聖女も勇者もお断り🙅

心を守ってくれた優しい人

🚫17 萌々香の好みを

　私をお父さん抱っこに抱え直して立ち上がり、王様の私的書斎を辞するマクロンさんに、王様が声をかける。

「セフィル。久し振りなんだ。夕飯は一緒に摂ろう」
「そうですね。萌々香ももかの好物を用意するように、厨房に要望を出してこなくてはなりませんから、僕たちはこれで」

　そう言えば、ガヴィルさん達の前では『わたし』って言ってたのに、王様の前では『僕』なんだね。お母さまの前ではどうだったっけ？

　どう言う使い分けなんだろう。

　王様の前から立ち去る口実かと思えば本当に厨房に来て、

「萌々香ももかは芹や蓬の仲間は食べられない • • • • • • から料理に入れないように。ベリー類が好きなので、デザートやサラダに多めに使ってくれ。獣肉より鶏肉、魚肉が好みなのでバリエーションを工夫するように。ああ、どれもあまり濃い味付けにしないように注意して」

などと注文をつけていった。そして、細かい好みをなんで知ってるん？

「ええっ？　そんな、何様？みたいな注文を出していいの？　偉そうだよ、恥ずかしい。
　あの、お肉もそのまんま焼いたのは出来れば遠慮したいですけど、薄切りにして味付け焼き肉や野菜炒めにとか、お鍋やシチュー、或いは挽肉にして肉団子とかハンバーグとか、腸詰めにして燻製や茹でてくれたら美味しく食べられますから」

　と、弁解したら、やらかしてしまった。

　肉団子は通じたけど、ハンバーグは通じなかったし、ウインナーソーセージは、焼いたり茹でたりして食べるけど、燻して保存はしないらしかった。

　ただ焼くだけのハンバーグからチーズinや煮込みハンバーグまで説明し、燻製の良さを解説させられる。
　私だって、そんなに詳しくないよぉ。

　でも、さすがは王宮の料理人、私の曖昧な説明で理解して、素敵な煮込みハンバーグを作ってくれた。

　ちなみに、ドミグラスソースもなかったので、必死にうろ覚えでいい加減な説明から完璧に再現した料理人を誉め称えたところ、マクロンさんは、王宮の厨房からマクロンさんのお屋敷専属スタッフに引き抜いてしまったのは、また別の話。



　今来てるワンピースに、更にレースのボレロやオーバースカートを重ねてドレスアップされて、お母さまとマクロンさんとで、王様のテーブルに着く。

　こんなん極端な緊張状態で、味なんかわかるのかな⋯⋯



　次話
🚫18　給餌行動