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第一章 目覚めた記憶
第18話 未来視
しおりを挟む他にもお助けキャラや友人キャラなど攻略の手助けをしてくれるイケメン達が何人かいたように記憶しているが、その辺りはフレデリック様も記憶が曖昧らしく、書かれていない。
だが、悪役令嬢の破滅ルートに関わりがないはずなので、とりあえずは放置でいいだろう。
シリル様を含めた主要な攻略対象者五名との出会いイベントは、王立学園に入園してからの一ヶ月間で既に済ませているらしいとのこと。
攻略対象者の周辺に彼女がよく出没しては、話しかけているようだ。彼らも邪険に扱っているようには見えないことから、順調にイベントを消化していっているものだと思われる。
攻略対象者の情報には特に目新しい要素はないが、ヒロインさんの名前と簡単な経歴が載っていたのは嬉しい。
――ルチル・ヒューシャ男爵令嬢……と言うらしい。
乙女ゲームのヒロインは、好きな名前を入れて遊ぶものだったので今まで分からなかった。
そして、そのヒューシャ男爵令嬢のサクセスストーリーについて、攻略対象達との出会いの場面以前の事が書かれてある。
彼女は、何不自由なく育てられた大きな商家の娘。その生まれからくる天真爛漫さが売りだ。
容姿についての記載はないが、ゲームと同じなら、迫力ある美女に成長する予定の悪役令嬢とは正反対の、庇護欲をそそる可愛いらしい小柄な美少女のはず。
この国では、貴族階級の者に高い魔力を持つ者が生まれやすく、平民は基本的に極微量の魔力しかもたないという設定だった。
そんな中でルチルは、突然変異的にで高い魔力を持って生まれてくる。その魔力量を見込まれて、十歳の時に男爵家の養子に入る……というのが表向きの理由。
実際にはこの男爵家は、ルチルの実家の商家に莫大な借金があり、それを帳消しにするという見返りに血の繋がりのない少女を養子に迎え入れることになったのだった……。
調査内容としてはここまでだが、この短期間で調べ上げたのだから伯爵家の影は優秀だというのは本当のようだ。
代々、魔法大臣を務める家系だし、独自に捜索魔法の技術を編み出していても不思議じゃないけれど、こんなに心強い味方ができたのは嬉しかった。
一通りざっと確認してから、彼女たちに資料を渡す。
「あなた達も目を通しておいてちょうだい」
「かしこまりました。拝見いたします」
アリスとセレスは調査資料を二人で順に読み込んだ結果、書かれている内容には半信半疑な気持ちを持ったようだ。分析しながらも胡散臭そうで、何とも言えない表情になっている。
と言うのも未来視の内容は、そのほぼ全てがヒロインと呼ばれる少女の恋愛話だからだ。
国の未来を左右するような重大な予言というものでもなく、ヒロインと王立学園の周辺というごく狭い範囲を中心に起こる恋愛絡みの出来事だけに偏っている。
今回の資料にはヒロインと攻略対象者の出会いまでが書かれてあったが、そこだけ妙に具体的に予言が成就していた。
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