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竜族の棲む深い森の中で
🔇10 帰り道
しおりを挟む魔法に長けた人もたくさん住んでいて、精霊もたくさんいる平和なこの国でも、陽が落ちれば魔物や魔獣に襲われる事もある。
陽が傾き、城門が閉じる時間が近いため、街道には人の姿はない。
街の城壁が遠目に見える丘陵地の街道の真ん中に、音もなく砂を巻き上げることもなく静かに降り立った赤竜さん。
『ほれ、ここからなら、道も真っ直ぐで安全であろう。また、森に来たら、声をかけるのを忘れぬようにな』
赤竜さんと呼びかけたら、何人応えるんだろう?
『ったく。儂の名を呼べばよかろう。特別に教えてやる。滅多に人の子には教えぬのだがな。光栄に思うが良い。儂の名は紅玉随』
ちょっと誇らしげ。地球では、7月の誕生石で、悲しみや邪気を退け、希望に向かう勇気を奮い立たせるパワーストーンとして有名だよね。
『ほほう。そうか。そうであろう。では、忘れるな? 我が名と、森に寄れば挨拶をな』
やはり静かに飛び立ち、森へあっという間に帰って行った。
あの大きな翼で羽ばたくのではなく、魔力や精霊力で飛んでいるのだろう。
「でもね、カーネリアンは、勇気の石だけど、お守りとしては対人関係には効かないのよね~」
──ますますアイツにぴったりじゃん
──ホント、空気読めない奴だったよね
「まあ、ご機嫌で帰って行ったし、いいんじゃない? ここまで送ってくれたし」
私も機嫌良く、街を目指せるし。結果的に、青竜と赤竜の鱗がたくさん手に入ったし。
スキップしそうなほど機嫌良く、街道を下る。
街は一度坂を下りきって少し登ったところに城門があり、斜面にあって陽光をたくさん取り入れられる造りになっていた。
──モモカ! 避けて
──間に合わないよ! 防護領域展開!!
何事? 背後から、細い何かが飛んできた。
防護領域に弾かれて落ちたのを見ると、小さな矢羽根だった。先端に細い針がついている。
──猛毒じゃないだけマシだけど、神経麻酔毒だね
──モモカを生け捕りにしたいのかしら?
私を、生け捕り? 誰が?
考えている暇はなく、次々と小さな羽根が飛んできた。
次話
🔇11 襲撃
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