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今日から冒険者(仮)
🚯12 謝罪と激おこ精霊たち
しおりを挟むキミカさんの背後の岩陰から、ガヴィルさんより背は高くないけど、薄いシャツの下にボディビルダーみたいな筋肉が隠されてそうな肉厚の体つきの、三十代後半から四十そこそこ、アラフォーの男性が現れる。
守護に憑いた精霊の属性に染まるという髪と眼は、赤。恐らく主に火の精霊が憑いているけれど、他にも守護を得てそうな魔力の層を身に纏っている。
日に焼けた肌と白いシャツの対比が際立っていて、ギルドマスターと呼ばれていたけれど、きっと、上級者なんだろうな。もしかしたらまだ現役なんだったりしてと思わせる鍛えられた体と、鋭い眼光に精悍で生命力に溢れた相貌。
緊張するね。めっさ見られてる。
「まあ、うちの職員全員が鑑定出来なかったんだから、魔力・魔力量のどちらも高いのは解ってたが、これ程とはな。その防御膜、俺の全力の魔法も物理攻撃も通さないだろう?」
マクロンさんは、確かこう言っていたはず。
「えへへ。今なら、隕石墜撃でも、一回くらいは耐えられそうな気はしますね~」
怒りで、と条件は付け加えておく。
この世界での唯一の心の支えだったマクロンさんを穢された気がして、勿論そんな気はなく言葉通り精神攻撃にも耐えられるかの試験だったんだろうけど、素直には許せる気がしない。
「コイツの試験の手段がモモカを傷つけたのは謝る。が、実際にはもっと酷い事を体験する可能性がある事は解っておいてくれ」
「勿論です。魔物は容赦はしてくれないでしょうから」
ここに辿り着く前に見た醜鬼の巣で、四肢がバラバラになった戦士の遺体や、生きてるけど焦点が合わず周りになんの反応もない女性達。
彼らは悲惨な目にあったのだろう。そして、ぴちょん達の守護がなければ、私も同様の体験をする可能性が高いし、そもそも愛唯の火球魔法に灼かれて死んでただろう。
「まあ、その、なんだ。お気に入りの俳優とは言え、今一番大切な存在を選び出して反映される心理操作の魔法だったんだ。確かに、人によっては、テスト段階で潰れる可能性もあったな」
剣術や体術、サバイバル能力や魔法が長けていても、心が弱い人はいるかもしれない。
今は普通に見えても、幼少時に虐待されて育った人や、誰かに裏切られて色んな物を失って一から出直すために、自由民を始める人もいるかもしれない。
ただ、日銭を稼ぐアルバイトとして町でお手伝いや日雇いの仕事を受けるために登録する、普通の人もいるかもしれない。
そう思ったら、この試験は厳しすぎるのかも。
「確かにな。自由民株は、何かの理由で国籍を持たない人間でも仕事に就けるように、身分証と資格、通行手形を兼ねた一種の有価証券だからな。生活の手段として、傭兵稼業じゃなくても持つ者はいるだろうな」
今後の試験の在り方に一石を投じられたのなら、私が怖いマクロンさんに涙した意味もあったかな。
──だから、モモカはお人好しすぎ~
──もっと怒っていいよね?
──ボクたちだって激おこだよ?
激おこなんて現代語、どこで覚えたの。
──え? アオイが言ってた
──アオイ、モモカやミドリの前と、他人の前で人が違うヨネ
──ああ言うの、モモカの故郷の言葉でぶりっ子って言うんデショ?
いや、ホント、色々覚えてくるのね。
いや、ぴちょんやルク達は、元々日本から着いて来た子だっけ?
次話
🚯13 上級魔法士
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