聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
115 / 163
自由民ギルド ロックウェル支部

⛔15 ウサギ狩り

しおりを挟む

 一匹づつ罠にかける非効率的な手段ではなく、前もって魔法が馴染みやすい魔石がついたピックをあちこちに設置し、ホーンラビットが集まった場所に向けて、魔法を走らせる。

 すばしっこいので、そのままではド素人の私の攻撃は、短剣や短槍、ナイフや弓矢は勿論、魔法すら当たらない。
 まずは足止めをするため、いろんな子の力を借りて、電気を発生させて電磁網のようなものをイメージしてホーンラビットを捕らえるのだ。
 死なせても血抜きとか解体とか出来ないので、気絶して動かないホーンラビットの手足を縛り、次々にエコバッグの中に放り込んでいく。

「それ、どうするの?」
「討伐確認部位の角か魔核を取れって言われてもまだ出来ないので、このまま持って帰ります」

 この絞り染めのエコバッグが無限空間拡張収納袋インフィニティ・インベントリー・バッグであると、ガヴィルさんは知っているけど、キミカさんは知らない。
 そのガヴィルさんも、3つあったことは知らなかったはずだけど、知らん顔して、見せたことのある薄い藤色(商品名はラベンダー)ではなく、濃い緑青色ろくしょう (商品名は常磐緑)の絞り染めエコバッグをポケットから出して、ウサギを入れていく。

 これはいつの間にか上着の左ポケットに入ってた。
 地精マナを扱うのがうまい恵みや生命力を司る精霊の子が、ぴちょんと同じように自分の霊気で満たして保存していたらしい。

「それは、異界流なの?」
「え?」
「袋の中を魔素で満たしてるなんて見たことないわ。それ、空間拡張収納袋ストップドワイドインベントリなんでしょ?」

 公言はしていないものの、落ち人救済監理局の副局長が、そこで寝泊まりしている少女の保護者を買って出て、自由民協会ギルドに同行する。それだけで、私は、異世界人ですってバラして歩いてるようなもの。
 キミカさんには、マディラさんとガヴィルさんに挟まれるようにして協会ギルドにやって来た時からの付き合いなので、隠しても仕方がない。

 別に地球産の技術ではないけれど、説明が面倒臭いので、曖昧に返事しておく。

「こうしていると、状態維持にいいんですよ」

 数えてなかったけど、10匹はとうに越して入れたような気もするけど、ま、いっか?

 と、思ってたら⋯⋯

「それ、幾つ入るの? どこまで入れるの?」

 どう答えたものか。

「パンパンにしたことないんで、ちょっとわかりません」

 正直に答える。本当に知らないのだから、嘘じゃない。ただ、ぴちょんは自分の霊気を補填すれば幾らでも保存できると言っていたから、もしかしたら、底なしなのかもしれない。

 気絶しているホーンラビットはあらかた詰め終わったので、立ち上がる。

「魔獣とは言え、絶滅させると生態系が崩れて、他の種も絶滅したり、異常繁殖しちゃったり、それまで抑えられていた別の何かが出て来たりするかもしれないから、この辺りはこれくらいでいいかな?」
「そうね。そういう事を考えられる辺り、ホント、モモカは初心者離れしてるわね。ああ、言い方が悪かったかしら、いいことなんだから、別に気にしなくていいのよ」
「そうだぞ、モモカ。中堅どころの協会ギルドの傭兵達もそこまで気が回らない奴は少なくないからな。評価されて然るべきだ」

 一応、誉められてるのかな。これも、テレビや本の受け売りなんだけどね。 

──それでも、その知識を正しく使いこなせるのはモモカのチカラでしょ
──そうそう、知ってても適所で使えなきゃ意味ないからね

 精霊達に励まされながら、もう少し移動してホーンラビットの様子を覗ってから、協会ギルドに戻る事にした。



 次話
⛔16 査定・買い取りは、奥の職員作業場で

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...