死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

文字の大きさ
14 / 121
魔法学園入学

14話 女の声

しおりを挟む
 その後もほかの受験生が実技試験に挑み続けた。
 一番最初に終わったおれは彼らの魔法を眺めながら同年代と己との実力差を見極めていた。

「――――良し、これで全員終了だな」

 マイルズは名簿と受験者を交互に見て確認する。

「不合格者はここを出て試験説明があった広場に居ろ。合格者は筆記試験の会場に案内するから俺に付いて来い」

 彼は受験生の動きを粛々と説明し、来たときと別の入り口に向けて歩き出す。

「くそぉ……!」

「これで終わりなのかよ……」

 俺を含めた合格者は苦渋の声を漏らす不合格者のそばを黙って通り過ぎる。
 特に声を掛けることも無いし、下手に逆撫ですれば何をされるか分かったものではない。同情や優越感は心の中にとどめておくのが最善だ。
 無論おれは通過すると確信していたためそれらの感情は湧かないが。

「これから校舎の中に案内する。迷子になるんじゃないぞ」

 試験場から出た俺たちは校舎内へ移動する。校舎の外見は十分綺麗だったが中身は更に重厚感のあるシャンデリアや装飾品で彩られ、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
 なかには学び舎に必要ないものも見受けられたが、在籍生徒の七割以上が貴族の出自であるため見栄えも重視しているようだ。

 しばらく廊下を渡り歩いて階段を上り二階の部屋に案内される。

「筆記試験はこの教室で執り行う。別の教師が来るから座って待っていろ」

 マイルズは列の先頭から離脱し、俺たちは教室へ入って行く。右側には長い黒板と教壇が設置され、反対側には階段状に長机と長椅子が造られていた。
 指定席では無さそうなため、自由に座って係りの教師を待っていること数分。静かな教室にドアが開かれる音が響く。
 受験者らの視線が一斉に女性教師に向いた。

「筆記試験担当のフェルン=リカードと申します。まずは実技試験お疲れさまでした。貴方たちが入学したら担任を受け持つことになるので、覚えてくれると嬉しいです」

 教壇に立った彼女は深くお辞儀し、優しい声色で話す。

「では試験用紙を配っていきます」

 人数分の冊子が宙を舞い、それぞれ目の前の机に着地する。
 風魔法だろうか、魔法学園の教師というだけあって魔法制御力は大したものだ。

 「試験時間は60分です、それでは始めてください」

 紙をめくる音があちこちから聞こえて筆記試験が始まった。

 ***

 試験開始から30分が過ぎる。
 内容は告知されていた通りで頭を悩ませることも無く問題を解き進めていった。
 しかしこの程度の内容が入試試験で出るという事は、学園そのものの魔法教育レベルが低いのかもしれない。まあ実技試験がメインで筆記試験は形だけ執り行っている可能性もあるにはあるが……。

「実技も筆記も満点に近い点を出せそうだし良いか……」

 独り言のように小さく呟き、次の問題に取り掛かる。

≪約五百年前に終結した死累戦争しるいせんそうで『死神』と呼ばれた人物の名前を答えよ。≫

 思いもよらない問題にペンの動きが止まる。
 歴史の問題で人物名を書くこと自体は珍しく無い。が、前世とはいえ自分の名前を解答欄に綴るというのは少しこそばゆいな……。
 過去の記録は幼少期に見漁っていたが、俺のことは通り名や悪行くらいなものだったから入試には出ないと油断していた……だが、まあ俺のことは俺が一番知っているからな。むしろ出してくれてラッキーだよ。

 気持ちの整理をつけた俺は解答欄に≪ギール≫と綴った。

 ***

「60分が経過しました。ペンを置いてください」

 試験終了の合図とともに、受験生たちはやり切ったようなため息を漏らす。

「これで入試試験の全てを終わります。試験用紙は机の上に置いたままで良いので、校舎玄関から帰って頂いて大丈夫です。皆さんと会える日を楽しみにしています!」

 試験用紙は置いたままで良いようなので荷物を持って教室を後にする。他の教室からもゾロゾロと受験生らが退出し出す。
 その中には堂々とした態度で歩くセロブロの姿も見えた。あの様子だと受かっているだろう。あんな失礼な態度を取る奴と学園で過ごしていくのは先が思いやられるが関わらなければいい話か。

「俺も帰ってロイドたちに報告だな」

「アルム……!」

 帰路に就こうと歩み出した時、集団の中から女性らしき声が聞こえる。振り向いて周囲を見渡すがそれらしい人物は見当たらない。

「気のせいか?」

 正体は分からなかったが敵意があったわけでは無い。
 一先ず、頭に入れながら今度こそ帰路に就いた。

 ***

 時刻は12時を過ぎ、陽が昇ったお陰で早朝よりも温かく感じる。
 あと数分で家に着くが、俺の名前を呼んだ者が接触してくることは無かった。だが声の主は名前を知っていて、かつ声を掛ける程度には交流があった人物で間違いないだろう。しかし同年代との交流で魔法を使えるような者は俺の知っている限り居ない。

「教師が俺に――――いや、それは無いか」

 教師であれば強引に呼び止めることも可能だろうし、あの場で俺を見逃す必要が無い。そもそも何故もう一度呼ぶことを止めたのだろうか? ここで考えても納得できる理由が考えられそうにないな。
 思考を巡らしている間に家に着いてしまった。俺は気持ちを切り替えて玄関ドアを開ける。

「ただいま」

「「お帰り! 試験はどうだった?」」

 帰宅早々、両親は鬼気迫る勢いで尋ねてくる。

「お、落ち着いて出来たよ……」

「そうか、落ち着いて出来たなら合格だな!」

「そうね、お疲れ様! アルム!」

 二人とも胸を撫で下ろす。
 レイナはともかくロイドも不安な様子だったのは意外だ。

「お兄ちゃんおかえり!」

 何かのソースを顔に付けた状態でマインも出迎える。

「今日はたくさんご飯を作ったの! 私も手伝ったんだよ」

 確かに先程から美味しそうな匂いが玄関にも漂っている。

「試験お疲れ様と合格を兼ねてお祝いなのよ!」

「お祝いは嬉しいけど気が早すぎだよ。落ちてたらどうすんのさ」

「お前が落ちるなんて事は無いだろう! もし落ちてたら学園に文句言ってやる!」

 ロイドは拳を突き上げた。
 半ば冗談には聞こえないのが恐ろしい。

「……ありがとう。じゃあお祝いを始めよう!」

 俺は一旦セロブロや謎の声を忘れて家族とお祝いを楽しむことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。 一つ一つの人生は短かった。 しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。 だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。 そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。 早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。 本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』

KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。 ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。 目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。 「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。 しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。 結局、悠真は渋々承諾。 与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。 さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。 衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。 だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。 ――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

処理中です...