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【萌々香 Ⅰ】
🚱16 美土里のちから
しおりを挟む固有能力は、どうやらまだ開花していないらしく、成長していけば解るという話だけど、水晶玉を触る前に、触ればだいたい判るとか言ってたような気がするんだけども。
まあ、瞑想とやらをきちんと出来てなかったからと言う事にしておこうかな。
しばらく火の玉を出したり握りつぶしたり手をグッパしてた愛唯は、納得したのか、手を休め、視線を美土里に移す。
「え? 何期待した目で見てんの? 私もやるの? それ」
「当たり前でしょう? 女神に祈って喚び出されたというのなら、美土里もそうでしょ?」
「えぇ? マジぃ? 私も? なんかやだなぁ」
いつも前向きの美土里にしては珍しく尻込みする。
そりゃ、こんな非現実的な事、誰だって怖いよね。
恐る恐る手を水晶玉に添える。結構大きいので、透明でなければボーリングの球に見えるくらい。
芯の方で光が広がり始める。明るい黄色とオレンジのマーブルで、やはりあんな色のボーリングの球あったなぁとか、ビー玉(大き過ぎるけど)みたいにも見える。
愛唯の時と同じく、光の中から分かれてオレンジ色の光りが分裂して美土里の身体を包み込む。
「あわ、わわわ。何だか、温かい? オレンジ色だけど、愛唯と同じ火なの?」
確かに、火は燃料と温度で色が変わる。有り得なくはないけど、違うと感じた。
──うん、違うよー
だっ誰!?
さっき、言葉を聴きたい?って訊ねて来た存在と同じ声。子供のような、女の子のような、ちょっと高めの優しい声。
──あれは、恵みを受け取り授ける力
そう聞くとちょっといい感じだね。身体強化とか火の玉よりずっといいと思えた。
優しくて気配りさんな美土里にぴったりかも。
「これはこれは、女神様に気に入られましたな。神殿で長くお仕えした巫女や神官が授かる恩恵で、大地の恵みを受けたり周りに分け与えたり、生命力を操作出来ます。訓練を重ねれば、傷の治療や魔物に穢された不治の傷を修復したりも可能になりましょう」
白っぽいだぼだぼの服を着たオジサン手前のお兄さんが、ちょっとうっとりに近い目で説明するけど、隣の代表者っぽい男性の目が光ったのを、愛唯達の後ろで他人事のように見ている私は、見逃さなかったよ。
目をつけられたな。
怪我を治せる上に、大地の恵みを利用できる力は、外科医やベテラン農家の代わりになる。
まして魔物に苦しめられているこの人達にとって、魔物に穢された治らない傷も修復できるなんて都合のいい特殊能力は、喉から手が出るほど貴重で必要な力だろう。
この人達の言うことを聞いて、魔物を退治しても、元の世界に返してもらえない可能性が高い⋯⋯いや、確定のような気がした。
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