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点滅信号
高校二年生②
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今日も朝が来た。まだ世界は滅ばないらしい。
梓月は鉛のように重い自分の身体を両手をついて起こす。布団ではなく堅い畳の上で寝ていたせいで、背中が痛い。
昨夜は、夕飯を食べている最中に父親がテレビに癇癪を起こして熱いお茶の入った湯呑みを投げてきて、自分がそれに驚いて箸を落として、怒られた後に散々嬲られた。眠る前の最後の力を振り絞って風呂に入った昨日の自分を褒め讃えたい。
嫌な気分になったところで、洗面所に行く。鏡を見ると顔にはっきりと畳の跡が残ったままなのに気づき、何度か頬を撫でてみるが意味は無さそうだった。
歯磨き粉のチューブを捻っても、中身が出てこない。何度試しても結果は同じなので諦めてそのまま磨くことにする。こんな時に限って、替えが切れていたのを忘れていた。落胆して普段から重い瞼が更に落ちてしまった。
顔はとりあえず洗い終えたが、髪がどうにもならないので、部屋に戻ってドライヤーを取ってくる。髪を乾かす音で起こしてしまわないよう、半乾きの状態で終わらせる。
髪はあちこちが傷んでいて、適当に毛先を切って誤魔化している。偶然にも横髪の長さが揃いそうだったので、整えたものの、切りすぎてしまって結局左右の長さがちぐはぐになってしまった。
朝はいつも食欲が無いので、冷蔵庫にあった牛乳をコップ一杯だけ飲む。そして制服に着替え、鞄に教科書を入れて、玄関に向かう。いつもリボン結びをしても靴紐の長さが合わなくなってしまうのを不思議に思いながら、不格好な靴で家を出る。
学校までの道程が遠い。普段は10分もあれば着くところを20分ほどかけて歩く。この通学路を歩いている間は何も考えずにぼーっとしていることが多い。
寝起きの目には痛い白の制服が増えてきた。遠くに紫色の高い頭が見えると、少しだけ足並みを速くする。
「D君おはよ」
「梓月くん、おはよう!眠そうだね、大丈夫?」
「眩しくて……」
「日傘いる?折りたたみあるけど」
「いや、そうじゃなくて。制服の白が……」
本当にわかってない様子のD君を見て呆れながらも、いつもと変わらない姿に安心する。
教室に入ると、既に半分ほど登校していた。
「あっ!D君だ!おはよう!ねえ聞いてよ、こいつ昨日夜中にコンビニ行こうとして迷子になってさぁ~」
「ちょっと!やめてってば!」
「うるせえ、事実だろうが。ほら、あの時の写真見せてやるから」
「え~?」
梓月は机の上に荷物を置いて、椅子に座って一息つく。すると、D君が声をかけてきた。
「そうだ、梓月くん」
「ん?」
「今日一緒に帰れる?」
「うん」
「じゃあ放課後、校門前で」
「わかった」
D君は嬉しそうな顔をした後、友達の方へ戻っていく。楽しそうに話している姿を少し眺めた後に机に突っ伏して寝たふりをする。
特に話しかけてくる人もいないし、話したい人もD君くらいしかいない。予鈴が鳴って鞄を下ろして、五分間の暇つぶしに校庭を見ると見覚えのある顔の生徒が時間と戦いながら走ってくるのが見えた。今日もいつも通り。
──────────────────
今日も昼が来た。まだ世界は滅ばないらしい。昼休み、屋上で弁当を食べる。今日は天気が良くて気持ちが良い。
「D君、俺と食べてていいの」
「えっ、だって僕がいないとひとりじゃん」
「はいはい、D君は素直で良い子だねえ」
「えっ?」
「変な顔」
「あ、ありがとう……」
不服そうにパンをほうばる顔は幼く見えた。
D君の様子がおかしい。いつもなら、昼ご飯を食べた後はスマホを見たり、漫画を読んだりと好きなように過ごしているのだが、最近はずっとこちらを見てくる。
「なに」
「なんとなく」
「落ち着かないからやめろよ」
「もうすぐ隕石落ちるかも」
「は?」
「なんとなくだよ」
「…そう」
「でもいつ落ちるのかな~?もう半年だよ」
今日はちょっとおかしいけど、いつも通り。
──────────────────
