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今日から冒険者(仮)
🚯9 最終試験は戦闘センス
しおりを挟むガヴィルさんが唖然と見つめる先には、少し北欧系風味の竹野内豊──マクロンさんが立っていた。
柔らかそうでサラサラの髪。夜や暗いところでは渋茶色に、陽に当たると緑味の茶色に光を反射する薬剤調合魔法士らしい髪と、ダークヘーゼルの瞳の、のっぽの青年。
──なんでこんな所に?
解ってる。
これは、戦闘試験なんだから。私が見たままが体感する幻覚魔法がかかった特殊空間だから。
私が強くマクロンさんを意識して思い出していたから、偶々反映されたんだろう。これは、幻影だ。
幻影だけど、昨日ぶりのマクロンさんは、飛びついて、醜鬼の巣は怖かったと、愛唯の最大級の火球は恐ろしかったと、独りで心細かったから、よく頑張ったねって頭を撫でて、優しく熱を分けてもらい労って宥めて、今すぐ癒して欲しくなる。
彼の笑顔は破壊力抜群だった。今にも泣き出しそうな、鼻の付け根がツンとするし、眼が熱くなる。
「モモカ、知ってる人なのか?」
「私の世界の俳優さんに似てる気がします」
嘘は言えない。だから、お髭のない竹野内豊に似た人物という情報しか出さない。
まあ、竹野内豊はロン毛じゃないけどね。現代東洋人なのに違和感ないから、イケメン俳優は得だなぁ。
「そうか⋯⋯ なんでここに?」
「たぶん、これも幻影なんでしょう。ここに私達以外が居る筈もないですし」
「モモカ、ここまで頑張ったな? もういいから、力を抜いてゆっくり話そう?」
なんて酷いんや。マクロンさんの優しい声で、戦闘意欲を殺ぎに来た。
私の知ってるマクロンさんは、攻撃魔法は使えないと言っていたけれど、これは戦闘試験なんだから、何を出してくるか判らない。
贋マクロンさんは、両手を広げていつものぎゅっを促しながら、ゆっくりと歩を進めてくる。
「どうしたんだい? モモカ。独りで耐えて疲れただろう? 魔力を分けてあげるよ?」
こんな中ボスと闘えなんてなんて酷い。
これは、精神攻撃なんだろうか。
「僕が優しくしてあげてるのに、拒むなんて、悪い子だね? モモカ」
急に贋マクロンさんの表情が凶悪になっていく。
「いつものいい子になるまでお仕置きだよ」
マクロンさんの右手が振り上げられ、天に向けた手のひらに火球が生み出される。
見る見るうちに大きくなる火球が、余った魔力を帯電する静電気のように纏わり付かせ、揺らいだかと思うと、贋マクロンさんは、そのまま右腕を大きく振り降ろした。
次話
🚯10 ぴちょんの水球
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