聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
16 / 163
【萌々香 Ⅰ】

🚱16 美土里のちから

しおりを挟む


 固有能力ユニークスキルは、どうやらまだ開花していないらしく、成長していけば解るという話だけど、水晶玉を触る前に、触ればだいたい判るとか言ってたような気がするんだけども。
 まあ、瞑想とやらをきちんと出来てなかったからと言う事にしておこうかな。

 しばらく火の玉を出したり握りつぶしたり手をグッパしてた愛唯あおいは、納得したのか、手を休め、視線を美土里みどりに移す。

「え? 何期待した目で見てんの? 私もやるの? それ」
「当たり前でしょう? 女神に祈って喚び出されたというのなら、美土里もそうでしょ?」
「えぇ? マジぃ? 私も? なんかやだなぁ」

 いつも前向きの美土里にしては珍しく尻込みする。
 そりゃ、こんな非現実的な事、誰だって怖いよね。

 恐る恐る手を水晶玉に添える。結構大きいので、透明でなければボーリングの球に見えるくらい。
 芯の方で光が広がり始める。明るい黄色とオレンジのマーブルで、やはりあんな色のボーリングの球あったなぁとか、ビー玉(大き過ぎるけど)みたいにも見える。

 愛唯あおいの時と同じく、光の中から分かれてオレンジ色の光りが分裂して美土里の身体を包み込む。

「あわ、わわわ。何だか、温かい? オレンジ色だけど、愛唯あおいと同じ火なの?」

 確かに、火は燃料と温度で色が変わる。有り得なくはないけど、違うと感じた。

 ──うん、違うよー

 だっ誰!?
 さっき、言葉を聴きたい?って訊ねて来た存在と同じ声。子供のような、女の子のような、ちょっと高めの優しい声。

 ──あれは、恵みを受け取り授ける力

 そう聞くとちょっといい感じだね。身体強化とか火の玉よりずっといいと思えた。
 優しくて気配りさんな美土里にぴったりかも。


「これはこれは、女神様に気に入られましたな。神殿で長くお仕えした巫女や神官が授かる恩恵で、大地の恵みを受けたり周りに分け与えたり、生命力を操作出来ます。訓練を重ねれば、傷の治療や魔物にけがされた不治の傷を修復したりも可能になりましょう」

 白っぽいだぼだぼの服を着たオジサン手前のお兄さんが、ちょっとうっとりに近い目で説明するけど、隣の代表者っぽい男性の目が光ったのを、愛唯あおい達の後ろで他人事のように見ている私は、見逃さなかったよ。

 目をつけられたな。

 怪我を治せる上に、大地の恵みを利用できる力は、外科医やベテラン農家の代わりになる。
 まして魔物に苦しめられているこの人達にとって、魔物にけがされた治らない傷も修復できるなんて都合のいい特殊能力は、喉から手が出るほど貴重で必要な力だろう。

 この人達の言うことを聞いて、魔物を退治しても、元の世界に返してもらえない可能性が高い⋯⋯いや、確定のような気がした。



しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...