悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!

飛鳥井 真理

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第一章 目覚めた記憶

第13話 戦闘メイドは双子の姉妹

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「まずは何としても、彼女の狙いを正確に探ること、ですかね。逆ハーレムルートとか厄介なのを狙わないでくれると良いんですけど。巻き込まれたくないですし」

「そうですわねっ。ヒロインさんの選択次第で最悪、わたくしの命が危ういわけですから……是非良い情報をつかんでくださいませ!」
 
「う、うん、頑張ります」



 ――そうこう話しているうちに女子寮の前まで来てしまった。

 魔法学院の女子寮は五階建ての大きな建物で、三階から上には、大貴族の子女が執事やメイドを連れて入学することを想定した部屋が作られている。
 ヴィヴィアンが入っているは当然、最上階の一画で、居間と寝室に小さめの書斎、台所や浴室の他にメイドたちの控え室まである贅沢な空間であった。



 その寮の前には、彼女専属の戦闘メイドであるアリスとセレスが待機していていた。

 ――この二人はヴィヴィアンの乳姉妹で双子である。

 初対面の人にはどちらがどちらか分からないと言われるほど、よく似ている二人……。
 しかし、子供の頃から一緒に育ったヴィヴィアンにとっては、彼女達を見分けることなど朝飯前だ。一番簡単な方法としては、泣きぼくろが右にあるのがアリスで、左なのがセレスである。

 帰ってきた主人達を見た途端、揃って綺麗なお辞儀をし、恭しく頭を下げた。



 ヴィヴィアンはカーティス公爵家の令嬢という、王家の次にこの国で地位の高い家に生まれた。そのため幼少時より、いらぬ怨恨や身代金目的の誘拐などを含め、常に命の危機にさらされてきている。
 ヒロインが成り上がる為の踏み台となる悪役令嬢という、嬉しくない役割を割り振られている他にも日常から、危険いっぱいのハードな日々を送っているのだ。

 そこで専属の戦闘メイドに護衛させる他にも、誘拐などの事件防止のためにと高価な防犯グッズを買い与えられている。
 それが、常に持ち歩くようにといているブレスレット型魔道具『発見君ハッケンクン』である。

 ……この安直なネーミングセンスはどうかと思わないこともないが、ともかく『発見君』は彼女の所在地を随時、二人のメイドへと知らせてくれている。高価なだけあって、素晴らしく便利で優秀な魔道具なのだ。
 そう言えば、前世の知識にもGPS機能という、同じような性能を持った技術があったなあと思ったものだ。向こうは科学、こちらは魔法という違いはあるけれども、人間の考えることは世界が違ってもよく似ているといったところなのか……。

 メイド達が、こうして計ったようなタイミングで出迎えられるのには、そうゆう事情があったのである。

「送っていただきまして、ありがとうございます」

「どういたしまして。では、今日はこの辺で」

「ええ、これからよろしくお願い致しますわ」



 背を向けて、男子寮へと向かう彼の後ろ姿を見送りながら、攻略対象のイケメン全てを回避できなかったのは痛かったが、まさかその中の一人からこんな協力を得られるとは……と複雑な思いを持った。
 得難いことではあるし嬉しいのだが、ヒロインが押し掛けてくる可能性が上がったかもしれない……ということを考えると、果たしていいのか悪いのか。


 ――判断に悩むところである。




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