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竜族の棲む深い森の中で
🔇8 首を伸ばしてねだった青竜の残した物
しおりを挟む野菜好きのふたりのお母さんと、狼を勧めてくれたお母さんのブラッシングが、満足した頃には、森の木々に太陽が沈みかけていた。
「もう、こんな時間! 帰らなきゃ」
お芋を焼いた焚き火の後を崩して土をかけ、ぴちょんにお水も含ませてもらう。
『精霊のたくさん憑いた娘よ、持っていくがいい』
何をか? と思ったら、ブラッシングしていた場所に、きらきら光る貝殻⋯⋯じゃなくて、青竜の鱗が散らばっていた。
「いいの?」
『もちろん、汝が我らの身を繕ってくれたから出た、汝らには有用でも我らには不要な物。手間賃代わりに幾らでも拾っていけばいい』
やった。せっかくなので、全部拾わせてもらう。中には欠けたのもあったけれど、どう使うかは加工士の腕とセンス。
【鑑定】してみると、青竜の性質を一部受け継いでいるので、身につけていれば熱や火を避けられるとある。火属性へのお守りになるんだね。
一等綺麗な鱗をパーカーのポケットにしまい、他はエコバッグに入れる。
『ボクらのもあげるよ~』
おちびさん達が、柔らかくて半透明な、魚のそれのような鱗を集めて咥えて持って来た。
受け取ると、柔らかいからか、数枚はボロボロに崩れてしまったけど、7枚綺麗なまま残った。
重なり合うとシャラシャラといい音がする。
「ね、ぴちょん、お水を細く強く当てて、ここら辺に穴を通せる?」
──任せて
硬いものでも、高圧の蒸気や水をカッターにする工業技術があったな、と思ったので、頼んでみた。
綺麗に、紙にパンチ穴開けしたみたいに7枚とも穴が通った。
近くの木に這っている蔓草をとって穴に通し、ペンダントみたいにして首からかけたら、シャラシャラ音のする綺麗な青みの強い虹色の首飾りが出来た。
「ありがとう。あなた達とお友達のしるしね? 似合う?」
『うん。モモカ、可愛い。また来てね』
「うん。思ったより近いから、また来るよ」
ふたりのお母さん星竜と、3人のちびっ子に見送られて、湖沼を離れ、来た道を帰る。
ちなみに、狼を食べるという仔竜は、わりと筋肉質でコロコロしていた。ブルーイグアナというよりは、姿形はどっしりした海イグアナのようだった。色は綺麗な濃い青だったけど。
──ちゃんと竜燐も拾えたし、お友達出来て良かったね
「うん。竜族って思ったより気さくなのね」
──それはどうかな~
──あの親子が特別じゃない?
──青竜だったからかも
そうなん? まあ、同じ竜族でも、種族で性質は違うかもね。他には星竜としか会ったことないけど。
来た時より更に暗い森の小径を歩く。夕刻が迫っているからか、小鳥も小動物も姿を現さなかった。
森を抜けて街道に出る林を歩いていると、急に暗くなる。私の周りだけ。
大きな影が落ちて来たのだ。
見上げると、赤黒い全体像が把握できない大きなものがある。
首をあげたまま巡らせると、それは青竜より首の短い、ゲームによく出て来るような、いかにも火を吹きそうなドラゴンだった。
次話
🔇9 赤竜のご用はなんですか?
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