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第一章 目覚めた記憶
第12話 婚約者は面倒なので回避します
しおりを挟む「う~ん。じゃあ君の婚約者も巻き込んで、事情を打ち明けて相談するっていうのはどうでしょう? 彼って天才だし、パパっと解決してくれるかも?」
……甘いですわ。
「あの方が素直にお信じになると思います? こんな荒唐無稽な話を……」
「ああ……いや、そうか。彼だもんね。無理かもしんない」
私の所感に納得して、あっさりと提案を取り下げた。彼としてもシリル様とは幼馴染だし、思うところがあったのでしょう。
「そうでしょう? 私も考えないこともなかったのですが……。早々に理解を得るのは難しいのでは、と諦めましたの」
「まあ事情が事情だし、仕方ないよね」
「ええ、総じて突発事項にはお弱いですから」
――何といいますか……。
脳筋とは別の方向で残念な方なんですの……。
私の婚約者で攻略対象の一人である、レジーナ侯爵子息のシリル様は、頭も良く律儀に約束事も守ってくださる、とてもいい方なんですけれど、とってもお堅いのですわ。
幼いながらも美しく整った人形のような容貌に、刺すように冷たい怜悧な切れ長の目を持ち、まるで彫像のように動かない冷たい表情を仮面のように張り付けていらっしゃるお姿は、クールビューティーならぬ、アイスビューティーといったところでしょうか……。
そのご容貌そのままに、カチンコチンでいらっしゃるのです。
表情筋が乏しいことはご本人も自覚しておられるようで、怯えられるほどの顔なのかと密かに傷ついているのも存じ上げておりますけれど……。
宰相閣下のご指導の賜物なのか。安易に人を信用するな、親しい者であっても裏の裏まで読んで行動しなさいといわれて、素直にそれを実践なさっているおかげで、こちらの一言一言を考えすぎて時には行き過ぎた行動を取ってしまわれますの。
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「ではまず、対策できそうな方から始めてみるということで……こういうのはどうでしょう。影を使って彼女を監視させてみては?」
「まあっ、それはいいですわね! 私たちの記憶不足を補い解消する、素晴らしいお考えですわっ」
「あ、ありがとう。そんなに喜んでもらえると嬉しいよ」
彼は将来に備え、その手のものを幾人か動かせるだけの権限を与えられているので、すぐに実行可能らしい。
――羨ましいことですわ。
私なんて公爵令嬢だというのに、お父様からお前が動かすと被害が拡大するから勘弁してくれと言われてしまって、アリスとセレス……二人の戦闘メイドしか動かせませんのにっ……!
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