異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

102. 聖女と巫女の、瘴気浄化術

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「それでは、始めま~す」

 片手を高くあげて宣言するサクラ。

 少し距離を置いて、動けない瘴気の前に立ち、サクラとミヤコが向かい合い、両手を取り合って目を瞑る。

 二人が、精神統一か、目を閉じたまま何か呟き、サクラのふわふわの髪の中から、小さな光が飛び出した。

「蛍?」
「なるほど、一応巫女を名乗るだけはあるな……
 あれは、アリアンと同じだ。光の精霊だが、名付けの契約がなされていて、サクラの守護と、精霊術の手助けをしているらしい。だから、精霊が見えないリリティスにも見えるだろう?」

 マスターとの契約により存在値が固定された精霊は、シオリのアリアンロッドと同じでサクラの一部として存在し、通常の、精霊眼を持っていない者にも、見ることは出来る。

 では、本当に精霊術を使い、光の精霊で穢れを祓えるのか…… 自然と手が震えた。

 それは、ロイス達衛士も同じ事で、彼らは、去年まで騎士として、主の率いる黒翼隊で、魔祓いをしていたのだ。私よりも、久し振りに見る巫女の力は感慨深いだろう。

 サクラのまわりをくるくると飛び回る蛍のような光の精霊は、どんどんスピードを増し、花畑に元いた精霊達を巻き込んで大きくなっていく。

「お、おお……」

 誰知らず、あるいは皆が、自然と声を漏らす。

 聖女と巫女のふたりを包み込めるほど大きくなると、一度静止滞空し、震えたかと思うと、眩しくて目が開けられないほどの輝きを放ち、瘴気に向かって一直線に飛んでいった。

 マグネシウム鋼が燃えるような音を立て、目を閉じても判るほど辺りが光に満ち、やがて治まると、固唾を飲んで見守っていた全員の目が開かれる。

「おお……!! しょ、瘴気が消えている!」

 瘴気が蟠っていた場所は、そこだけポッカリと花を摘み刈り取られたように、ただ土だけの地となっていた。
 黒々とした焦げ痕のような、地に染みついた穢れもすっかり脱けて、辺りのどの地よりも清浄な空間となっている。

 シオリが放った、光の精霊の槍は、なくなっていた。


「では、領主カインハウザー殿。我らはこれにて」

 慇懃無礼に頭を下げた神官達に促され、少女達三人は、馬車を待たせた街道へと戻っていく。

「お礼とか報酬とか、今後の事とか、何か話はないんですかぁ?」

 サクラが、自分の背を押す女神官に訊ねるも、彼女は冷たくあしらうだけだった。

「これは、巫女様方のお役目であり、国を、世界を救うのは、何物にも代えられぬ功徳。報酬の有無で行う行為ではありませぬ。
 穢れが溜まると、瘴気になる前に祓う、瘴気や闇落ちが出れば、浄化する。
 それが、この世界における、巫女様方の存在意義でございます」
「……ただ、あの者達が感謝の意を表して、供物を差し出すのは、彼らの心根次第にございますよ」

 遠回し……と言うかわりとストレートに、代価は取らぬが、感謝の気持ちを示せと言って来ている。

 まあ、瘴気を浄化できねば、やがては国そのものがすべて冥界に沈むのだから、金を出そうが出すまいが、祓うのが神殿と巫女の役目ではある。
 が、彼らも生きているのだ、霞を食べて暮らしている訳ではない。それなりの誠意は見せろという事だろう。
 しかし、国から、神技を磨き神官達を養う為の予算も、各神殿の規模に合わせての補助金も、貴族達の多額の寄付もあるだろうに、まだ民草から毟り取るのか。

「あからさまに金出せって言ってません?」
「ロイス、あなた達あなたとナイゲルはいつもひと言多いのよ」

「まあ、何かそれらしい物は考えておくさ。後から目をつけられて、取り上げられない程度で、かつ彼らが大喜びする価値のある物をね」

 すでに、主の中では、それは、決まっているようだった。

「サクラの使役する精霊に取り込まれていった、元からここに居た精霊達はどうなったのかしら?」
「ああ、もうリリティスには視えないのか。そこらにいるよ。術が解かれれば個々に戻って、瘴気も穢れも消えた花畑を、祝福してまわってるよ」

 どうやら、通常の営みに戻っているらしい。

 なんだかサクラの天真爛漫さに、力が抜ける思いだったが、これで、やっとこの付近の瘴気の脅威はなくなったのだと、綺麗になった土地を見て、ジワジワと実感が出て来た。

「しかし、あの巫女の精霊は、小さいながらもなかなかの精霊力を持っているようだね。更にその精霊力をミヤコが増幅して、この辺り一帯の穢れも祓ったようだ」

 主は、冷静に聖女の能力を測っていたようだ。

「まるで、初めてフィオちゃんが街に風を通した時のようですね」
 ロイスも、まわりを確認しながら感心する。

「そう言えば、ロイス、あの時みたいに地に額をつけて感激したり拝んだり、今回は泣かないのね」
「あっ、あれは、本当に、感激して……! フィオちゃんから与えられる霊気と祝福は、本当に女神に祝福されたかのように、体中がフワッと温かくなって、幸せな気持ちで満たされたんですから」
「ロイスも、あの巫女の精霊力と、フィオは、違うと思うか?」
「まったく違いますね!」

 ロイスは力一杯否定するが私には、魔力、霊力、大気と大地のマナの吸い上げる量などが、私達に比べて大きいな、良質だな、くらいにしか判らない。
 魔道を扱う者としては、三流以下の才能だと思い知らされる気がした。

 そんな事を話しながら街道に戻る頃には、巫女達の準備は済んで、馬車が発車するところだった。





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