聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
93 / 163
今日から冒険者(仮)

🚯8 最終試験の準備

しおりを挟む


 元々幻影の風景と魔物である。
 発動条件や解除条件も、監督官は熟知しているのだろう。

 それまでの抜けるような青空も風の爽やかな草原も、すっと消え、岩壁と砂地の、グランドキャニオンみたいな景色に変わる。

 風が強く吹くと、吸い込んだ息に砂が入っていたようなジャリジャリ感に思わず咳込んで、ぴちょんに口と喉と目とを洗ってもらう。

──幻覚って凄いね、本当に目から涙出てるし、喉や鼻炎症おこしてるよ
──モモカ、大丈夫?

 あー、ツラかった。視覚から伝わる情報って凄いな。
 幻影を見た幻覚だと解ってるのに、本当に砂を吸い込んだ感じが出た。
 冬のグラウンドで体育の時間につむじ風が来た時のあれの感じ。舞い上がった砂に、みんなで水場に走るやつ。

「モモカ、大丈夫か?」
「はい。幻覚だって知ってるのに、眼から入る情報にヤられましたね。ガヴィルさんは大丈夫でしたか?」
「ああ、こういう場所では、風で常に防御魔法を全身に展開しているからな。砂は入り込まないようになっているんだ」

 いいなぁ⋯⋯ そうか、マクロンさんが最後に教えてくれた事、こういう事なんだ。


「モモカ。いいかい? よく聞いて」

「僕が毎日掛けている防御魔法の流れは、体に染みついているね?」

「たぶん、イメージするだけで自分でも使えるようになってるかもしれないよ。一度試してみて? それから、君が声を聞くことの出来る精霊達は、君のことが大好きだから、少しだけ力を分けてあげる事で、友達になれる。精霊の居るところでは、君は、精霊に任せれば、身を守ることが出来るはずだよ。覚えておいて」

「大丈夫だよ、きっと上手くいくから」


 ありがとう、マクロンさんが毎日やってくれてた、私の中を魔力が巡る感覚、覚えてる。だから、きっと、出来る。

 深呼吸をして、自分の躰の内に意識を向けていく。その内、周りの風の音も聴こえなくなり、自分に集中していく。

 ぴちょん ココン⋯⋯ キン ピーン

 私の中で、雫や糸状の金属が弾くような音が聴こえる。
 透き通った、よく響く音は、水琴窟のそれに似てる。

 なぜか、私の中を流れる魔力や霊気、生命力だと理解する。

 それに、ぴちょんやウィン、ルクやマナ、アーテル達の精霊力を乗せて巡らせる。

衝撃インパクト緩和保護・ミトゥゲィシン・魔素分解吸収マナ・リゾルヴ・アブソーブ

 そのまま、魔力が私を包むようなイメージを抱いて強くしていくと、恐らくマクロンさんが毎日やってくれてたやつとそう変わらないものが纏えたと思う。

「モモカ、その人は?」
「⋯⋯え?」

 私の肩を通り過ごして、その先にあるらしきものを見つめるガヴィルさんの視線に沿って首を巡らせると、少し北欧風味の竹野内豊が立っていた。



 次話
🚯9 最終試験は戦闘センス

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...