異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

文字の大きさ
189 / 294
Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

27.実はそばにいた精霊さん

しおりを挟む

 目を閉じて、風を感じることに意識を集中してみる。

 少しづつ感覚が研ぎ澄まされていき、目を閉じてても、背後で肩を落としているオバサンの気配も、私の肩に片手をおいて寄り添うアリアンロッドも、二歩下がった位置で見守るシーグも、手に取るように感じられるようになってくると、目を閉じていても、風の流れが視えるようになる。

 これが、風の精霊たちの霊気。荒々しくも優しくも、冷たくも暖かくもある。

 両手を上げて、より風を感じようとすると、大小の精霊たちが集まってきた。私を軸に、くるくると周りをまわり始める。

 目を開けてみると、風の精霊の層が出来ていて、少し景色が見づらくなるほど。
 私がカインハウザーさまに拾われた時、こんなふうに精霊に取り囲まれて、姿が見づらくなるほどだと言っていたっけ?

 見える限りの風の精霊や細かな風霊達を視認し、そのまま意識を森へと移すと、精霊たちは一斉に、森へと飛んでいく。まるで先を競うように。

「あ、アンタ、何者なんだい? あんなに、アタシにも見えるほどの、いや、見える以上に気配が集まって、一斉に森へ飛んでいったよ」

 私の霊気と魔力と、私が集めた大地の精気マナを少しづつ受け取って、精霊たちはわれ先にと空を駈けっこするかのように森へと飛んでいったから、私の気配を帯びた精霊たちはオバサンにも見えたらしい。

 ザワザワと、森中がざわめき、普通の風と違って、法則性などなく、好きに飛び回っている。

 でも、そのせいか、黒い森シュヴァルツヴァルトを思い起こさせる真っ暗な森は、少しづつ、木漏れ日が差すようになって来た。

「ああ、なんてことだい。あの森が森らしく蒼く見えるなんて、何年ぶりだろうね……」

 オバサンは感涙していた。大袈裟な、とは言ってはいけないんだろう。

 異世界人だからなのか、素質が元々あったのか、この世界に喚ばれた時に女神の祝福を受けたのか、私は、精霊に愛される霊魂を持っていたから、精霊術士が何年もかけて学び使えるようになる事を、精霊に心の中で願う事でやってもらえる。
 私は大した労力は使わないからと言って簡単に、そんな大袈裟な、と言うのは驕りなのかもしれない。謙遜のつもりでも、出来ない人達にとっては違ったふうに取られるかもしれない。

 だから、私は何も言わずに、ただ、風の精霊たちに感謝した。

《このところ、その大きな妖精と、あなたが名付けた子とばかり触れ合って、ちっとも私達をみてくれないから寂しかったわ》

 カインハウザーさまの畑の近く、花畑や小川のあたりでよく見かけた、ギリシャ神話の女神のような姿の精霊。
 風の人も光の人も、こんなところまで、私の呼びかけに応えて来てくれたの?

《私達にはたいした距離じゃないわ。空は繋がっているもの。それに、そこの『』は、いつもあなたの後をついて行ってたから。そばにいたのよ? 気づかなかった?》

 聞けば、大神殿を追い出された瞬間から、あの扉から転げ出された時からずっと見守って来てくれたと言う。

《本当は、アリアンロッドに混ざってあなたを助けたかったケド、ひとつになってしまったら、もう、ワタシはあなたを見守れないカラ、こうして、気紛れに風とナッテ、そばにイタイノ……》
《この子は、もう何千年も、気紛れにカラカルを飛び回る子だったの。でも、あの日、たまたま通り道が、大神殿から投げ出されたあなたの中に重なって、あなたの霊気と魔力と……本質の魂に触れて、どうしても惹かれて離れられなくなってしまったの。この子とも仲良くしてあげてくれると嬉しいわ》

 女神様のような光の精霊に暴露されて、恥ずかしそうに飛び回り、それでもやはり戻って来て、私に寄り添うようにすり寄ってくる風の精霊。
 風霊のように形のない元素精霊ではなく、アリアンロッドのように人の形をしていて、少女から大人へと変わる年頃の娘のような姿だった。

《少し、あなたに似ているでしょう? あなたが好きで、あなたに近づきたくて、何度もあなたの魂に触れているうちにその姿になっていったのよ?》

 ええぇっ? 私、こんなに可愛らしい女性じゃないですけど?




しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...