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【萌々香 Ⅰ】
🚱26 サバンナ
しおりを挟む広い。見渡す限りの草原。山の峰は遠く、所々に一本の太い幹が伸びて、高い位置で横広がりに木枝が張り、根元に灌木が茂ってて、テレビで見るサバンナのようだ。
「なんか、キリンとかチーターとかいそうな景色ね」
どうやら、美土里も同感のようである。
「麒麟はおりませぬが、豹や獅子、羚羊類はたくさんいますね」
まんま、サバンナやん。
「ただ、普通の羚羊類だと思って近づくと、魔獣だったりしますから、気をつけて」
「麒麟が見たければ、南の霊峰に行けばおりますが、麒麟ほど強い霊獣は、怒らせると危険ですぞ?」
「殆ど神獣級の幻獣ですからな」
「扱う魔法も強力ですし、なみの魔物や魔獣よりも厄介ですぞ」
怒らせるつもりはないけれど、どうやら、サバンナにいる首の長い動物の騏驎じゃなくて、私達の世界の東洋の伝説上の生き物の麒麟の事らしい。お寺の欄間の彫刻や障子画やビールのラベルに居るやつ。
あれと同じなら、麒麟の怒りは天の怒り、天龍の地に降りた姿だとも言うし。そりゃあ、さぞかし恐ろしくて危険でしょうね。
「居ました、あれがそうですね」
「どれ?」
愛唯が片手を額でかざし庇にして、遠くを見る目をする。
緑がかった土気色の肌、ボサボサで焦げ茶の、背の鬐に続く髪。動物の毛皮をかぶって、棍棒や石の鏃の短槍を持った身長120㎝前後の小人が、数人キョロキョロしながら歩いている。
「あれは、低級の魔物の一種で醜鬼と呼ばれております」
「あら、低級なの?」
「一匹の戦闘力ならば、ですが。ただ、道具を使って集団で襲ってきますし、腐っても魔物、体力はそこそこあります。人と違って、怪我をしても怯むことなく戦い続けますから厄介ですな」
さっきから厄介な魔物しかいないじゃん。
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