朝が来た。まだ世界は滅ばないらしい。
D君は、雷の音で目が覚めた。窓の外は土砂降りだった。時計を見るとまだ朝の5時。いつもギリギリに目が覚めるので驚いた。カーテンを開けると、空が真っ黒に染まっていた。
ちかちかと光っているので窓を覗き込んでみると突然消えてしまった。不思議に思い窓から離れるとまた光り始める。光っていたのは窓に反射していた携帯のランプだった。
画面を開くと、メールのマークが点滅していて開くと梓月からだった。
『雨すごいね。今日こそ隕石落ちそう』
という文面と、傘を持った猫の絵文字が添えられていた。D君はすぐに返信をした。
『登校する時気をつけてね!雷でも怖いから、やっぱり隕石落ちて欲しくないかも』
梓月からしばらく返事がないので支度をしようかと部屋から半分出た時に携帯が鳴り響いた。
「えっ、で、電話!?」
慌てて通話ボタンを押しても、しばらく何も聞こえなかった。
「梓月くん?」
「隕石、落ちるって」
「なに?」
「……最悪」
「え、ごめん!どうしちゃったの」
「隕石落ちるから会いに来い」
「……梓月くん、ごめ—」
「早く」
「い、今行く!」
傘立てにあるビニール傘を掴んで外に出ると、轟音が響き渡った。
梓月の家には行ったことがないが、周辺に来るなと散々言いつけられていた為、大まかな場所は把握していた。近くであろう住宅街を歩いていると、錆びたアパートの扉の前でうずくまっている人影を見つけた。
「梓月くん!」
「ホントに来るんだ」
叩きつけるような雨で髪も服も濡れた梓月に傘を傾ける。梓月は、ゆっくりと立ち上がって傘のシャフトを掴んだ。その手は寒さでずっと震えていた。
「ここから離れよ」
梓月は小声でそう合図して覚束無い足取りで傘を引く。
きっとD君が来たことも、雨で音が掻き消されて、父親には気づかれてないだろうと信じて足早に家から逃げる。二、三軒ほど離れてから梓月が話す。
「追い出されて傘なくて、どこも行けない」
「うち来る?」
無言で小さく縦に首を振る姿はまるで捨てられた子犬のよう。梓月が不安そうに度々振り返るので、D君も歩く足を早めた。
「タオル持ってくるから待ってて!」
「ありがと」
家につけば、梓月をタオルで包んで風呂場まで連れていく。すると、廊下の先から母が歩いてくる。
「どうしたの」
「友達来てるんだけどシャワー貸してもいい?」
「いいけど、あんまり遅くならないようにね」
「わかった」
脱衣所にバスタオルと着替えを持っていく。
シャワーの流れる音を聞きながらリビングに戻ると、テーブルの上には家族三人分の朝食が用意されていた。新聞を読んでいる父が声をかけてきた。
「今日は早いな」
「雷で目が覚めたんだ」
父が窓の外を眺めると、鳴り止む気配のない雷が明滅していた。そう話している間に、梓月の服を乾燥機に入れてきた母が戻ってくる。
「母さん、今日は休ませよう」
「ええ、そうしましょう」
「いいの!」
「危ないもの、お友達はどうするのかしら……」
「あ、休むって……!」
「そう、じゃあ一緒に連絡しておくわね」
学校へ連絡した後、梓月が風呂から上がってきた。
「ありがとうございました」
梓月は猫背で丸まったお辞儀をする。
「蓮くん、何かあったの?」
「家が停電してて」
「あら、大変ね!折角だからご飯食べていく?」
「うん!お願い」
D君が、断ろうとした梓月の言葉を遮って、席に座るよう促す。
「突然来てすみません。食べたらすぐ帰ります」
「いえいえ!良いのよ、ゆっくりしていって」
母は嬉しそうに朝食を用意していた。梓月は、自分が場違いだと感じていたが、同時にとても安心していた。
自分の友人はこの家庭で育ち、あのように穏やかで優しく純潔な人間になったのだろうと思わざるを得なかった。汚れて草臥れた自分のような人間が、そばに居ていいのか。
食事を済ませた梓月は、早々に帰ろうとする。
家族はまだ居たらいいと引き止めたが、何かに焦っている様子の梓月は聞かなかった。靴を履いて、扉に手をかけたところで振り返り、見送りに来たD君を見る。
「本当に着いていかなくていいの?」
「大丈夫。お前が根っから酷い奴だったら良かったのに」
