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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
24.暖かな畑と暗い森
しおりを挟む市場を後にし、八百屋のオバサンの案内で、町外れの広い斜面にやってきた。
《へぇ、いい花じゃナイノ》
《あ! 女王ダ》
《妖精王サマ~》
《アタシの祝福した花を見てくダサイ》
花畑を祝福して回っている妖精たちが次々集まってくる。
この広い花畑に、ちょっと人数が少なくないかしら?
《言っとくケド、アンタの田んぼの向こうの花畑が異常なんだからネ》
え? そうなの?
妖精たちが集まってくるのを見て、オバサンは驚いていた。
「え、ちょっとすごいじゃないかい。アンタ、まさか本当に妖精たちの元締めかい?」
《マァネ? この花畑は、いい風と光に恵まれテ、この子達もいい仕事が出来てるみたいネ。アンタのムスコの仕事ぶりが窺えるワ》
「嬉しいね、妖精の元締めに褒められるなんてさ。息子も喜ぶよ」
色とりどりの花を見て廻っていると、同じくらいかもっと広い斜面に、野菜が作られている場所に出る。
「ここは、もう一人の息子さんの?」
──寒い
一言で言うと、寒気がした。ぽかぽか陽気なのに。
畑の切れ目から向こうは森が続いている。昼間なのに薄暗いのが不思議だ。背の高い木が多いから、光が届かないのかな?
広葉樹ではなく、針葉樹が殆どだ。
ドイツのシュヴァルツヴァルトなんかも、密集して植わっているトウヒの木で暗くなるほどに繁って黒く見えるからシュヴァルツ(=黒い)ヴァルト(=森)なんて言うくらいだもの。おかしくはない……はず……なんだけど。
あの森を見てると、なんだか寒くて、少しゾッとする感じがする。
《シオリも漸く、瘴気が読めるようになったノネ》
「え?」
「その、ゾッとするような寒気が、寒くないのに体の奥が震えるような嫌な感じが、瘴気の気配だろ」
シーグに言われてハッとする。この嫌な感じは、身体が怠くなるような、逃げ出したいような感じが、瘴気の気配なの?
《感じ方はヒトそれぞれだと思うケド、大抵の人は、寒気がするとか、身体が怠く気が重いとか言うワネ》
「あの森の中に瘴気が溜まってるのかい?」
オバサンも心配そうに訊いてきた。
《マダ、そんなにハッキリしてない、穢れの溜まりダト思うワ。瘴気なら、この畑にいる妖精達を捕食しに、侵食してくるに違いないモノ》
ただ、よくはないワネ、あまり保たないカモ
そう言って、サヴィアンヌは、森の方を見ようとしない。
《アタシは力がある妖精ヨ? デモネ、闇の精霊のように瘴気を抑えたり、光の精霊のように瘴気を滅したりハ出来ないノ。不用意に近づけば取り込まれてしまうワ。王たるワタシが瘴気に侵されたら、この近辺の妖精はみ~んな、穢れに満ちて、動植物の住めない土地になっちゃうワ》
だから、あんなに大きな穢れの吹き溜まりには近寄りたくナイノ
そう言って、すいーっと花畑の方へ飛んでいってしまった。
サヴィアンヌの言うことは解るんだけど、今までだと、アリアンロッドに浄化させようとしたり、私とアリアンロッドに連携させようとしたのに、今日は、全く態度が違う。
気分の問題なのか、あの森の穢れの規模が大きすぎて、言葉通りに近寄れないだけなのか、私には判断できなかった──
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