異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

33.姦(かしま)し三人娘

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 フィリシアとアリアンロッドが、楽しそうに仲良く競うように馬車のまわりを飛びまわるので、馬車のまわりの空気が澄んでいき、初めてハウザー砦街に入った時のように、祝福を含んだ風が吹く。

「なんだか、いつもより空気がうまい気がするな」

 馭者台に座った車掌さんや、この便の護衛士に雇われた職業旅人りょじんの3人が、空を見上げる。

 三人のうち一人が魔術を使う人らしく、
「こんなに風の精霊が集まってるとは、風の通り道の、谷の街道とはいえ、珍しい」
と、感心していた。

 私は、見えすぎないように、なるべく意識して見ないようにしていたのだけど、サヴィアンヌが面白げに教えてくれたのは、風霊がたくさん走っているとの事だった。

 私鉄でひと駅分ほど走った頃だろうか。次の停車駅についた。
 電車なら数分でも、馬車なら結構走ったなあ。

 私が乗り込んだ街と同じように、一戸建ての待合室に切符売り場がある。

 男性と家族連れの、五人が降りて、三人の女性が乗り込んできた。

 二席空いているとのことで、さっそくシーグが乗り込んでくる。

『上も、風が走ってて中々快適だったぞ?』
《あら、そ? なら、アンタはずっと上にイれバ? 手荷物サン》

 ずいぶんとそのネタ引っ張るなぁ。
 シーグはたちまちムッとした顔になる。

『シオリも上にのぼるんならな。でなきゃ、俺はここにいるぞ』
《ハイハイ。忠犬だこと》

 一見、サヴィアンヌがバカにして、仲が悪いように思えるけど、実際はかなり仲がいい。
 シーグの尻尾は自分の布団、シーグの背中は枕、と公言して、いつも一緒にいたがるし、シーグも、頭に座られても背に跨られても、尻尾を摑んでぶら下がっても怒ったりしない。

 精霊の加護を受けているようだし、きっとシーグの魂も、精霊や妖精に好かれる匂いや色をしているのだろう。

「大きなワンちゃんね」
「狼犬なんです。でも、賢い子なので、咬んだり粗相したりしませんよ」
「触ってもいいですか?」
「シーグ、今は触られてもいい気分?」
「ワンちゃんに訊くんですか?」
「もちろんよ? だって触られるのはこの子だもの」

 この停留所で乗ってきた女性は、お揃いの白い羊毛マントを肩に羽織り、お揃いの緑のストールを首に巻いていた。

 渋々だったけど、シーグが首を伸ばして許可がおりたので、3人が代わる代わる首のフカフカなところや尻尾のふさふさなところを撫でまわる。

「もふもふ~」
「癒やされる~」
「やめられないわぁ」
「あ、あの、なるべくそっと手加減を⋯⋯」
「ごめんなさい。でも、なんていうか、狼の毛ってもっとゴワゴワしてると思ったのに、サラツヤなんですもの」
「触り心地良過ぎ~」

 うん、わかる気はする。大型犬の被毛ってしっかりして、ちょっと手入れを怠ると艶がなくなったり、上毛オーバーコートに抜けた下毛アンダーコートが絡まったりしてゴワゴワになるイメージありますもんね。
 でも、シーグは野生でも、ただの犬でもない。人にもなれるひとおおかみ。毛並みは人の髪と同じなのである。

「お揃いのマントとストールなんですね」
「あ、これ?  ふふふ。初めて見る?  王都の宮女、それも魔道省の宮女の証なんですよ」
「マントの縫取りの刺繍が、防禦魔法の咒紋なんです」
「このストールも、魔力効果を高める補助魔法が籠められてて」
「お城の外で仕事をする時に、揃えで着るんですぅ」
「精霊術士がいないこの国では、咒紋を仕込んだ防具がないと、身を守れませんからねぇ」

 彼女達は、お城で魔術を使って働く女官。
 彼女たちに限らず、お城で働く人の多くは、掃除や洗濯をするメイド的な人たちでも、多くの人がやはり魔術を使うらしい。

「賓客やお貴族の女性をお世話するのでも、突発的な事に対処出来るよう、魔術の得意な者が選ばれるんですよ」
「今日は、王妃様のお使いでぇ」

 王妃様のお遣いって、もしかして彼女達、結構身分の高い、上層の女官なんじゃ⋯⋯
 しかも、王妃様のお遣いって喋っちゃって、大丈夫なのかしら。

「それ、話しちゃって大丈夫ですか?」
「ん~、多分大丈夫? 機密事項のお使いじゃないですから」
「ああ、でもでも、癒やされるぅ」

 ⋯⋯シーグ、モテモテね?

 そう言うと、不機嫌そうな目をこちらに向ける。
『好きで触られてるんじゃねぇぞ』

 そうですね。

 三人のうち、特にお話が賑やかな子が、シーグの分厚くてみっちり毛の生えたお耳を触ると、急にシーグが鼻筋にシワを寄せてお姉さんを睨む。

『耳に触っていいのはつがいだけだ!』
「あら。そ? ごめんねぇ」
「やだぁ、念話が出来るのぉ? 凄い、上級術じゃない?」
「もしかして、ただのわんちゃんじゃなくて、狼族の魔属なの?」
「え? 魔族?」
「違う違う、魔・属マ・ゾ・ク。「魔」の属性の、魔術や生体魔法の技能スキルを生まれ持った、いわば生まれながらの魔属性生物。魔獣や悪魔とは違うわよ」

 かしましく、それでも一応、まわりの他の乗客に迷惑にならない程度に、次々喋る3人娘。いつもこうなのかしら?






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