聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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【萌々香 Ⅰ】

🚱28 火球

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 攻撃手段を持っていない美土里を守るべく、兵士や魔法士が囲うようにして下がらせる。
 私も、ついて下がった。

 たくさんの飾りをつけた魔法士が愛唯あおいの傍につき、何か説明している。魔法の使い方だろう。
 魔法士が実演してみせると、たくさんの飾りが淡い光を放ち、魔法士のオーラが目に見えるようになる。なんか凄いな?

 ──凄くないよ? あんまり魔力が強くないから、魔石で増幅してるんだよ

 なるほど。そう言えば、この国には、魔物を撃退出来る力がないと言ってたっけ?

 赤いオーラが纏まって魔法士の手に集まると、火の玉になる。

 愛唯あおいも、目を瞑って何か小声で唱えると、真っ赤なオーラが噴き上がる。深紅に染まった髪が輝きを増し、キラキラと陽光を反射している。

「あれ、身体強化かな」
「たぶんそうかも。殲滅すると言ったから、より火力を上げて、確実に斃すつもりなんやと思う」

 討ち漏らす訳にはいかないからね。この護衛達では心許ないし、女の私達は、例え一匹でもアレらに気づかれる訳にはいかないのだから。

「ファイアーボール」

 愛唯あおい発動呪文パワーワードで、小学生の頃運動会でやった玉転がしの玉のように、人より大きな火球が出来上がる。

醜鬼ゴブリンの集団の真ん中に狙いを定めて、討ち漏らしのないよう、焦って射出しないでください」

 魔法士の言葉に頷く愛唯あおい

 親のかたきかってキツい視線で醜鬼ゴブリンめつけると、愛唯あおいのオーラの一部が細い線となって伸び、醜鬼ゴブリンの集団の一匹に繋がる。

 気合いをこめて、愛唯あおいが火球を投げると、そのオーラの線に沿って勢いよく飛んでいき、糸のようなオーラの線に気づいた醜鬼ゴブリンが警戒か威嚇かの金切り声を上げるが間に合わず、燃えさかる火球は、彼らの中心に着弾した。



 こう、アニメやSF映画でみるような、ちゅどーんって轟音と共に粉塵が上がり、傍に生えてた茂みにも燃え移り、轟々と、一面を焼き尽くした。

 醜鬼ゴブリンの悲鳴が聴こえなくなると、愛唯あおいは息を吸って、オーラの線に手をかざし、綱を引くような仕草をとる。
 すると、スッと気が消え、オーラの線も消えた。

 別の魔法士が、水球を生み出して、延焼した茂みに掛ける。
 草原の火事は免れたようだ。

「やり過ぎちゃった?」

 愛唯あおいが振り返って苦笑いした。




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