私が天使な悪魔? そんなの聞いてません!!

ピコっぴ

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👿私は『天使』で『悪魔』な悪役令嬢?

✡4 愛情表現の濃い両親

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 昨日まで、私は、黒い髪を三つ編みにして背に垂らし瓶の底のような近眼鏡をかけた、引きこもり寸前の喪女だった⋯⋯はずなのに、なぜか、濃い蜂蜜色の巻き毛と琥珀の瞳をもつ美少女公爵令嬢(10)として、いま、両親に抱き締められている。

 何があったのか⋯⋯


「本当によかったわ、ルシエーラちゃんがこのまま目を覚まさなかったら、ママは一緒に居て、どこへも行かない、誰にも会わない、眠り続けるルシエーラちゃんのお世話をして泣き暮らすところだったわ」

「おお、冗談でも例え話でも、そんなことは言わないでおくれ。愛しのマリアベル。君にはもう一人の娘と未来の公爵を立派に育てる使命があるし、私の傍にいてくれないと、私もこもってしまうよ」

「そんなことはダメよ、公爵様が引きこもりだなんて、陛下も家臣も困るでしょう?」

「なら、二度と私の心を殺すようなことは言わないでおくれ。勿論、私の天使ルシェも、二度とこんなことはしないでおくれよ?」

 さきほどからずっと、こんな調子である。

 お二人がラブラブなのはいい。
 結婚してから7年も懐妊の兆しもなく、仲がよすぎるからだと伯母夫婦に揶揄されるほど仲がいいのはいい。

 いいのだが、私を挟んで、私をネタに盛り上がらないでいただきたい。

「お父さま、お母さま。るしぇは大丈夫です。こうして、お母さまに抱き締められてしあわせです。お父さまも、安心して、お仕事に行ってください」

 天使なルシェなら、こう言うだろうという台詞を、にっこりと微笑ん(だつもり)で言えば、父は私を抱きしめ直した後、もうだいぶ遅れているだろうに、馬車でゆっくりと出勤された。

「ルシエーラちゃん、本当に大丈夫なの? なんか、いつもと違うわ」

 さすが母親。中身が喪女だと判るのだろうか。

「おふたりに心配をかけたと理解しているだけです。しばらくおとなしくしていますね」
「この後、ミルヒ先生が往診に来ますからね。先生の許可が降りたら、お庭でおやつにしましょう。明後日は、お城へ行かなくてはいけませんからね?」

 綺麗な所作でお茶を飲む練習よ?

 そう言って、ママさんは綺麗にウインクをした。

 汗をかいた寝間着を侍女に脱がされ、暖められた固く絞ったタオルで全身を拭われ、新しい寝間着を着せられる。
(あの、総レースのドレスは、実は寝間着だった‼)

 何日か眠り続けていたらしく、湯に浸かるのは医師の許可を得てからということらしい。

 とろとろに蕩けた野菜のスープを飲んでいると、ゴージャス美人でボンキュッボンな女医さんがやって来た。

「ルシエーラ様、お目覚めなのねぇ。よかったわぁ」

 カッチリした性格のように見えたのに、口を開くと頭が足りなそうな口調だった。

「⋯⋯カマ?」
「なあに? スープを食べて大丈夫なのかしら? 吐き気はなぁい?」

 どうやら、私は頭を打って寝込んでいたらしい。
 言われてみれば、後頭部にたんこぶがあるようだ。

 スプーンを咥えて、女性なのにカマっぽい医師の顔を見ていると、頭を撫でられて気がついた。

 一瞬、ちょっとおえっとなりそうだったが、堪えられる程度だ。
 たん瘤は、頭骨の外に血や水分が溜まって出来る外傷なので、水分が体内に吸収されればへっこんで終わるし、脳に影響はないって聞いたことある気がする。

「記憶障害や認知障害、食欲不振やぼーっとして言動がおかしいなんてこともなさそうだしぃ。ちゃんと食べてるものね。歩ける?」
「はい。窓まで行って、外を見ました」

「んー、今のところ、大丈夫そうかな? 2日ほど様子を見て異変がないようなら、ゆっくりと行動出来るなら外出もいいわよぉ。明後日、王宮でとおの祝宴だものねぇ」

 許可が降りたので、午後からお庭でママさんお手製の焼き菓子で、お茶会の練習をした。

 
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