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第3話 だから違います
しおりを挟む「あのね、誠に申し訳ございませんが、ぶっちゃけ人違いだと思われます!!」
「え?」
「えっ」
「ええ――っ。う、嘘でしょ!?」
男もだが、男の腕にひっついていた女がここで、初めて声をあげた。
さっきまではやたらとプルプル震えながら二人の会話をただ、聞いていただけだったのに……。
「なんだ、とっても元気そうじゃない!」
突然叫ばれてビックリしながらも、安心する男爵令嬢。
あんな声量を出せる元気があるなら大丈夫だろう。
良かった、よかった。
あまりにプルプル震えているから、布面積少なそうな、寒そうなドレス着ているせいじゃないかと心配しちゃったよとか言って頷いている。
オフショルダーなうえに、背中まで大胆に露出しちゃうデザインだしね、と。
……彼女も天然と言うかなんというか、とっても素直な女の子なのであった。
それにプルプル女は随分と驚いているようだが、突然よく分からない小芝居に巻き込まれた彼女の方がもっと驚いているし、とっても迷惑を被っているのである。
「残念ながら本当のことです。さっきからずっと、そう言ってるんですけどね!?」
「……」
そこまで言われて、ようやく黙った。
戸惑ったように、二人して顔を見合せている。
ふぅ、これでなんとかこちらの言うことを聞いてもらえそうな雰囲気になったか。
(ほんと話を聞かない人との会話は嫌だわ。疲れるったら!)
ぷりぷり怒りながらも、彼らよりは冷静だった彼女は、早くこの二人から逃れたい一心で、今夜、一番言いたかったことを叫んだ。
「えっと、そもそもですね。マロンさんとかいう方のこと、私、全く、全然、これっぽっちも知らないんですけど!?」
「え」
「……はい?」
ポカンと呆けたような表情……は仮面で見えないとして、そんな感じで固まった二人。
何を言われたのか、理解出来ない、といったところだろうか……雰囲気的に……?
分かりにくいなぁ、もう。
「いや、だから貴方たち、お相手を間違えてんじゃないのって言っているんですよ」
ゆっくりと言い聞かせるように話す。
今度こそ、勘違いしないでくれよ、と祈りながら……。
「ちなみに、誰さんだと思われていたのか知りませんけれど、そんなに似ているんですか?」
勘違い男ほどではないものの、彼女自身も顔全体の三分の二を覆う大ぶりな仮面を装着している。
当然、素顔は不明のはずだし、婚約者だと思い込む要素がどこにあるのか、二人の思考回路が不思議で仕方がなかった。
「君はその……本当にイリーナ嬢ではない……のか?」
「だから違うって。何回もいった」
キッパリと言い切られ、目の前の派手な羽の塊がワサッと揺れた。
(こんな偉そうな態度のアホな浮気男が婚約者だなんて、私だったら絶対嫌。イリーナさんって……いや、イリーナ様ってお可哀想だな……)
ただまぁ、ここにきてちょっと他にも問題が出てきてしまい、焦りが生じる。
人のことを気遣っている余裕も無くなったというか……気づきたくなかったけれど。
なんというか、言いたくないのだがイリーナ嬢の名前を出した時点でアレなんだ。マズいことになりそうなのだ。
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二人の女性の名を呼んだことで男の正体とかも多分、バレちゃったと思うのだ。
先程から固唾を飲んで聞き耳を立てている参加者に……。
(誰も止めに来ないけど、いいんですかコレ!? とりあえず私は、全力で気づかない振りをさせていただきますけどね!?)
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