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心を守ってくれた優しい人
🚫15 ノリのいいイケオジ様
しおりを挟む王様の居る宮殿も表からではなく、マクロンさん親子の住むお屋敷から、芝生の広いお庭の中を伸びた廻廊を抜けて、ロングソードを佩いて短槍を構えた衛士が並ぶ通用口のような所から入る。
特に通行証を検分するとか、身分証明をする事なく、表情も動かさないし微動だにしない衛士の横を、顔パス状態で入っていくマクロンさん。
やはり、結構な身分なんだな。
お母さまの地位を訊かなかったけど、王妃付きの高級侍女って感じじゃなかったよね。お母さまが侍女を使ってたし。
王様の、寵姫とか側妃とかなら、あんな王城の敷地内とは言えお屋敷一軒家じゃなくて、後宮に居るもんだよね? 王妃なら尚更。
それとも、そうと解らなかっただけで、あれが後宮だった?
でも、王様が通うのに、見通しはいいけど警備もない、芝生以外何もないお庭の中のこんな長い廻廊、寒いし無防備に突っ切って行く訳ないよねぇ。
魔法士の多い国だといってたから、お城の中はどこも安全なのかな?
どんどん突き進んで、階段も上って、また長い廊下を通って、厚くて頑丈な造りの扉の前に立ち止まる。
「怖い人じゃないから安心してね?」
微笑んで、私のこめかみの生え際から後ろへ髪を撫で下ろすマクロンさんの目は、とても優しかった。
「陛下。セフィルです。戻って参りました」
ううっ 緊張する。
中から応えがあり、私の背を軽く支えていた左手を話して、扉を開ける。
背が一瞬、温もりが離れて、寒く心細く感じたけれど、すぐ温かなマクロンさんの手が添えられる。
室内は、想像していたような謁見の間とかじゃなくて、個人的な書斎っぽい本棚の多い部屋だった。
「セフィル? そなた、時折変わった手土産を持って来ることがあるが、さすがに人の娘はどうなんだ?」
「陛下への手土産ではありませんよ、わたしのです」
「解っとるわ。言ってみただけじ⋯ぁ⋯⋯て、なんだと? 今、なんと言った?」
「陛下への手土産ではありません」
「違う、その後だ」
わりとノリのいい王さまなのかな。
年の頃は四十前後かな? 白人って東洋人から見て、外見からの想像より若かったりするからな~。
シルバーグレイのキッチリとなでつけられた髪、薄菫色の混じる青灰色の目。
ドレスシャツが似合う、ハリウッドの時代劇の舞台セットとかにいそうなイケメン俳優っぽい佇まい。
そのイケオジ様が、慌ててマクロンさんに詰め寄る。
「そなた、竜の目だったのではないのか?」
「だったではなく、今もそうですが?」
「その、竜の目が、人間の娘を抱えてわたしのです、とは、どういう事だ? まさか」
「ええ。予定より3年ほど早まってしまいましたが、わたしの無二の萌々香です。可愛いでしょう?」
「結婚もせんうちから子持ちか。確かに色合いも似とるし小柄で可愛らしいが。星竜の好みか? 十二年前に約束したというのなら、十歳くらいに見えても最低でも15~16歳なのか? まさかもっと?」
なにげに失礼なことを漏らす人だな?
「陛下。萌々香は異界人とは言え、この国の言葉は理解しますよ?」
「なぬ!? 早く言わんか。お嬢さん、失礼なことを申し上げましたな。私は⋯⋯ おい、セフィルや、立ったままと抱っこのままで挨拶もおかしいだろう、そこのソファにでも座れ」
立派な三人掛けソファとローテーブル、一人掛けソファが向かいに二つ、上座に一つ。
典型的な配置だ。
王様は上座の一人掛けとして、私達は三人掛けソファの上座寄りの二席か、一人掛けにそれぞれ座る。⋯⋯と、思ってた。
次話
🚫16 常識とか非常識とか
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