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お祭りと突然の
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「苺飴! 廉くん、苺飴買ってくる!」
最初の緊張は何処へやら。
私の腕にはタコ焼き、檸檬くんの腕には串焼きの袋がぶら下がり、今まさに新たな食べ物を買いにいこうとしている。
「こら! はぐれるから一緒に! それ買ったら休憩な」
先に行こうとして手をつかまれ、苺飴の行列に並ぶ。
「それにしてもすごい混むんだな。毎年こんな?」
「私も一昨年ぶりだけど……なんか年々混むようになってる気がするかも」
石畳みに露店が並ぶ通りは、人でごった返している。
列の前のカップルは、人目もはばからずイチャイチャしていて目のやり場に困る。
と、今日幾度となく繋がれる手に視線をやった。
「ーー私達、カップルに見えてるのかな。なんて」
ふわふわする。
祭りにつられて常に無いことを口走っていることに、気付かなかった。
すると檸檬くんは繋いだ手を、スイっと彼の口元に寄せてーー
「見えてると思うよ。付き合ってみる?」
真剣な瞳でそう言ってのけた。
「ーーえ? 」
理解が遅れて、一瞬後から顔が赤くなる。
「わ、私飲み物買ってくる! 廉くん並んどいて」
「あっ、桜!」
手を振り払って人混みに飛び込んだ。
ーーえーー?
冗談? 冗談、なんだよね?
檸檬くんが何を考えてるのか、全然わかんない。
自販機の水がガコッと音を立てて落ちる。
「おねーーさん。一人? 俺らと遊ばない?」
水を持って振り返ると、ふたり組の男性がいた。
「すみません、友達待たせてるんで」
「ひゅーー。浴衣かーーいーね。お友達も一緒にさ、ど?」
勝手に“友達”を女性だと決めつける彼等は、ビールの入った紙コップを持って、きっと祭りで多少浮かれているんだろう。
私も浮かれてる。
ああ、もしかして檸檬くんもーー。
「ごめん、その子俺のツレだから」
苺飴を持った檸檬くんが、やたらキラキラした笑顔を向けながら歩いてきた。
「なんだよ、男連れか」
いこーぜ、とバツが悪そうにふたり組は去っていく。
「桜、一人でフラフラしたら危ないよ。はい、苺飴」
人の海のような屋台の通りから少し外れた、横幅の広い階段の端に腰掛ける。
「ありがとう。苺飴、いくらだった?」
財布を出そうとして、止められる。
「いいよ、このくらい」
「えぇ、悪いよ」
「じゃあ俺にも食べさせて。実はかなり、気になる」
どうぞ、と差し出すと、棒に4個程刺さった苺飴を一つ、頬張った。
「んーーうまっ」
「じゃ私も!」
カリッと音を立てて頬張れば、甘いと酸っぱいが共に押し寄せて来る。
これは中々ーー。
「美味しっ!苺飴ってはじめて食べたけどーー美味しいんだね」
笑顔で檸檬くんの方を向くと、顔をつかまれ唇に何かが当たる。
檸檬くんの長いまつ毛が、目の前に見える。
ついばむように何度かぶつかったあと、そっと目を開けると、檸檬くんの綺麗な顔が、真っ赤な顔が、そこにある。
「ごめんーー。さ、桜が可愛すぎてーー」
自分の唇に手を添える。甘酸っぱい、苺飴の香りがする。
キスされた、檸檬くんーー廉くんとキスをした。
呆けたままでいると、空いている手が絡めとられる。
「桜ーー。俺と、付き合わない?」
最初の緊張は何処へやら。
私の腕にはタコ焼き、檸檬くんの腕には串焼きの袋がぶら下がり、今まさに新たな食べ物を買いにいこうとしている。
「こら! はぐれるから一緒に! それ買ったら休憩な」
先に行こうとして手をつかまれ、苺飴の行列に並ぶ。
「それにしてもすごい混むんだな。毎年こんな?」
「私も一昨年ぶりだけど……なんか年々混むようになってる気がするかも」
石畳みに露店が並ぶ通りは、人でごった返している。
列の前のカップルは、人目もはばからずイチャイチャしていて目のやり場に困る。
と、今日幾度となく繋がれる手に視線をやった。
「ーー私達、カップルに見えてるのかな。なんて」
ふわふわする。
祭りにつられて常に無いことを口走っていることに、気付かなかった。
すると檸檬くんは繋いだ手を、スイっと彼の口元に寄せてーー
「見えてると思うよ。付き合ってみる?」
真剣な瞳でそう言ってのけた。
「ーーえ? 」
理解が遅れて、一瞬後から顔が赤くなる。
「わ、私飲み物買ってくる! 廉くん並んどいて」
「あっ、桜!」
手を振り払って人混みに飛び込んだ。
ーーえーー?
冗談? 冗談、なんだよね?
檸檬くんが何を考えてるのか、全然わかんない。
自販機の水がガコッと音を立てて落ちる。
「おねーーさん。一人? 俺らと遊ばない?」
水を持って振り返ると、ふたり組の男性がいた。
「すみません、友達待たせてるんで」
「ひゅーー。浴衣かーーいーね。お友達も一緒にさ、ど?」
勝手に“友達”を女性だと決めつける彼等は、ビールの入った紙コップを持って、きっと祭りで多少浮かれているんだろう。
私も浮かれてる。
ああ、もしかして檸檬くんもーー。
「ごめん、その子俺のツレだから」
苺飴を持った檸檬くんが、やたらキラキラした笑顔を向けながら歩いてきた。
「なんだよ、男連れか」
いこーぜ、とバツが悪そうにふたり組は去っていく。
「桜、一人でフラフラしたら危ないよ。はい、苺飴」
人の海のような屋台の通りから少し外れた、横幅の広い階段の端に腰掛ける。
「ありがとう。苺飴、いくらだった?」
財布を出そうとして、止められる。
「いいよ、このくらい」
「えぇ、悪いよ」
「じゃあ俺にも食べさせて。実はかなり、気になる」
どうぞ、と差し出すと、棒に4個程刺さった苺飴を一つ、頬張った。
「んーーうまっ」
「じゃ私も!」
カリッと音を立てて頬張れば、甘いと酸っぱいが共に押し寄せて来る。
これは中々ーー。
「美味しっ!苺飴ってはじめて食べたけどーー美味しいんだね」
笑顔で檸檬くんの方を向くと、顔をつかまれ唇に何かが当たる。
檸檬くんの長いまつ毛が、目の前に見える。
ついばむように何度かぶつかったあと、そっと目を開けると、檸檬くんの綺麗な顔が、真っ赤な顔が、そこにある。
「ごめんーー。さ、桜が可愛すぎてーー」
自分の唇に手を添える。甘酸っぱい、苺飴の香りがする。
キスされた、檸檬くんーー廉くんとキスをした。
呆けたままでいると、空いている手が絡めとられる。
「桜ーー。俺と、付き合わない?」
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