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第一章 辺境の町
第253話 キノコがいっぱい
しおりを挟む――北の門を抜けると、様子が一変していた。
森の中に入る手前の街道近くまで、今まで見たことないくらいびっしりと水白茸が生えていたんだ。そのせいで、辺り一面がまるで雪が積もったかのように真っ白になっちゃってるんですけど……何だこれ。
確かに昨夜は少し多目に雨が降っていたけど、それにしても多いよね?
『異世界知識』にもあったけど実際に見るとこんなになっているのかぁ……。
所構わずニョキニョキと生えまくっているのに、リノやラグナードは全然驚いていない。この世界にとっては普通の光景なんだろうな。
開門と同時に飛び出していった地元の人達が、さっそく水白茸を採取しはじめているし、町近くの森へは、他の冒険者パーティーや猟師さん達が次々と入っていっている。
それを見て私達は、彼等と狩場が被らないように遠くへ移動することにしたんだ。
しかし、町近くでこんなに繁殖しているのなら、魔素の濃い森の中だともっと凄い事になっていそう……。
中々まとまった雨が降らない日々が続いていたから、少しの雨量の時しか体験した事がなかったけど、それでも雨の後は森の中の生命が急成長し、豊かに溢れかえるのを何度か見てきた。
魔物も植物も、乾いた砂が水を吸収するかのように雨水に含まれる魔素を急速に取り込んで育つので、活気が出るというのかな。賑やかになる。
――勿論、その分危険度も上がるんだけどね。
普段、森の奥にいるような強い力を持つ魔物や野生動物も餌を求めて出てくる可能性があるから、いつも以上に周りに気を付けて行動しないといけない。
分かっているんだけど、それでもやっぱり雨がもたらす豊かな恵みは楽しみでもあるんだ。
だって、今日は絶対どこかにアレが生えているはずだしっ。マジックキノコとか白チーズ茸とか金茶香茸とかがね! 美味しい茸から高価な茸まで各種様々な茸を、いっぱい採りたいっ。
命大事に……お宝探し、頑張ります!
最初は、彼がお薦めの薬草採取ポイントに連れていってくれるとの事なので、いつもの巨木群が見えて来てからも更に北へと進んでいく予定になっている。
目印となるのは街道に等間隔で埋め込まれている光り石で、これは2km毎にある。今日は北門を出て十個目辺りの所まで行くつもりだと話してくれた。
基本、冒険者は乗り物を使わず人力で移動するんだけど、この世界にはスキルがあるからそれほど困らないんだと聞いている。往復するとマラソンくらいあるこの距離を走り抜くにも「俊足」スキルがあるしね。
なので三人の中で唯一、そのスキルを持っていないリノが、普通の靴から付与魔法の「俊足」が付いたブーツに買い換えたのが役立っている。移動速度が格段に上がったからね。能力を補強してくれる上に疲れも軽減されるし、本当に魔道具って便利っ。
いっぱいある茸も、さすがに隙間なく敷石の敷かれた街道の上にはないので走りやすいけど、それ以外はどこまでも水白茸が生えている不思議な光景が続く中、一番負担のかかる先頭をラグナードが担当してくれて、リノを真ん中に挟んで走っていく。
順調に飛ばしていっている内に、段々と初めて彼と出会って共闘した所に近づいてきた。『視覚強化』スキルを取ってからより遠くまで見通せるようになったので、この距離からでもよく分かる。
例の森が街道を塞ぐ勢いで両側からせり出している危険な場所で、ボトルゴードの町に拠点を置いてからはここまで来たことは一度もなかったんだけどね。少し前の事なのに何か懐かしいなぁ。
ゴブリンの大群に遭遇して絶対絶命のピンチになっていた時、ラグナードが颯爽と現れて助けてくれたんだよね。今日は鉢合わせしないといいけど……。
トレントの大規模な討伐が終了した直後だし、今だけは森の中も比較的安全なはず。大丈夫だと思いたい……。
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