死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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生徒会

44話 裏の顔

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 テーブルが宙に舞っている間に黒器創成くろきそうせいで長槍を作り出す。

「死ね!」

 テーブル越しから彼の立っている位置を予測し、勢いよく投擲とうてきした。
 レイゼンからは完全に死角からの攻撃、無傷で凌ぐのは不可能だ!

 槍がテーブルに突き刺さる瞬間――――目の前から槍とテーブル、そしてレイゼンが目の前から忽然こつぜんと姿を消した。

 あいつは転移魔法が――――‼

「理事長室で暴れるなんて即退学ですよ」

 背後から変わらぬ口調でレイゼンが話しかける。

「――――!」

 逃げ出したのかと勘違いし、身体が硬直してしまうが振り向きざまに短剣を生成してレイゼンに斬り掛かる。

「落ち着いてください、こちらに敵意はありません」

 しかし大きく空を切り、またしても背後から話しかけられる。

「黙れ!」

 彼の言葉を聞き入れず、短剣の握りグリップを逆向きに変えて腕を後ろに振った。

「仕方ありません」

 直後、突然目の前の景色が天井へ移り変わる。それに謎の浮遊感も感じた。

「ガッ⁉」

 しかし僅かな浮遊感を感じた後、床に背中を叩きつける。

「敵意は無いと言っているではありませんか……」

 俺を見下ろした状態でレイゼンはあきれたような声を漏らす。
 その顔面を蹴っ飛ばしてやりたいが衝撃で冷静にもなり、体重移動ですぐさま起き上がると仕事机に着地する。

「ふぅ……」

 呼吸を整えながら現状を確認する。
 無防備な状態で追撃しなかったことから敵意が無いのは本当なのだろう。
 無論、その言葉を信用する気は無いがここで暴れても得られるものは無いに等しいか……。

「質問に答えろ、お前は一体何者だ?」

 俺は机に足を乗せたままレイゼンに尋ねる。
 今は視界内に彼を収めておいて咄嗟とっさの回避行動を行えるよう心構えをするしかない。

裏社会スタンドルの最高幹部です」

 ソファーに座って俺の質問に躊躇ちゅうちょなく答える。
 スタンドル? とは聞いた事がない単語があったが、それはあとで調べればいい。

「お前らの目的は何だ?」

「世界征服です」

 ここでも躊躇ためらいなく答えるレイゼンに呆気あっけに取られてしまう。

「……俺に話させたリーゼンについては既に知っていたのか?」

「彼はこちらが送り込んだ諜報員スパイですから知っていました。黒玉や死神教については知りませんでしたが」

 よどみなく答えられると真実に思えてしまうが、そんな事は無いだろう。
 諜報員として抜擢ばってきされた人間の素性や状況を把握していないわけが無い。
 しかし下手に疑っても否定されるのがオチ。こいつの言うことは参考程度に聞き流す程度で良い。 

「さっきのセリフからゴンダが死んでくれた事が嬉しそうに見えた。仲間が死んだことを何故喜べる?」

 この質問自体は別にどうでも良い。
 興味があるのはレイゼンとスタンドルの関係性についてだ。
 単にゴンダが嫌な奴であるのなら話はそれまでだが、もしレイゼンと組織で溝があるならつけ入る隙が見つかるかもしれない。

「ああ、あれはですね……すみません今思い出します」

 すぐに答えを得られると思っていたが、レイゼンは眉間に指を添えて自身の記憶を辿る。
 まあ六年以上も前になれば忘れてしまって仕方ない。
 それに当時の事を振り返れば、泥潜蛇グランド・サーペントが空から落ちてきたのも転移魔法を使用したというなら納得できる。

「そう言えば、お前らはあの雪山で何をしていたんだ?」

「あの日は死滅大陸から運んできた魔物が与える影響がどれ程になるのか調べていました。ですので貴方が戦った泥潜蛇グランド・サーペントは死滅大陸産なんです」

「死滅大陸産ね……お前、いま死滅大陸って言ったのか⁉」

「ええ、そうですが何か問題でもありました?」

 キョトンとした顔で聞き返され、俺は心の底からこいつの顔を殴りたくなった。
 死滅大陸とはここから数千キロ近く離れた大陸であり、前世の俺が住んでいた土地だ。

「お前、一度に転移できる距離は十数キロが限界って言ってただろ!」

 まえにレイゼンを特集した王国新聞でつづられていた情報だ。

「新聞の事ですね、あんなもの嘘に決まっているじゃありませんか。私は一度訪れたことがあれば、魔力が無くならない限り、一瞬で転移できますよ」

「……ああ、そう」

 俺が行きたい場所を一瞬で、しかも魔物を送迎する余裕すらあるなんて、こいつが反社とか相当ヤバいんじゃねえの?
 
「もし行きたい場所があれば送り届けますよ」

「余計なお世話だ」

 俺の思考を読み取ったのか笑みを浮かべるレイゼン、適当に受け流してこの場で知りたい情報を精査し始める。
 正直、もっと訊きたい事はあるが驚くことが多すぎて少し疲れた。それに疲弊した状態で彼の話を聞いても真偽を見極めるのは難しい。
 表の世界で獲得した地位を簡単に捨てられる訳では無いし、会おうと思えばいつでも会えるだろう。

「あと二つ訊きたい。自分の正体を明かしたのは何故だ?」

 俺は考えた末に二つの質問を考え、一つ目を投げかける。
 散々質問しておいてなんだが、正体を明かした彼の行動は合理性が皆無だ。
 俺の怒りや反感を買うことなど目に見えているだろうし、黙ったまま『心強い理事長』という立ち位置を確立していたほうが敵対しなくて済む。
 彼自身もその奇行を除けば、合理性と理屈に沿って動いているため、どんな思惑があるのか更に気になってしまった。

 尋ねられたレイゼンは数秒の沈黙の後、口を開く。

「……私を倒せたときにお答えしましょう」

 素直に答えてくれると思ったが、予想外に回答は渋ってしまう。
 まあ答えてくれなくても不利益は無いから良いか。
 それにどのみち殺せるくらいは強くならなくちゃいけないからな。

「最後に俺に敵対する意志はあるのか?」

「今のところありません……」

 最も重要な質問をすると笑みを浮かべながら即座に答える。

「ただしそちらの出方次第では容赦しません。その矛先は貴方やご家族、そしてご友人かもしれませんが」

 直後、金色の瞳は鋭い目つきで俺を睨みつける。
 そんな視線を向けられた俺は机から降りてレイゼンに近付いた。

「俺も今のところ敵対する気は無い。裏社会おまえらがどんな悪事を働こうと勝手だが……」

 俺はレイゼンの顔にグイっと近付き、数センチまで距離を縮める。

「周りの連中に手を出してみろ。お前も、その組織も、だれが相手だろうとぶっ潰してやるよ」 

 お互いに睨み合いながら脅迫を交わした。

「……話し合いが終わったようなので今度こそ帰ります」

「ええ、長く引き留めてしまって申し訳ありませんでした」 

 殺伐さつばつとした雰囲気から一転し、普通の生徒と教師の関係に戻る。

「失礼します」

 俺はカバンを手に取って理事長室を後にする。
 少なくとも表面上で友好的にしていれば、危害は加えないようだし、しばらくは様子を見るしかない。
 だがそれも俺の実力がレイゼンより劣っている今だけだ。
 俺の大切な人たちに指一本だって触れさせたりはしない……。

「しかしいつの世も平和な時代なんて存在しないのな……」

 俺は肩を落としながら帰路きろに向かった。
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