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第一章 辺境の町
第101話 スライム講習会・中編
しおりを挟む前半の座学が終わると次は実戦。
皆で一階に降りて行くと、やけに貫禄のあるマッチョなおじさんが、腕組みして立っていた。
「おう、 今日の生徒はお前ら五人か?」
「はい、そうです。よろしくお願いします!」
人族の男の子が代表して挨拶してくれて、一人ずつ順番に名前を名乗っていく。
「講師のボルボスだ、よろしくなっ。よしっ、じゃあ現場まではちょっと歩くから、さっそく行くぞ!」
「「「はいっ!!!」」」
私は知らなかったんだけど、東門から出て五日ほど行った所に大きな湖があり、そこから川がいくつも流れ出ている。その流れに沿って大小の村々が点在しているんだとか。
湿地帯もあるみたいで、雨の月じゃ無くともスライムが増殖しやすいため、ボトルゴードの町近くの東の草原にもそこそこの数が年中いるらしい。
近年の需要増で急激に乱獲が進み、だんだんと町の周辺からは少なくなってきたみたいだけど、それは北の森も同様とのこと。なるほど、だから見かけなかったんだね。
今日はその中でもボルボスさんおすすめのスポットに向かっている。
何でもスライムが好んで食べる草がたくさん生えている場所らしく、東門から歩いて一時間ぐらいはかかるみたい。
「私の村があっちの方面にあるんです。徒歩だと三日で着く距離なんですよ」
隣を歩いていたリノが、歩いている道より北の方角を指しながら教えてくれた。三日もかかるって、結構な距離があるよね。
「……女の子の一人旅でちゃんと町まで無事に来れてよかったよ。魔物とかは大丈夫だったの?」
「はい。幸い、ここら辺はいつも昼間は往来がありますし、魔物も出なかったので大丈夫でした。一日中歩き続ければいくつも村を通るので宿にも泊まれて、割りと安全に来れたと思います」
「そっか。よかったよ」
護身用の小さなナイフ一本で十分だったってことか。できれば私もこっちのソフトモードな方に落っことして欲しかったよ……例の白い部屋の神っぽい人よ……聞いてないだろうけど……。
「うちの村までは滅多にスライムも来ないんですけど、見つけたら大人たちが倒してました。でも倒したらすぐ体が溶けて消えちゃうから、使える素材になるなんて誰も知りませんでしたよっ。町に来てこんなにスライムの素材が利用されてるって知って驚きましたもん!」
「まあそうだろうなぁ。ここまで広がったのは最近のことだしな。偶然、素材の採取方法が発見されて、いろんな利用価値があると研究成果が発表されてな。利便性が高いもんだから、すぐ供給不足になっちまった」
講師のボルボスさんは、冒険者ギルドだけじゃなく商人ギルドにも頼まれて、今度、スライムが多く生息している周辺の村々に行き、教える事になっているらしい。
それを聞いて、その近隣の村出身らしい男の子三人が嬉しそうに顔をほころばせた。
「それはいいですね!」
「うんっ。村の収益が上がれば暮らしが楽になるし、村を出なくていい若い奴が増えるから助かります!」
「そうなるといいな……」
素直に喜ぶ若者達の様子に、ボルボスさんも顔が緩んでいた。
道すがら、スライムの素材の取り方のコツを聞いていく。
弱い魔物なので倒すだけなら簡単だが、それだけだと素材が消えて魔石しか残らないというのはわかった。では、どうするのか……。
「まずはスライムを倒し、素手で体内の魔石を探し出せ。そのまま魔石を抜き取らずにくるっと外し、魔力を注いで体内で魔石を砕く。これだけだ! 猶予は倒してから十秒以内! さっさとやらんとすぐ溶け出すからな、分かったか?」
「ボルボスさん質問です! 直接中に手を突っ込むんすか? 溶解液とか怖いし手袋はめたまんまやりたい」
「駄目だ! 溶解液の心配はしなくていい。倒した後なら、何故か溶けないからな。それに素手でやるのが一番成功率が高いんだ!」
「何でなんすか? 理由とかは……」
「細かいことは気にするな。理由なんか知らずとも出来りゃいいんだ!」
あ、理由とか知らないんだ……。でも偶然発見された方法だしそんなもんか?
溶解液を警戒して倒した直後のスライムに素手で触る人がいなかったから、今まで素材が取れなかったのかもね。
「俺は、魔石を体内でくるっと外すっていうのがよくわからんです」
「まあそれはやってみたら分かる。実戦あるのみ!」
「はぁ、そうなんすか?」
大雑把な説明に戸惑うものの、一理あるかもと素直に引き下がったのだった。
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