聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
19 / 163
【萌々香 Ⅰ】

🚱19 憑き無し

しおりを挟む


 水晶玉は光っている。でも、その中から蛍火のような精霊は出て来なかったし、女神の声も聴こえない。

 ──気にしない気にしない

 いや、辛いとか悲しいとかはないけど、これでいいのかなって思ったり。

 ──別に、ニンゲン達の聖別の儀式なんか、僕らには関係ナイし、知られたくないんでしょ?

 僕ら。この耳元で内緒話のように聴こえるのは、精霊の声だったの?

 見守る人達もややざわつき始める。

「白い光は、無属性の生体術──身体強化、念動力や魔道具を使うのに長けた能力かと思われますが⋯⋯ 光が強く、潜在魔力も多そうですな。ですが、これは⋯⋯」

 能力を知られたくないから、いいように使われたくないから、私的にはこれでいいんだけど、どうやら、喚び出された存在に精霊が憑かないのは、かなりイレギュラーな事なのね。

 水晶玉の光が消える時、玉から温かな風が吹き、目深にかぶったままだったフードが背に落ちる。
 愛唯あおいが目を見張った。

萌々香ももか、あんたその髪⋯⋯」

 僅かな色で真珠色の艶を放つ白銀に近い金髪が丸見えである。元々知っていた美土里はともかく、知らなかった愛唯あおいは、目を見開いて驚いている。

「白い無色の髪──まさか月无つきなし?」
「精霊が⋯⋯」
「御遣い様が、しなどあり得るのか?」

 ざわめきはどんどん拡がる。ひそひそ話でも20~30人が一度に話すとそれなりに騒々しい。

「あー、ぉほん!」

 代表者っぽい男性が咳払いをすると、みんなピタッと黙った。

「魔力はお強いようですから、これから魔道具の扱いなどを追々訓練していけば良いでしょう」

 私達の加護の息吹ギフトブレス固有能力ユニークスキルについては外で触れ回らないよう釘を刺され、この場は解散となる。
 私達のというよりかは、私に精霊が憑かず、めぼしい能力がなかった事だろう。

 ──アイツら、目に見えないと解らないなんて馬鹿だよね

 あちこちから、小さいクスクス笑う声がする。これも、他の人達には聴こえてないみたいだ。

 さて、私の加護の息吹ギフトブレスがどういったものなのか、固有能力ユニークスキルはなんだったのか、知る機会を逃した訳だけど、この人達に使われる気はないので問題はない。と、この時は思っていた。




しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...