124 / 163
竜族の棲む深い森の中で
🔇1 暗い森でハイキング
しおりを挟む普通に暗いけど、平気だ。
ミタムラの光触媒繊維に棲んでいた光霊が仄かに光ってくれるし、闇霊が私の視力を強化してくれて、暗がりでもよく見える。
なにより、みんなが居るという事が、不安を拭ってくれる。
夜が近いのかと思う薄暗さでも、ハイキング気分で歩いていた。
古代櫻色の絞り染めエコバッグから、チョコクッキーを出して囓りながら歩き、疲れる前に倒木に腰掛けて、同じ袋からレモンライム風味のサイダーを出して飲む。
三本の矢羽の柄がトレードマークのこのサイダーは、人工甘味料も入ってないし、原料の水も私の口に合うのか、炭酸飲料は苦手なのに、これだけは飲める。
運動に火照った身体に染み渡る感じが心地いい。
一見何も入っていないエコバッグだけど、広げるとぴちょんの霊気と魔素が詰まっている。(常磐緑色のはマナの霊気)
中に入れたものは、精霊達の霊気で現状維持され、経年劣化がない。
何度も出し入れする内に新しく開花した技能【再生】のおかげで、中にあったもの自体が、入っていた時の状態を覚えていて、中身を飲み残しても飲み干しても一度中にしまえば、次に出す時は開ける前の新品に戻っているのだ。
どういう原理だろう?
誰かに訊こうと思ったけど、たぶん訊いても私には理解できなさそうなので止めた。
それにガヴィルさんにも、自分からも訊かないから、持ってる技能については黙ってろ、新しく開花しても同様、他人にも話すなと、キツく言われている。
目新しい固有能力や利便性の高い技能を持っていると、掠われたり騙して利用されたりするからだとか。
自由民傭兵達も、手の内を明かすのは、時には命に関わる事もあるため、何かを見たとしても、戦闘スキルや固有能力について訊いたりするのはマナー違反なんだという。
自由民株の裏書きにある基本ステータス──職業、名前(傭兵としての通り名でも可)、株価(傭兵としての評価基準)、得意分野、基本能力、開示された称号など──以上の個人情報は周りに知らす義務はないらしい。
敢えて、ハッタリも含めて全部開示している人も居るらしいけれどごく僅かだとか。
勿論、私の異世界人としての、周りと比べての異能ぶりを開示するつもりはなく、キミカさんの指導に添って、一般的な情報公開に留めている。
──モモカ、右手後方と左手森の中に、人の気配がある
「え?」
──声に出さないで
──たぶん、自由民傭兵か、フリーの狩人かな
──装備は魔獣狩りに適した物っぽいよ
──マクロン式ほど完璧じゃないけど、隠遁術を使ってる人や、武術の達人なのかな? 気配を絶ってる人も居る
──そっちは、音や臭いは全く隠せてないけどね
🔇2 森の中で
0
あなたにおすすめの小説
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる