28 / 163
【萌々香 Ⅰ】
🚱28 火球
しおりを挟む攻撃手段を持っていない美土里を守るべく、兵士や魔法士が囲うようにして下がらせる。
私も、ついて下がった。
たくさんの飾りをつけた魔法士が愛唯の傍につき、何か説明している。魔法の使い方だろう。
魔法士が実演してみせると、たくさんの飾りが淡い光を放ち、魔法士のオーラが目に見えるようになる。なんか凄いな?
──凄くないよ? あんまり魔力が強くないから、魔石で増幅してるんだよ
なるほど。そう言えば、この国には、魔物を撃退出来る力がないと言ってたっけ?
赤いオーラが纏まって魔法士の手に集まると、火の玉になる。
愛唯も、目を瞑って何か小声で唱えると、真っ赤なオーラが噴き上がる。深紅に染まった髪が輝きを増し、キラキラと陽光を反射している。
「あれ、身体強化かな」
「たぶんそうかも。殲滅すると言ったから、より火力を上げて、確実に斃すつもりなんやと思う」
討ち漏らす訳にはいかないからね。この護衛達では心許ないし、女の私達は、例え一匹でもアレらに気づかれる訳にはいかないのだから。
「ファイアーボール」
愛唯の発動呪文で、小学生の頃運動会でやった玉転がしの玉のように、人より大きな火球が出来上がる。
「醜鬼の集団の真ん中に狙いを定めて、討ち漏らしのないよう、焦って射出しないでください」
魔法士の言葉に頷く愛唯。
親の敵かってキツい視線で醜鬼を睨めつけると、愛唯のオーラの一部が細い線となって伸び、醜鬼の集団の一匹に繋がる。
気合いをこめて、愛唯が火球を投げると、そのオーラの線に沿って勢いよく飛んでいき、糸のようなオーラの線に気づいた醜鬼が警戒か威嚇かの金切り声を上げるが間に合わず、燃えさかる火球は、彼らの中心に着弾した。
こう、アニメやSF映画でみるような、ちゅどーんって轟音と共に粉塵が上がり、傍に生えてた茂みにも燃え移り、轟々と、一面を焼き尽くした。
醜鬼の悲鳴が聴こえなくなると、愛唯は息を吸って、オーラの線に手をかざし、綱を引くような仕草をとる。
すると、スッと気が消え、オーラの線も消えた。
別の魔法士が、水球を生み出して、延焼した茂みに掛ける。
草原の火事は免れたようだ。
「やり過ぎちゃった?」
愛唯が振り返って苦笑いした。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる