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【萌々香 Ⅱ】
📵1 魔道具を使おう
しおりを挟む部屋割りはそのままに、毎日が過ぎる。
美土里は女神様に仕える神官や巫女達と、固有能力や癒しの力を伸ばす訓練をする事になり、朝夕の食事時には、みんなで揃って祈ってもらう。
愛唯は、神殿付きの魔法騎士達と、弱い魔物から退治に出掛け、魔石を持って帰る。調理場でも製作所でも、魔道具の燃料不足なので、喜ばれていた。
私は、見習い巫女さん達とお手伝いをしたり、魔道具の製作所で稼働原理を習ったりしている。と言っても私の言葉は通じないので、こちらは身振り手振りであるが、相手の言葉は本当はわかっているので、さほど問題ない。
魔道具は、アニメや漫画で見るような、スタイリッシュなデザインの、咒紋が施された小道具をイメージしてたのに、どちらかというと、江戸末期や明治時代のカラクリ的な道具が、魔石を乾電池みたいに填め込んで、魔力を電気代わりに動く感じだ。
或いは、多少デザインが古くさいけれど、シンプルな家電のような形と機能性で、魔石を入れて動かすのは同じ。
だから、見たら、なんの魔道具なのかだいたい想像はつく。
ただ、スイッチはない。魔道具だから、魔力を通すか通さないかは、スイッチじゃなくて、使用者が起動魔力を注ぐのである。
これが、中々上手く出来ない。
美土里も愛唯も、最初からある程度魔法を使えていたのに、私は、魔力を注ぐとか、精霊と交信して霊力を上げるとか言う感覚が摑めないのだ。
精霊達と会話は自動で頭の中で行われている。けど、魔法を使うために交信すると言うのが解らない。会話とどう違うんだろう。
「モモカ様は、月无ですから、魔力操作が難しいのでしょう。使い方はゆっくり学んでいきましょう」
慰めてくれてるんだろうとは思う。言葉が通じないと思ってるのに、優しい対応をしてくれてはいる。
けど、そもそも文化の違う世界に勝手に強引に呼びつけといて、役立たずだから慣れるまで訓練しながら下働きしてね、は、おかしくないか?
今まで魔法なんて、フィクションか眉唾物のインチキと言うのが常識の世界にいたんやで。不慣れで当たり前やと思うけど、ここの人達も生活が厳しいので、無駄飯食いは許されないのだというのは、まあ解る。解るけど、理不尽だと思うのも抑えられず、不満ばかり募る。
「モモカ様、いったん休憩にして、こちらでお茶でも飲みましょう」
気をつかってくれてるのはそれなりにありがたいのだけど、美土里が居ないのに口にするものは、みんな不味い。
出涸らしの、あまり良くない水の臭いたっぷりの、薄味の薄味の薄味なお茶や、温度調節を失敗したような上に甘みのない焼き菓子は、結構ストレス溜まる。
でも、文句を言えないし、例え言っても日本語は通じないので意味はない。
この世界の人達は、朝早く日の出と共に起き出して行動するが、朝食は遅め。ブランチ的な時間帯。
昼ご飯はなくて、日暮れまえに夕飯を摂る。
夜食もなしで星が瞬く頃には寝てしまう。
娯楽もなく食べるくらいしか楽しみはないのに、美土里が祈らなければ味気ない粗食。
そんな日を3日も続ければ、嫌気もさしてくると言うものだ。
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