寂しい幽霊の生かしかた

六二三(ろにさ)

文字の大きさ
10 / 15
点滅信号

高校二年生

しおりを挟む
梓月とD君は、放課後に帰り道の公園のブランコに座っていた。

夕焼けに染まった赤い砂を蹴りながら思い出したように梓月が話す。

「そういえば、今日さ……」

「うん?」

「俺、変な夢を見たんだよ」
「どんな夢なの?」

「いや、それがさ。なんか、いきなりお前が居なくなってさ……」

「えっ、ああ、僕が出ると思わなくてびっくりした」

「それで俺はずっと探してたんだけど見つからなくて……」

D君はそれを聞いて朝の出来事を思い出す。

「だから梓月くん、朝あんなメールしてきたんだ」

「そう、そうなんだよ。なのに携帯繋がんないし」

「あー、ごめんね。充電切れてたみたいで」

「次からは気をつけてくれよ、本当にいなくなったのかと思った」

「はは、どこに行くって言うの」

「宇宙とか」

「ロケットに乗って?」

「予約いっぱいだから無理かも」

先月末から、世間は隕石落下の予言の話題で持ち切りだった。世間のオカルトブームは根強い。月への逃避チケットは既に完売したらしい。

「聞いた?もしかしたら隕石が落ちてくるかもしれないって」

「予言だっけ。テレビでやってたよね。世界滅亡なんて、信じられないね」

「隕石がぶつかったらどうなんのかな、爆発?」

「真っ二つに割れるのかと思ってた」

「地球のこと卵だと思ってる?」

梓月が近くにあった小枝を拾って、砂に丸を描く。右上に石ころを置いて枝でつついて転がすと、地球に衝突した。

「地球がなくなったら宇宙に投げ出されるのかな」

D君も枝を拾って、丸の周辺に棒人間をふたつ描いた。

「最終的にはブラックホールに吸い込まれて終わるんじゃない」

梓月が大きな渦を描いて棒人間が掻き消されて行く。

「ブラックホールの中って何も無さそう」

「入れたとしても特異点に集まって点になるから何も残んないんだよ」

梓月が人差し指と親指で5ミリメートルの隙間を作って、このくらいと言って笑う。

「凄いなあ、東京タワーも仏像も…あ、ゾウも」

梓月が手放し地面に落ちた枝が、小さなクレーターを作って止まった。

「もし明日世界が終わるとしたら何したい?」

そう言いながら、D君は喋りに合わせて枝を振る。

「別に何もしたくないけど……」

「僕はやりたいことがたくさんあるから困っちゃうかも」

「例えば?」

「まず、お昼寝」

「いつもやってんじゃん」

「それからお菓子食べながらゲームしたり漫画読んだりテレビ観たり……」

「それいつもと同じだよ」
「でもきっと楽しいよ」

「…確かに。俺は貴重な時間だから普段やらないことに使いたかったけど、楽しければなんでも一緒か」

梓月が土を蹴ってブランコを漕ぐと、少し寂しい空が近くなった。

「その時は俺も誘って」

「いいの?」

「俺がこう言ってるんだから良いんだよ」

「じゃあ、どうしよう」

梓月の家には一度も行ったことがない。本人が来ないように散々言ってくるからだ。どこで待ち合わせをしようと考えていると梓月が思考を遮る。

「迎えに来てよ」
「えっ」

「どうせ集合場所とか考えてたんでしょ。もうその時には世界が滅茶苦茶だし。D君もそれでいいよね?」

「え、あ、うん……」

「よかった」

梓月は、返事を聞くと靴で砂を弾きながらブランコを止めて、笑いながら言う。

「隕石早く落ちてきたらいいね」

梓月は、ブランコから降りて目に付いた小石を蹴り飛ばすと、安全柵に当たり高い音をたてる。

「運が、良ければ」

D君は落ちるとも落ちないとも言わず、視線を落として黙り込んでしまった。

「楽しければいいって言ったじゃん」

「あ!そ、そうだね。お菓子も漫画もゲームもいっぱい買って、遊んで、喋って……そうしよう」

D君は困ったように笑いながら指を折り数える。それを見て満足したのか、梓月は今日はもう帰ろうと荷物を持って自転車に乗る。

「持久走来月からだっけ」

「うわ!嫌なこと思い出しちゃった……」

「あはは、頑張ろうね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

処理中です...