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竜族の棲む深い森の中で
🔇7 マウンティングじゃなくてマーキング
しおりを挟む一度は母親の元に帰った仔竜達が、パタパタと再び寄って来る。
私の肩にのしかかり、頭の後ろを塗りつける。
マーキングだそうだ。マウンティングではないらしい。
『ボクらと、仲良しのシルシ。帰り道で獣に襲われないよ!』
生き物の頂点に立つ竜族のマーキングがあれば、ほぼ確実に獣は襲ってこないのだという。
野生動物は警戒心が強いからこそ生き残れるし、自分よりも強敵には手を出さない。
それまで声はすれども姿は見せなかった青竜のお母さんが、巨木から降り立った。
青竜のお母さんは、シュッとしたスレンダーなブルーイグアナに蝙蝠の皮膜翼が生えたような姿で、翼は広げても羽ばたかないのは、星竜と同じだった。
風霊や大気の精霊、自身の魔力フィールドで浮いているらしい。
そりゃそうだよね。棲んでる巨竜がみんなで羽ばたいたら、森の木の葉は丸坊主になっちゃう。
評議国にいた時、魔物退治の遠征中、無能力者の私には何も出来ないので、せめてものお手伝いとして、ゴツイ牛の魔獣のような筋肉質の馬のブラッシングをしていた。
蹄鉄の手入れは出来ないけれど、天鵞絨のような艶々の毛を梳る事で、より艶が増すのだ。犬や猫のように痒いところをかけない彼らには、とても楽しみな時間だった。
その時のブラシはまだ持っている。
必需品として、馬車の中で抜け毛を取ったり毛の向きを揃えて手入れをし、夜は夕飯前に馬を梳いてやり、討伐作戦中や寝る間は、薄藤色のエコバッグにしまっていたのだ。
それを取り出し、そっとお母さん青竜の逞しい太股に触れる。
女性でも成竜は巨大過ぎて背中や首筋には届かないし、尾は敏感だったり触られたくないかもしれないので、脚に触れたのだ。まあ、急に触って驚かせて蹴られる可能性もあったけど。
でも、会話中、私の思考も読めてたみたいだし、触ろうとしてたのはバレてるだろうから、驚かせることもないかなという確信に近い読みはあった。
馬の、短い毛が詰んだスムースコート用の、短くて密集したブラシは一見デッキブラシみたいだ。
こんな長い棒がついたものも、明らかに質量的におかしいんだけど、ちゃんとエコバッグに入ってる。
取り敢えず柄の部分を外して、手に装着して、そっと撫でてみる。
子供達の鱗は、魚のように薄くて軟らかかったので、ブラシかけは躊躇われたけれど、お母さん青竜の鱗は、セラミック製か?と思うくらい硬かったので、遠慮がちに、でも大胆にブラシかけしてみる。
『おお。もう少し脛の裏側を⋯⋯』
魔法でクリーンをかけたり水浴びしたりするらしいんだけど、魔法で綺麗にするのと、ブラシかけは違うんだ、やっぱり。
星竜ほど大きくは無いけれど、それでも2㌧トラック級の大きさのブルーイグアナ(翼付)が、身を捩らせて、擦って欲しい所をこちらに向けるのが可愛くて、陽が傾き始めるまでずっとブラッシングし続けた。
次話
🔇8 首を伸ばしてねだった青竜の残した物
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私のTwitterを見てくださってる方はご存知かもしれませんが、この話は今朝、消滅したものをすべて書き直したものになります
本日は2作目は更新は出来ないと思います
申し訳ありません🙇
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