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👿私は『天使』で『悪魔』な悪役令嬢?
✡1 天使な悪魔の私
しおりを挟む──天使な悪魔
私は、一部の使用人にそう呼ばれていた。
昨日までは。
天使のような見た目と、悪魔のような性格、という意味らしい。
鏡に映る私は、総レースのドレス姿で、蜂蜜色の巻き毛が縦ロールに下がり、頭に大きなレースのリボンが蝶々に結わえられている。
血管が透けるような白磁の肌、琥珀の瞳。薔薇色の頰と唇も愛らしく、色合いだけでなく、その造形美もため息が出るほどである。
──これは、誰?
私である。鏡の向こうに別人が映っているが、私なのである。
鏡に映るのが自分なのは当たり前だが、自分と言うより別人に思える。
昨日までの「天使な悪魔」と呼ばれていた自分を覚えているし、今も、鏡の向こうの自分に見惚れているように見える私を遠巻きに見守る侍女達の様子からも、我が儘娘の域を超えた悪魔だったのだ。
──おかしい
昨日まで、メイドを顎でこき使い、侍女に無理難題を押しつけ、両親の前では甘えた美少女を演じていた貴族令嬢が自分であると認識しているのに、違和感しかない。
こんな、ゴージャス金髪金眼の美少女が私だなんて有り得ない。
私は、重い黒髪を三つ編みに背に垂らし、縁が分厚く斜め横から見たら瓶の底のような近眼鏡をかけた、読書とお菓子作りが趣味の、引きこもり同然の喪女であったはず?
なぜ、こんな超絶美少女になって、使用人に恐れられているのか⋯⋯
恐れられている理由は、家族に隠れて彼らをいびっていたからだろう。両親や祖父母の前では完璧な愛らしい貴族令嬢を演じきっていたから、私が使用人を莫迦にしていたなど、当事者たち以外、思いもよらないはず。
中には、慧眼をもって、私の本質を知っていた人も居たかもしれないが、その情報は自分たちに有益に使うため秘しているようだった。主に、他家の貴族令嬢たちである。
どのタイミングで披露されるか判らず、後で、最悪の瞬間を狙って曝かれ、やってきた事の報いが、何倍にも返ってきそうで怖い。
そして、黒髪、瓶底眼鏡であったはずの私は、この違和感しかない美少女の自分に馴染めないし、もはや悪魔ちゃんには戻れない。
──これって、どうしたらいいのかしら?
やはり、今度は喪女の私が、悪魔ちゃんを演じればいいのかしら?
そもそも、どうして私は美少女に変身しているのだろう?
ここはどこなのか? それに関してはすぐに見当が付く。
メィフィールド公爵家のマナーハウスだろう。
華奢な飾り細工のついた窓の外に広がる風致林は、メィフィールド公爵家の敷地内にあるもので、秋には王侯貴族を集めての狐狩りも催される、我が家自慢の林だ。
なぜ判るのか?
自分の知識の中にある、この部屋の配置や窓からの眺望、林や森の様相と、どんな生き物がいるのかなどの記憶と摺り合わせて齟齬がないので、あれは我が家メィフィールド公爵家の森に続く林で間違いない。
この顔も、違和感こそあり自分の顔と思えないものの、間違いなくメィフィールド公爵家の愛娘、ルシエーラ・マリアリア・アッシェンドル=メィフィールド公爵令嬢である。
んん? メィフィールド公爵家の天使な悪魔ってもしかして、物語の中の『悪役令嬢』ではなかった?
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