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今日から冒険者(仮)
🚯8 最終試験の準備
しおりを挟む元々幻影の風景と魔物である。
発動条件や解除条件も、監督官は熟知しているのだろう。
それまでの抜けるような青空も風の爽やかな草原も、すっと消え、岩壁と砂地の、グランドキャニオンみたいな景色に変わる。
風が強く吹くと、吸い込んだ息に砂が入っていたようなジャリジャリ感に思わず咳込んで、ぴちょんに口と喉と目とを洗ってもらう。
──幻覚って凄いね、本当に目から涙出てるし、喉や鼻炎症おこしてるよ
──モモカ、大丈夫?
あー、ツラかった。視覚から伝わる情報って凄いな。
幻影を見た幻覚だと解ってるのに、本当に砂を吸い込んだ感じが出た。
冬のグラウンドで体育の時間につむじ風が来た時のあれの感じ。舞い上がった砂に、みんなで水場に走るやつ。
「モモカ、大丈夫か?」
「はい。幻覚だって知ってるのに、眼から入る情報にヤられましたね。ガヴィルさんは大丈夫でしたか?」
「ああ、こういう場所では、風で常に防御魔法を全身に展開しているからな。砂は入り込まないようになっているんだ」
いいなぁ⋯⋯ そうか、マクロンさんが最後に教えてくれた事、こういう事なんだ。
「モモカ。いいかい? よく聞いて」
「僕が毎日掛けている防御魔法の流れは、体に染みついているね?」
「たぶん、イメージするだけで自分でも使えるようになってるかもしれないよ。一度試してみて? それから、君が声を聞くことの出来る精霊達は、君のことが大好きだから、少しだけ力を分けてあげる事で、友達になれる。精霊の居るところでは、君は、精霊に任せれば、身を守ることが出来るはずだよ。覚えておいて」
「大丈夫だよ、きっと上手くいくから」
ありがとう、マクロンさんが毎日やってくれてた、私の中を魔力が巡る感覚、覚えてる。だから、きっと、出来る。
深呼吸をして、自分の躰の内に意識を向けていく。その内、周りの風の音も聴こえなくなり、自分に集中していく。
ぴちょん ココン⋯⋯ キン ピーン
私の中で、雫や糸状の金属が弾くような音が聴こえる。
透き通った、よく響く音は、水琴窟のそれに似てる。
なぜか、私の中を流れる魔力や霊気、生命力だと理解する。
それに、ぴちょんやウィン、ルクやマナ、アーテル達の精霊力を乗せて巡らせる。
『衝撃緩和保護魔素分解吸収』
そのまま、魔力が私を包むようなイメージを抱いて強くしていくと、恐らくマクロンさんが毎日やってくれてたやつとそう変わらないものが纏えたと思う。
「モモカ、その人は?」
「⋯⋯え?」
私の肩を通り過ごして、その先にあるらしきものを見つめるガヴィルさんの視線に沿って首を巡らせると、少し北欧風味の竹野内豊が立っていた。
次話
🚯9 最終試験は戦闘センス
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