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【萌々香 Ⅱ】
📵23 囮の聖女様が!?
しおりを挟む「囮様」にされた私の身を案じて毎日隕石墜撃にも耐え得る防御魔法を掛けてくれて、みんなに貶まれてもずっと話し掛けてくれて支えてくれてたマクロンさんに挨拶もせず黙ってこの国を去ることに罪悪感はあるし、残していく美土里の事も心配だけど。
あの二人のことは心残りだけど!
それでも私を水濠に突き落とした愛唯の火炎魔法で、毎日魔物に囲まれながら攻撃されるストレスは限界に来ていた。
私は、自分の命を守るために、ここを、愛唯やこの国の評議員達から、離れるのだ。
──大丈夫だよ、醜鬼に気づかれない隠遁術なんだから、アイツらニンゲンには絶対わからないよ
──そうそう、隣歩いてても、裸踊りしてても気づかれないよ
なんで裸踊り?
──え? 何年か前のニンゲンの会話にあったよ、いい悪い関係なく人目を引く最強の行動だって
──最低じゃなかった?
──どっちでもいいよ、これが一番って事デショ?
う~ん、確かに目を反らす凝視するどちらにしても、一度は目に入るだろうな。
──なんなら、喋りながら歩いててもいいよ
そうは言うけれど、マクロンさんみたいに真面目に精霊と仲良くなって守護してもらっている魔法士には、探知魔法とかでバレるかもしれないし、やはり慎重に行こう。
溶岩と共に落ちてきた広場に戻ってくると、ちょうど穴からロープで下りてくる軽装騎士が数人見えた。
「こりゃ、酷いな」
「ああ。囮様はご無事だろうか?」
「おい、その言い方は⋯⋯ 女神の加護を頂いておられる聖女様なんだ、ご無事に決まっておろう」
私を聖女の一人だと認めてくれている騎士も居たのか。
──そりゃ居るよ
──見えなくてもボクたちが傍に居るのは霊気や魔力を読める人ならなんとなく霊圧を感じるだろうから、それが神々しく感じちゃったりするでしょう?
──見習い巫女達が好意的なのも、自分達に憑いてる精霊を通じて、モモカの香りが好きで周りにいるボクたちを感じているから、女神の加護を持った聖女だと判ってるんだよ
──単純にモモカの人柄が好きな巫女もいたみたいだけど、周りの感じから言えなかったみたい
そうなのか。確かにあの子達は好意的だった。
「おい! これを見ろ!」
溶岩溜まりが冷え固まった中に除く、魔法士のローブを指差して叫ぶ騎士。
入り口からやって来た騎士も合流して、ガヤガヤと騒ぎ出す。
生き残りの醜鬼が一匹飛び出してきたけれど、重装騎士の戦斧に突き刺され、地に縫い付けられる。
一応、一匹相手なら退治できる騎士も居るのね。
他の生き残りの醜鬼は、これから私が向かう山の中腹に出る坑道へ逃げたらしい。
「これ、この白い髪は、囮の聖女様ではないのか?」
「身体は黒焦げで、顔も判らんが」
「むしろ、溶岩から少しでもお身体が見えているだけ凄いのでは?」
「そうだ。流れる溶岩の超高熱では御身が残るだけでも奇跡であろう」
あ、それはあるかも。岩の溶解温度って、千℃以上じゃなかったっけ?
偶然だけど、醜鬼に捕まっていた他国の魔法士の女性が、私と間違われているこの状況を、利用させてもらうことにした。
❈❈❈❈❈❈❈
鉱物にもよりますが、日本で見られる一般的な岩石の融解温度は800~1200℃くらいだと言われています。
火事で家屋が燃える内部の温度も千℃前後と言われています。
次話
📵24 抜けた先は
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