聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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自由民ギルド ロックウェル支部

⛔20 肉厚な身体のギルマスの熱血な声

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「ギルマス? なんスか? 加工途中で手を止めるとマズいものもあるンすよ?」

「ラーソン、ノーマン、ここしばらくの買い取り台帳と加工商品の一覧、売却記録を出せ」
「な、なンすか、抜き打ち調査ッスか?」
「それで終わればいいがな?」

 怖いってばさ。

 ラーソンと呼ばれた神経質な責任者っぽい瘦身の人の目配せで、全身が丸っこくつるぴかな頭に生クリーム搾ったみたいな前髪がちょこんと可愛らしい大きな赤ちゃんみたいなノーマンさんは、奥の書類棚へ書類を取りに行った。

「キミカさん、どうなってるんですか?」

 取り敢えず、買い取りが中断したようなので、せっかく気絶させてるホーンラビットが目覚めないように、常磐緑ときわみどり色のエコバッグに投げ込んで行く。
 キミカさんも手伝ってくれて、37匹すぐにしまい終わった。

「私が今までお世話した新人達がね、チマチマ低級魔獣狩りをしてたんじゃ食べていけないと、より高額の中級の魔獣に手を出したり街で別の仕事を請け負ったりして、怪我をしたり亡くなったり、一人前に成長する前に引退したりしてるの。モモカは身ひとつで来て、彼ら以上に何も持っていないでしょう? だから、お値段に色をつけてもらおうと、ギルマスに掛け合うつもりだったの。思惑と違うことになってるけど」

 ギルマスに声をかけようとすると、階下で低級魔獣の気配が群れで居るくらい大量に、突然に涌いたと言って見に行こうとしていた所だったので、私が捕獲したホーンラビットの査定中で、しかも生きてることを話したら、偶然こうなった⋯⋯らしい。

「ラーソン、買い取り査定の価格が適正提示だったのかを確認はしていないのか?」
「はぁ、一応、職員を信用して雇ってますからね。月末には会計士とも計算はしてありますよ。不正はなさそうでしたが」
「だとしたら、おめぇらの目は節穴って訳だな?」
「と言いますと?」
「ここにあったホーンラビットの買い取り査定の金額を見て見ろや」

 ギルマスは苛立たしげに、買い取り査定の紙をラーソンさんの胸に叩きつける。

「37匹⋯⋯ずいぶんとたくさん討伐してきたんですな。まあ、兔ウサギ系は繁殖力が強いですから、ほっとくとどんどん殖えるんでしょうが」

 ざっと目を通し、ギルマスに返す。

「計算は間違ってなさそうですよ」
「そうか。ラーソン、お前はたった今から、一階のラウンジで雑用係だ」
「なんですか、いきなり」
「これを見て、おかしいと思わないんなら、査定責任者の能力も資格もないってこった」
「そんな!?」
「ホーンラビットの討伐価格、完品の角の価格はいいが、それ以外の査定がゼロだ。おかしいだろ? 生きてんだぜ? 毛皮は加工業者に、肉は肉屋に、骨や内臓は錬金薬師に売れるものだ。生きてんだから、幾つかは魔核もとれるだろう? 角だけ持って来たんじゃねぇんだ。生きたまま丸ごとだ。知ってて容認してるんなら、お前らはぼったくり詐欺師の盗賊団だな?」 
「そのような言い様はあまりにも⋯⋯!!」

 ノーマンさんの持って来た台帳をパラパラとめくり、ペプラムさんが担当した所にはすべて折り目を付け、別の人のページにも、幾つかは目印を付けていくギルマスの顔が怖い。

「ざっと見ても、ペプラムの担当した新人の査定はほぼ全て、他にもちらほら、査定内容がおかしいものがあるな。結局お前らは、何も解ってない新人達から素材や討伐部位以外の売り物、手数料なんかを搾取、上前をはねて食い物にしてたってこったろ? 詐欺師の盗賊団じゃねえか。ふざけんな!? 自由民は国や政治に捕らわれない、どこでも身ひとつで誇りを持って生きていく人間の相互扶助支援団体だ。俺や世界中に散る同胞の顔に泥塗りやがって、この先、うまい飯が食えると思うな!!」

 一気にまくし立てて、ギルマスはペプラムさんの血色の悪い陰気な顔を殴り飛ばした。


 現役傭兵にしか見えない肉厚なギルマスの渾身の一撃──ペプラムさん、死んでないかな?



次話
⛔21 不正査定の顛末

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