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Ⅳ.幸せに忍び寄る悪夢
4.迎撃と呪いと
しおりを挟む狼犬の姿でシーグが見てきたものを、南門衛士達とカインハウザー様に見えるよう、サヴィアンヌが幻影魔法で視覚化する。
「これは、ヤバいな⋯⋯ 聖女討伐隊は今、どこら辺にいるんだ?」
「たぶん、神殿から王都に向かった街道のどこかだと。あの大人数と少女3人の足だ、昨日今日ではまだ街には着いてないだろうから、呼び戻しやすいだろう」
「間に合うのか?」
衛士達も不安げに、壁に映し出されたものを食い入るように見ている。
私がそれを見て思ったのは、深夜にテレビで放映されてたゾンビ映画そのものだということだった。
「このハウザーに間に合うかどうかは解らないが、大神殿は、自分達の保全対策だけでは守り切れないだろうから、呼び戻すだろうな」
「アイツらの保全対策ったって、現状維持すら出来てないんだから、ビビって最優先事項で呼び戻してる事だろうよ」
「ここでグダグダ言っていても始まらん!
精霊の加護のあるものは迎撃態勢で待機! 精霊を武器に効果付与出来る者は前に。追撃は不可だ。壁を破壊しようとしてるヤツや家畜を襲うモノを追い払うだけでいい。本当にアレらを斃せるのは光の上位精霊だけだからな」
フィリシアも魔素や地精をたくさん込めて霊気を放てば、ある程度の打撃を与えられるし魔怪を削る事は可能らしいけれど、浄化、完全消滅させるには、光の精霊と巫女の浄化が不可欠条件なのだという。
難しい表情のカインハウザー様に、こっそり声を潜めて訊ねてみる。
「領主館の日時計の花にいつも居る女神様のような光の精霊達は? あの人たちは、魔怪を斃せるの?」
「⋯⋯一体二体の話なら、可能だろうな。だが、巫女の、女神の加護を使った浄化をせずに力技で滅するには消耗が激しすぎるし、自分達が消滅するリスクを冒してまでこの町を護る気になるかどうか。大局で見るならば、この町を見捨てて別の地に移ってでも、世界の理を循環させることの方が大事なんだ。自分達の身の安全と役割を優先させるだろうな」
妖精のように感情で動かない、この世界を構築維持する役割である彼らが、私達よりそれぞれの役目を優先させるのは仕方のないことだろう。
また、妖精達も、取り憑かれる生物よりも取り込まれる自分達の方が危険度が高く、感情があるが故に、恐怖に支配されて穢れの一部になるか取り込まれる前に一目散に逃げるかだろう。
むしろ、ここまで付き合ってくれて、尚且つ、不完全ながらも結界を張ると言ってくれるサヴィアンヌが特例なのだ。
《まあ、守護してるシオリを守り切れなかったラ妖精王の名折れダシ? そんじょそこらの妖精達とは格が違うッテところを見せつけてあげようじゃナイノ》
結局、カインハウザー様は、街を囲う結界よりも、魔族の行動を制限する呪いの方を選択した。
穢れの対処はアリアンロッドが出来るし、闇落ちを滅せなくても撃退は黒翼隊の人達が出来る。
だけど、魔族の撃退は、巫女や聖騎士がいないと無理なので、そちらを優先したのだろう。
「大神殿が、聖女討伐隊を呼び戻して、村を浄化した後、こちらへ寄越してくれるか賭だが、自分達の背後に魔界に落ちた街を抱える勇気はないだろうから、恐らく来るはず。それまで何とか保たせよう」
私に出来ることがあれば手伝うと申し出たけど、カインハウザー様は曖昧に微笑むだけで、どうしろとは言わなかった。
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