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第一章 辺境の町

第226話 討伐隊結成

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 色々と衝撃的な情報にちょっと取り乱しちゃったけど、異世界まで来て全身タイツを見るはめになるとは……その上、 全力で装着をお勧めされる羽目になるとは思わなかったよねっ。

 どう見てもピッチピチの全身タイツなこの絶対防御スーツ……。話している内にテンションが上がって来たラルフさんと違って、こっちの士気は下がりっぱなしです。

 尚も、嬉々として詳しく説明してくれたところによると、頭までしっかり覆い尽くす、安心安全設な形状を目指した結果、顔のとこに一つ丸い穴が空いているだけになったらしい。これを装備の下に来て、触手などの侵入を防ぐように設計されたんだとか。

 これ、全員で着たらめちゃくちゃ怪しい集団に見えちゃうんじゃ……。装備の下に装着するならまだ変態度が薄まる……かもしれないけどさ。長時間着用する事にはなるし、あの、どうしても自然現象的に催しちゃう事もでてくるわけじゃないですか? そうなっちゃった時には、どうすればいいんだろ。

 ――あそこに穴なんか空いてないんですけど?

「いいところに気づかれましたねっ」

「あ、そう?」

「はいっ、さすがお目が高い。それはですねぇ、なんとこのスーツが素早く吸収してくれるんですよっ。凄くないですか!?」

「そ、そうですね……?」

「そうなんですよ、だから画期的なんですっ。まだ試作品ですので、残念ながら小の方だけしか分解出来ませんし、分量も一日分が限度なんですけどね」

「えっ……と言うことはこれに、直接? 吸収してくれるってそれ、まさかスライムがまだ生きてるってこと……?」

「いえそこは大丈夫です完璧に生命活動は停止していますご安心ください。 実はですね、スライムの吸収能力を残せる技術が最近発明されたんですよ。臭いや音も同時に吸収してくれますので、こっそり済ますことができるんです。ゆっくり致せない危険地帯とかでも安心安全の仕様となっております」

「……確かにこれがあれば、どこでも安全に冒険出来るな」

「そうですそうなんですっ。分かってくれますか! 私たちの時代に何故この便利グッズがなかったんだって、皆で悔しがってたんですよ! 冒険者にとっては夢のような仕様ですからっ」

 いい笑顔で猛プッシュされたっ。

 いやまぁ、分かるよっ? 理にかなっているって事は。分かるんだけれどもっ。

 ただ、ちょっとこう、羞恥心とかいろんな事で拒否反応が出そうになってるだけで……。

 抵抗はあるけど、安全性をとるならそんなこと言ってられない、か……? 実際、危険な森の中でのおトイレ問題は深刻なんだし……冗談じゃなく命懸けだからね。

「分かりました。ありがとうございます」

「はいっ、是非お試しください」

 ……仕方がない、着るか。

 それにこれならエルフの外見……特徴的な耳もすっぽり覆い隠してしまうから気にせず動けるし……。

 うん、よしっ、覚悟を決めよう。二人も抵抗無さそうだし……っていうかむしろ、便利だからって嬉しそうですね!? 
 いつの間にか町中のトイレ事情も改善されそうって話題で盛り上がっちゃってるしっ。確かにそれも大事だよねっ。

 あぁもう、シリアスだった空気がどっかいっちゃったよっ。

 でもまあ、それだけ今回の討伐はきちんと作戦を立てれば対処出来る程度の難易度だって事で。

 こうして皆に余裕があるのはいいことだ。予想外だったけど、全身タイツのお陰で安全性も上がったことだし。


 ちなみにこの全身タイツは使い捨て用らしく、討伐の後、研究の為に使用済のを回収される予定とのことです……。




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