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第一章 辺境の町
第190話 夜の町で
しおりを挟むボトルゴードの町の魔道具屋さんは一軒のみで、宿泊している夢見亭からは比較的近い場所にある。
ラグナードと二人で宿を出てみると、門も閉まったこの時間、いくら魔道具の明かりがあるとはいえ大通り以外は暗かった。
いつものように外套で全身を覆ってフードを目深に被ると、この暗さを味方につけて目立たず上手に闇に溶け込めそうだ。
もし、この町に来たばかりの時ように一人きりだったら、緊急時以外は外へ出ないと思う。
『暗視』スキルがあるので暗くても視界は開けているけど、身の安全のためにも用心するだろう……。今夜は彼が一緒に行ってくれるから安心して歩ける。
大通りから外れて少し進むと、道沿いに魔道具屋さんが見えてきた。灯りが漏れているので、まだ開いてるらしい……良かった。
彼の話では、鍛冶屋さんにしろ雑貨屋さんにしろ主に商売相手が冒険者の場合は、割と遅くまで開けてくれている店が多いらしい……そうなんだ。
さて、この店の店主、マールさんは『鑑定』スキルを使えることが分かっている。
ここは先ほど練習した成果を試す時……。ラグナードに促されて、『隠蔽』スキルを発動させてから店内に入ることにした。
今日は珍しく先客いた。私達と同じ冒険者のようだ。一度、じっと見られたが、ラグナードを視界に入れた途端に目を反らせた。
ふ~ん……彼が強いってことが分かったのかな?
ここで買い揃えるものは、隠蔽の魔道具と防水性が高い外套を私とリノの二人分。彼は特に買うものがないらしく、全面的にこちらの買い物に付き合ってもらう事になった。
極力トラブルは避けたいので、先に人のいない外套の方を見ることにした。前に来た時に、リノと一緒に目星をつけていたものがまだあったのを見て、嬉しくなる。
表布が発色の綺麗な深緑色をしていて、留め具に彫ってある花の模様が可愛いんだよね。羽織った時のシルエットもスッキリして見えるので気に入っていたやつだったんだけど……。
「これ、どうかな?」
「うん、まあ性能もいいし良いんだけど、ここでは目立ちそうだな。今の主流はこっちの色だぞ?」
「……っ!? ああっ、成る程!」
そうだった!
安全第一に、命大事にだから、外套と言えども特徴があって人の記憶に残りそうな色や形は避けなきゃいけないんだったね。
一番上に羽織るものだから、まずは人混みに紛れ込みやすい、流行りの色の方が目立たなくていいんじゃないかってことか……了解ですっ、理解しました!
本当に分かってるのかなぁ、この子……という顔で見られたので、コクコク頷いて分かっているアピールをしてみた。
尻尾を軽くフリフリしながら小さく頷いてくれたので、何とかこの思いが通じた筈です。
早速、彼のアドバイスを生かした基準で選んでみることに……。
ラグナードが薦めてくれていたのは、暗めの茶色をした外套。周りの風景に溶け込みやすく、森の中以外に町でも目立ちにくいらしい。
先程の深緑の外套と比べても、性能はさほど変わらないからお奨めだと教えてくれた。
ふ~ん、これが今の主流の色なんだ。普段からちゃんと人間観察してるからこそ分かる知識だよね。
外套の流行色だなんて気にしたことなかったや。こんなんだから私って、女子力も低いままなんだろうなぁ。
でも、彼のように観察眼を鍛えることで、何か新しいスキルが生えそうな予感がするよね。これからは周りに関心をもって、観察してみようかな……。
ラグナードお薦めの外套の中から、お値段もお手頃なものを探していると、リノの分と二枚、ほぼ同じ型のがあったのでそれを選び、買うことに決めたのだった。
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