死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会三日目

119話 撃墜する者たち

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『激戦と波乱を繰り広げた魔撃墜ホープ・シューティング決勝戦もいよいよ大詰め! アルム選手がタリオナ選手を倒し、水晶球クリスタルを落下させるのが先か⁉ それとも追いかけるセロブロ選手がエミリー選手の水晶球クリスタルを破壊するのが先かァ⁉ 泣いても笑っても最後の大勝負‼』

『そのタリオナ選手が倒す、もしくはエミリー選手が守り抜くという可能性も忘れないで下さいねェ!』

「本当にすみませんでしたああぁァァ――――!」

 エリアは公平に解説し、興奮気味のサイベルを落ち着かせた。

「はぁ! はぁ! はぁ――――――――!」
(やばいやばいやばいよォ‼ 超ゥ不味いってェ……!)

 エミリーはセロブロから一心不乱に逃げ回る。

「【火球ファイヤーボール】」

 セロブロは百メートル以上と離れた距離だが、視野に入った瞬間に無数の火球を放った。

「ひゃあっ⁉ 【岩壁ロックウォール】!」

 目と鼻の先で爆裂した木を前に怖気づき、エミリーは過剰なまでに岩壁を生成した。
 他者に判断を委ねず、覚悟を決めていた彼女も土壇場どたんばでの狙撃ミスや好戦的でない性格が相まって逃げ続ける事しか出来なかった。
 
「ちっ、あそこまで逃げに徹されるとやりにくい!」

(彼女の魔力が消耗するのを待ってもいいが、タリオナが持ち堪えられる可能性はほぼ皆無)

 男女で素の身体能力に差があってもセロブロのほうが消耗は大きく、距離を縮めることも難しかった。

「……あまり性には合わないが、一か八かやるしかない!」

 セロブロは足を止め、周囲に火球を灯し始めた。

「【炎々する槍フレッド・スピア】!」

 一方、アルムたちの戦いはタリオナが必死の抵抗を見せ、四本の長槍が一斉に襲い掛かる。

「私の力じゃこの四本が限界、でも炎を纏わせている限りあんたに対抗手段は無い。あんた一人じゃ私に勝てないわっ!」

「……それは俺のセリフだ、バカ女」

 そう言ってアルムは左手に長槍を生成し、黒い魔力を纏わせた。

(確かに炎と万器統率ばんきとうそつの二層で重ねられた魔法を突破するのは容易じゃねェ。俺の黒憑クロウヴィルで一層、ベレスの手中抹消インディレータでも二層が限界だ……)

 アルムは眼前に迫る槍に狙いを定め、右手の長剣と接触させる。
 魔力密度で大きく上回る黒憑はセロブロの炎を一瞬で打ち消した。
 
「そのまま心臓を貫かれてしまえェ!」

 しかし万器統率の魔力密度には一歩及ばず、長剣を押し退けアルムに目掛けて突き進む。

「でもなぁ、だったら二回当てれば良い話じゃないのか?」

 今度は左手の長槍を突き立てて万器統率の魔力を打ち消し、自在に動かせていた槍は糸が切れたように地面に落とされた。

「なァ……⁉」

 大きな衝撃を受ける彼女を余所に、同じ手法を使ってあっという間に四本全ての槍が無力化した。

「セロブロがこの場に居合わせたらこの攻略法も意味はない。けどお前一人なら苦戦を強いられることはないんだよ」

「――――舐めんなァ!」

 魔力が底を尽き、意識を失いそうになりながらも足元に転がった石を掴み最後まで抵抗を見せる。

「言ったろ、すぐに終わらせるって」

 目障めざわりな炎が消えたアルムは影の中を潜り込み、一瞬の内に彼女の隣に移動する。

「――――かはっ……⁉」

 彼は躊躇ちゅうちょなくタリオナの腹部に膝蹴りを叩き込み、彼女の意識を奪った。

『魔力も炎も失ったタリオナ選手に抵抗の隙も与えずアルム選手の勝利だァ!』

すげェ! 去年の優勝者を倒してアルムって奴、凄すぎるだろ!」
「アルムたちのチームが三人だから80ポイント……個人優勝もほぼ確定じゃねぇか!」 

 サイベルを含め会場の観客たちは熱狂し、誰もがアルムたちの優勝を確信していた。

「落下でぶっ壊れるのを待っても良いけど、あっちの状況が分からない以上油断は禁物だよなぁ」

 アルムは黒棘を発動し、見晴らしの良い高台を用意する。

(これで俺のポイントは初日の60ポイントを合わせて合計140ポイント、これだけあればベレスが一対一ワオン・デュエルで優勝しても俺の総合優勝は揺らぐ事はない)

