しても、私が必ずしも祓えるとは限らないから。

 巫女の代わりが出来ると、期待させたり、頼みにしたりしないように、街の人達のためでもある。

 でも、人の口に戸は立てられない。
 街の人達は、神殿にいい感情がない人も少なくないようで、カインハウザー様に指示されずとも、私の事を口にはしない。
 けど、街道へ向かう旅人には、アリアンが光の霊気弾を撃ち込むところを見ていた人が居たらしい。
 後に、ハウザー砦街で、金髪巻き毛の少女が、光の精霊術で穢れを討ち祓っていたとの噂が、王都や周辺の街で流れる事になる。




 件の巡礼者は、早朝、北の砦門が開くとすぐに、北の隣国へ向かって旅立った。

 迷ったそうだけど、結局、リリティスさんが、小さな風の精霊に言霊を預けたそうだ。

『我がハウザー砦街を立つ巡礼の者、道中で穢れの気配を拾い、成長中。
 現在、当国には巫女・光の精霊術士共にひとりもいないため、対処出来ず申し訳ない。
 瘴気になった場合、処置できない為、また、本人に告げて動揺からの闇落ちを防ぐため、そのまま通したので、注意喚起すると共に、もし大事あればそちらで処理される事を希望する。
 願わくば、何事もなく通過されますよう女神に祈ります』
と。

 隣国に丸投げとなるが、対処できる人が居ないのだから、仕方がない。
 知りつつ放置したとなじられることを覚悟で、何かあってからでは遅いと、伝える事にしたそうだ。
 瘴気になる前に、何とかなると信じたい。






「昨日、鍛冶屋のオヤジさんの前で、カインハウザー様と愛を誓ってたって本当ですか?」


 ──は?


 件の巡礼者が何事もなく街を出たのを見送ったあと、お屋敷に戻ろうとしたら、街中の大通りからお屋敷のある丘への分かれ道付近で警邏中の衛士が、恐る恐ると行った感じで訊いてきたのだが……

「あの、何かの間違いじゃ……」

 ヤバい。顔に熱が集まるのを感じる! ここで赤面したら、肯定してるみたいに思われる!

「今、街でその話が持ちきりなんですよ」
「いえ、なんで鍛冶屋の前で、誓い合うんですか、おかしいでしょう?」
「いやぁ、俺もそう思ったんですがね、あまりにもみんなが言うんですよ」

 いいながら衛士隊員本人も、多少はおかしいと思うのか、首を捻りつつ続ける。

「なんでも、わざわざ仕事中のオヤジさんを呼び出して、店の前で抱き合って、カインハウザー様が愛を囁いたとか、ふたりで誓い合ったとか……」
「教会で、神様や神官の前とか、村長や領主の前でならともかく、鍛冶屋のっておかしいでしょう?」

 声が震えるのを必死でこらえて、もっともらしく否定してみるけど、そうか~そうダヨネ~とはならない。

「でもねぇ、みんな一様に、見てたように話すんですよねぇ」
 ずいぶん引っ張るのね。そうですよね、で終わってくれない。

「なにせ、カインハウザー様ご自身が領主さまですし、世話になってる、商工会の代表であるオヤジさんに証人になってもらったんじゃないかって……
 中には、今年の収穫祭で、結婚披露されるんじゃないかって期待する人達もいてですね……」
「待ってください、カインハウザー様は立派な大人で、准貴族の騎士爵領主さまですよね? 私は、未成年の子供ですよ? 私がお相手だっていう大前提が、すでにおかしいですって!」

 何とか、鍛冶屋の前で抱き合ってたというネタから離れたい。あれは、断じて、抱き合ってた訳じゃないし、カインハウザー様は背後から寄り添って、魔力や霊力のコントロールをリードしてくださっただけだもの。

「自分も最初はそう言って否定したんですが、ひとりふたりじゃない人数が言うもんですから、こりゃ本当なのかと…… 確認せずにはいられないって言うか……」
《ソレを、当の本人に訊くのハ、悪手ジャナイ? 肯定するハズないじゃナイノ》

 サヴィアンヌが言うのももっともだと思うし、事実じゃないんだもの、否定するわ。

「妖精王、それはそうですが、この恥じらいようを見ると、信憑性が出るというか……」
「人前でいちゃいちゃしてたとか言われたら、たいていの人は赤くなると思いますけど!」
「小さな領主夫人レイディって親しまれる愛称も、正にって言うか……」

 まだ言うか、この人は……

 カインハウザー様とリリティスさんが一緒でなくてよかった。
 おふたりは、町内警邏係の衛士隊四班の人達と一緒に、くだんの巡礼者からこぼれ落ちたけがれや瘴気に変わりそうな蟠り わだかま のタネがないか、確認に行ってしまわれた。

 カインハウザー様には訊けないから、私に訊いてきたんだろうけど……

「とにかく、そんな事実はありませんから!」

 中途半端に、カインハウザー様にリードされて穢れ祓いをしたとか言ったら、まだ頼れないアリアンの成長の事や、寄り添ってるようにしか見えない体勢は事実だと話さなきゃならなくなるから、そんな事実はないとしか言えない。

 まだ納得しきれてなさそうな、まだ言いたげな衛士隊員を置いて、お屋敷でのお手伝いが残ってるからと、話を切り上げ、逃げるように戻った。




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