「ええっ、どうして……」
「腹立つ」
雨の中、傘を差して帰っていく背中が見えなくなるまで見ていた。
梓月は鉛のように重い自分の身体を両手をついて起こす。布団ではなく堅い畳の上で寝ていたせいで、背中が痛い。
昨夜は、夕飯を食べている最中に父親がテレビに癇癪を起こして熱いお茶の入った湯呑みを投げてきて、自分がそれに驚いて箸を落として、怒られた後に散々嬲られた。眠る前の最後の力を振り絞って風呂に入った昨日の自分を褒め讃えたい。
嫌な気分になったところで、洗面所に行く。鏡を見ると顔にはっきりと畳の跡が残ったままなのに気づき、何度か頬を撫でてみるが意味は無さそうだった。
歯磨き粉のチューブを捻っても、中身が出てこない。何度試しても結果は同じなので諦めてそのまま磨くことにする。こんな時に限って、替えが切れていたのを忘れていた。落胆して普段から重い瞼が更に落ちてしまった。
顔はとりあえず洗い終えたが、髪がどうにもならないので、部屋に戻ってドライヤーを取ってくる。髪を乾かす音で起こしてしまわないよう、半乾きの状態で終わらせる。
髪はあちこちが傷んでいて、適当に毛先を切って誤魔化している。偶然にも横髪の長さが揃いそうだったので、整えたものの、切りすぎてしまって結局左右の長さがちぐはぐになってしまった。
朝はいつも食欲が無いので、冷蔵庫にあった牛乳をコップ一杯だけ飲む。そして制服に着替え、鞄に教科書を入れて、玄関に向かう。いつもリボン結びをしても靴紐の長さが合わなくなってしまうのを不思議に思いながら、不格好な靴で家を出る。
学校までの道程が遠い。普段は10分もあれば着くところを20分ほどかけて歩く。この通学路を歩いている間は何も考えずにぼーっとしていることが多い。
寝起きの目には痛い白の制服が増えてきた。遠くに紫色の高い頭が見えると、少しだけ足並みを速くする。
「D君おはよ」
「梓月くん、おはよう!眠そうだね、大丈夫?」
「眩しくて……」
「日傘いる?折りたたみあるけど」
「いや、そうじゃなくて。制服の白が……」
本当にわかってない様子のD君を見て呆れながらも、いつもと変わらない姿に安心する。
教室に入ると、既に半分ほど登校していた。
「あっ!D君だ!おはよう!ねえ聞いてよ、こいつ昨日夜中にコンビニ行こうとして迷子になってさぁ~」
「ちょっと!やめてってば!」
「うるせえ、事実だろうが。ほら、あの時の写真見せてやるから」
「え~?」
梓月は机の上に荷物を置いて、椅子に座って一息つく。すると、D君が声をかけてきた。
「そうだ、梓月くん」
「ん?」
「今日一緒に帰れる?」
「うん」
「じゃあ放課後、校門前で」
「わかった」
D君は嬉しそうな顔をした後、友達の方へ戻っていく。楽しそうに話している姿を少し眺めた後に机に突っ伏して寝たふりをする。
特に話しかけてくる人もいないし、話したい人もD君くらいしかいない。予鈴が鳴って鞄を下ろして、五分間の暇つぶしに校庭を見ると見覚えのある顔の生徒が時間と戦いながら走ってくるのが見えた。今日もいつも通り。
──────────────────
今日も昼が来た。まだ世界は滅ばないらしい。昼休み、屋上で弁当を食べる。今日は天気が良くて気持ちが良い。
「D君、俺と食べてていいの」
「えっ、だって僕がいないとひとりじゃん」
「はいはい、D君は素直で良い子だねえ」
「えっ?」
「変な顔」
「あ、ありがとう……」
不服そうにパンをほうばる顔は幼く見えた。
D君の様子がおかしい。いつもなら、昼ご飯を食べた後はスマホを見たり、漫画を読んだりと好きなように過ごしているのだが、最近はずっとこちらを見てくる。
「なに」
「なんとなく」
「落ち着かないからやめろよ」
「もうすぐ隕石落ちるかも」
「は?」
「なんとなくだよ」
「…そう」
「でもいつ落ちるのかな~?もう半年だよ」
今日はちょっとおかしいけど、いつも通り。
──────────────────
朝が来た。まだ世界は滅ばないらしい。
D君は、雷の音で目が覚めた。窓の外は土砂降りだった。時計を見るとまだ朝の5時。いつもギリギリに目が覚めるので驚いた。カーテンを開けると、空が真っ黒に染まっていた。
