聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
32 / 163
【萌々香 Ⅱ】

📵2 大聖女さまは王妃さま

しおりを挟む


「王様はいないんですって!」
「は?」

 愛唯あおいが口を尖らして、ソファで足をバタつかせながら言う。

 どうやら、愛唯あおいは、この国に貢献を続けたら、物語にあるように王様や王子様に会えるかもと期待していたらしい。

「昔は王国だったらしいけど、今は評議会が国をまわしているらしいわ」

 神殿関係の上層部も関わってはいるらしい。
 普通、国家と宗教は相性悪いものだけどね。民衆を導く上での手法に違いがありすぎるし。
 でも、政治家や役人達と法曹界、自警団や警備兵などの治安局だけでは、魔物や魔獣から民も町も守り切れない。
 魔物の脅威対策として、神殿の巫女や神官と言った魔法士や聖騎士が必要なのだ。
 それでも、他国の魔物専門家のようにはいかず、都度対応するしかないという。

 都度対応──襲って来たら聖騎士や魔法士を派遣して撃退する──しか出来ない状態で、どんどん国力は落ちていく。

 だからこその最後の手段が、私達、女神の加護を受けた異世界人なのだ。


「あの代表者のオジサンが、総理大臣みたいなもの?」
「みたいね。国民が選出する訳じゃないから、大統領じゃないわね。評議員達も選挙じゃないみたいよ?」

 王国だった頃の貴族や王族の傍流、国家予算に関わる大商人の子孫がそのまま議員を務めているらしい。

 王様最高責任者が居なくなってそのまんま、国王も宰相ストッパーも居ない無秩序カオス状態で上流階級が牛耳ってんのね。
 そんなんでよう国としてってんな。いや、たもててないからこその国力低下と、緊急避難措置の私達なのか。

「大昔に異世界人を召喚した時は、国中を囲う高くて長い大きな魔障壁を建てて『大聖女』と呼ばれた女性が結界を張ったんですって」
「それって、例えば美土里の防護領域セイフティエリアの強化版を張れれば何とかなるものなの?」

 ──一度張ればずっとある訳じゃないから、どうかなー

 やっぱりそうよね⋯⋯

「え? 無理よ。まだ、自分と、あたしの肩に手を触れた人2~3人護れるかどうかよ? 国中を囲うなんてとてもとても」

 そう言って手を振る美土里。

「例え出来たとしても、そのバリアを維持しなくちゃいけないやん? やっぱり無理じゃないかな」
「その大聖女さまは、当時の王子様と結婚して王妃になったらしいわよ? 美土里」
「ええ? 王妃様かぁ。美味しいものたくさん食べられたらいいけど、政治とか外交とか、面倒くさそう」
「綺麗なドレスや宝石も貰えるんじゃない? 国の女性の代表でしょう? 見窄みすぼらしい格好は出来ないわよ」

「王子と結婚って、結界を張れる聖女を逃がさないための、囲い込みと言うか、権力の檻?」

 あ、言わなきゃ良かったかな、王族の仲間入りにキラキラトークしてたのに、二人とも黙っちゃった。

「ま、今は王様は居ないんだから、王妃にもなれないわよね」

 愛唯あおいが肩をすくめ、まとめてくれた。

 今はこの国には居ないみたいだけど、周辺諸国には居るんじゃないのかなと思ったけど、愛唯あおいがその気になった時に面倒が起こりそうなので黙っておいた。

 ──うん、隣にも国王は居るし、皇帝が国王や大公を統括してる帝国もあるよ

 うん、その情報、二人には教えないように、周りの精霊達にもお願いしておいてね?

 ──解った! 黙っとくよ

 素直な精霊達は、近隣国の情報は二人には与えないと誓い合ってくれた。




しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...