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自由民ギルド ロックウェル支部
⛔5 白草苺を求めて山頂付近の湖畔へ
しおりを挟む鑑定結果からすると、分類的には躑躅の仲間(蔓苔桃の一種)らしいけど、生態環境はクランベリーのそれなら、水辺が好きなのかも。
と言うことで──
「モモカ。ここに来たことあるか?」
頂上に近い辺りに、湖があり、色んな実りがあると言うので向かっている途中で、ガヴィルさんが訊いて来た。
「え? いいえ。精霊達が、この先に湖があって、色んな木の実が生ってるって言うから向かってるんですけど」
「そうか⋯⋯ 知ってて登ってるのかと思った」
「え? どうしてですか?」
ガヴィルさんもキミカさんも答えなかったけれど、その理由はすぐに解った。
標高が高いのか、日本は夏だったし喚び出された評議会国でも暖かかったし、この竜王国に来ても朝晩は涼しくても日中は暖かくなんなら暑い日もあったのでてっきり夏だと思ってたのに、湖から見える山の峰は、うっすらと白かった。
「ここ、標高高いの?」
「そうね。ロックウェル地方自体、広い高原で避暑地でもあるから、そこから更に登ったら、海岸地帯から見たら結構高いわね」
「そうなんだ⋯⋯ 雪積もってるからびっくりした」
ああ、と、何かを納得して頷くガヴィルさん。
「冬になれば、氷が張る湖沼もあるぞ? その上を人が歩けるくらい氷がぶ厚くなる地もあるから、やはり温暖な地域からしたらこの辺りは寒い方なのかもな」
「この湖は、絶対に凍らないけどね」
「不凍湖⋯⋯ て、事は、結構深いんだね」
周りの気温が氷点下になっても、湖全体が冷えないと湖面が凍結しにくいらしいから、それだけ容積があるって事で、琵琶湖ほど大きく波打つ湖ならともかくよく見るダム湖程度の面積なので、それだけ深いって事だろう。カルデラ湖とかかな? 200~300m、深いと500mとかにもなると言うからね。
岸辺には、思惑通りベリー類に限らず色んな木の実が生っていた。中腹で採集した碧山葡萄も。
「今度から、木の実の採集系統はここでしよう。いっぱいあるね! 薬草とかもありそう」
「そうね。ここは、国内でも最も肥沃な土地だから、大抵のものは揃うと思うわ」
なんと。登山道は途中獣道っぽくて日本の靴底のいいブーツを履いてなかったらキツかっただろうけど、それさえ我慢すれば、穴場ではないか。
誰も来ないのか、木の実や草花を穫られてもいないし、景色も人の手が入った様子はない。
それに、まるでイリュージョンアトラクションのように、色とりどりの蛍火(のような精霊達)が飛び交っていて幻想的で素敵だ。
だけど、肥沃な土地⋯⋯ とは、カルデラ湖じゃなかったのかな。
カルデラ湖って透明度が高く栄養塩類が乏しくプランクも育ちにくい貧栄養湖な事で有名なはず。この湖は見るからに流出入河川はなさそうだし、魚も居ないだろう。けど、ここは異世界だから、そうとも限らないのかな?
「こんな素敵なところ、観光名所になってそうなのに、誰も来ないんですか? 登山道、獣道っぽかったですよね」
「そうだな。異国の人は勿論近寄ろうともしないし、この国の者も、滅多には登らないだろうな」
「ここは、竜王国の民には聖地のようなものだから」
「え?」
精霊達に手伝わせて、依頼の白草苺を集めながら訊いてみると、二人とも、遠くを見る目で私には近寄れない水辺──湖を見ていた。
❈❈❈❈❈❈❈
琵琶湖は約670㎢で、淡路島(592.2㎢)が丸々入るくらい
(最大水深104m)
湖岸の木や石に当たって出来る飛沫が凍るしぶき氷はあるようですが湖面は凍りません
浜名湖は約65㎢で、薄ら凍ることはあるそうです
(最大水深4.8m)
ダム湖の奥多摩湖は4.25㎢で湖岸付近は凍るようです
(最大水深142m)
水深は面積に比べて深くなく、面積が広く容積のある琵琶湖は凍らなくて、水深は深くても面積が狭いダム湖は岸辺から内に向かって凍るようですね
次話
⛔6 青碧の湖水に
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