ちかちかと光っているので窓を覗き込んでみると突然消えてしまった。不思議に思い窓から離れるとまた光り始める。光っていたのは窓に反射していた携帯のランプだった。
画面を開くと、メールのマークが点滅していて開くと梓月からだった。
『雨すごいね。今日こそ隕石落ちそう』
という文面と、傘を持った猫の絵文字が添えられていた。D君はすぐに返信をした。
『登校する時気をつけてね!雷でも怖いから、やっぱり隕石落ちて欲しくないかも』
梓月からしばらく返事がないので支度をしようかと部屋から半分出た時に携帯が鳴り響いた。
「えっ、で、電話!?」
慌てて通話ボタンを押しても、しばらく何も聞こえなかった。
「梓月くん?」
「隕石、落ちるって」
「なに?」
「……最悪」
「え、ごめん!どうしちゃったの」
「隕石落ちるから会いに来い」
「……梓月くん、ごめ—」
「早く」
「い、今行く!」
傘立てにあるビニール傘を掴んで外に出ると、轟音が響き渡った。
梓月の家には行ったことがないが、周辺に来るなと散々言いつけられていた為、大まかな場所は把握していた。近くであろう住宅街を歩いていると、錆びたアパートの扉の前でうずくまっている人影を見つけた。
「梓月くん!」
「ホントに来るんだ」
叩きつけるような雨で髪も服も濡れた梓月に傘を傾ける。梓月は、ゆっくりと立ち上がって傘のシャフトを掴んだ。その手は寒さでずっと震えていた。
「ここから離れよ」
梓月は小声でそう合図して覚束無い足取りで傘を引く。
きっとD君が来たことも、雨で音が掻き消されて、父親には気づかれてないだろうと信じて足早に家から逃げる。二、三軒ほど離れてから梓月が話す。
「追い出されて傘なくて、どこも行けない」
「うち来る?」
無言で小さく縦に首を振る姿はまるで捨てられた子犬のよう。梓月が不安そうに度々振り返るので、D君も歩く足を早めた。
「タオル持ってくるから待ってて!」
「ありがと」
家につけば、梓月をタオルで包んで風呂場まで連れていく。すると、廊下の先から母が歩いてくる。
「どうしたの」
「友達来てるんだけどシャワー貸してもいい?」
「いいけど、あんまり遅くならないようにね」
「わかった」
脱衣所にバスタオルと着替えを持っていく。
シャワーの流れる音を聞きながらリビングに戻ると、テーブルの上には家族三人分の朝食が用意されていた。新聞を読んでいる父が声をかけてきた。
「今日は早いな」
「雷で目が覚めたんだ」
父が窓の外を眺めると、鳴り止む気配のない雷が明滅していた。そう話している間に、梓月の服を乾燥機に入れてきた母が戻ってくる。
「母さん、今日は休ませよう」
「ええ、そうしましょう」
「いいの!」
「危ないもの、お友達はどうするのかしら……」
「あ、休むって……!」
「そう、じゃあ一緒に連絡しておくわね」
学校へ連絡した後、梓月が風呂から上がってきた。
「ありがとうございました」
梓月は猫背で丸まったお辞儀をする。
「蓮くん、何かあったの?」
「家が停電してて」
「あら、大変ね!折角だからご飯食べていく?」
「うん!お願い」
D君が、断ろうとした梓月の言葉を遮って、席に座るよう促す。
「突然来てすみません。食べたらすぐ帰ります」
「いえいえ!良いのよ、ゆっくりしていって」
母は嬉しそうに朝食を用意していた。梓月は、自分が場違いだと感じていたが、同時にとても安心していた。
自分の友人はこの家庭で育ち、あのように穏やかで優しく純潔な人間になったのだろうと思わざるを得なかった。汚れて草臥れた自分のような人間が、そばに居ていいのか。
食事を済ませた梓月は、早々に帰ろうとする。
家族はまだ居たらいいと引き止めたが、何かに焦っている様子の梓月は聞かなかった。靴を履いて、扉に手をかけたところで振り返り、見送りに来たD君を見る。
「本当に着いていかなくていいの?」
「大丈夫。お前が根っから酷い奴だったら良かったのに」
「ええっ、どうして……」
「腹立つ」
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