「楽しい大会だったが流石に疲れた。あとは観客として応援に徹しよう」

 アルムはいつか降って来るであろう水晶球を気長に待った。 

「ここ一番で撃とうと思っていた魔法をこんなところでお披露目とはな……」

 セロブロは周囲に火球を配置すると同時に右腕を軸に豪炎をグルグルと巻かせた。

『セロブロ選手は足を止めて魔法準備に取り掛かっているようですがあれは一体?』

 会場はアルムたちの勝利ムードだが、奇妙な魔法に観客一同が視線を向ける。

(仮に火球ファイヤーボールを連発したとしても僕の魔力が尽きるがさきだ)

「ならばであるこの魔法に賭けるしかない」

 セロブロは右腕を真っ直ぐ突き出し、エミリーの左腕に抱えられた水晶球に照準を合わせる。

「まずはその邪魔な壁を取っ払ってやるよ!」

 セロブロは配置していた火球を放った。

「…………遅い」

 晴天の大空を眺めて十数秒が経過するが、水晶球が降って来る気配は微塵みじんもなかった。

(そんな高い所にあるのか? でもカルティアの言い方からして目視で確認できる程度だろう……)

 彼は地面に伏せるタリオナを一瞥する。

「いや、あの様子は間違いなく気絶している」

(ならばなぜ降って来ない⁉ 無意識でも魔法が発動しているとでも言うのか⁉ だが先ほど気を失った時は武器が浮き続ける様子はなかったし……)

 森の奥から爆発音が鳴り響き、勝利の確信が揺らぎ始める。

「くっそ! こんな事になるならセロブロを追いかければ良かったぜ!」

 焦燥に駆り立てられたアルムは高台から降りる――――その瞬間、爆発地点とその反対側の森から白い光が姿を見せる。

『ここで試合開始から一時間が経過し、六度目の発光でぇ――――どゆことォ⁉』

「はぁ⁉ 何でそっちから……まさかッ⁉」

『アルム選手と戦う前から既に移動させていたのかっ!」

 口調を荒げつつもアルムと同じタイミングで結論に到達するエリア。

「やられたっ! 【黒棘ブラックパレス】!」

 着地までの時間すら惜しいとアルムは新たに足場を作る。

「もうなりふり構っていられねェ! 距離は遠いがこの場で破壊する!」

「きゃあああァァ⁉ 【岩壁ロックウォール】、【岩壁ロックウォール】、【岩壁ロックウォール】‼」

 エミリーは後ろから次々に火球を撃ち込まれ、右へ左へ逃げ惑う他なかった。

(どこに撃てばどう動くのか、理解してきた……)

 数十発に及ぶ火球から観察し、エミリーの行き先を予想する。

(今まで左右を二発ずつで切り替えた、そして今は右に六発……そして数瞬の間を置けば――――)

「左にれる……そして左に壁を立てさせ、再び右に一発っ!」

『諦めずに狙い続けるセロブロ選手、しかし魔力の底が見え始め精度が落ちて来てるか⁉』

(今のは布石、これで立ち位置は左でも彼女の意識は右に傾いた!)

「さぁ舞台は整った、あとはこれを叩き込む!」

 そう意気込んだセロブロは最後の火球を放つ。
 それは先ほど生成した左側の壁を破壊し、光り輝く水晶球を完全に捉えた。

「こんな負け方は絶対嫌だッ!」

 アルムも輝きを放つ水晶球を視界に収め、人差し指を前に突き出す。 

「【魔黒閃ビルスター】!」
「【焔螺旋ホムラセン】!」

 黒色の熱光線が、渦を巻いた烈火の炎が同時に放たれる。

 射線上に存在するもの全てを灰に帰す魔黒閃。
 渦を描き、貫通力と速度に心血を注いだ焔螺旋。

 薄暗い森の中から二つの光が消失する――――ほんの僅かな時間をずらして……。 
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