118 / 128
第118話 王妃の焦燥
ロバート王子の母親である側妃が生きていた頃の宮廷では特にそれが顕著で、カイン王子の立太子に反対する声は無視出来ない程大きく、王妃でさえもその流れを完全に抑える事は出来なかった。
国王の側妃に対する寵愛の深さもそれを後押ししており、立太子の時期を早めることは許されない雰囲気だったのである。
カイン王子が無事に成人した暁に、正式な世継ぎと認めると決められてたのもこの時期だった。
そして、そんな宮廷闘争の最中に、前日まで元気だったはずの側妃が突然、亡くなってしまう。
疑いの目は当然、普段から彼女を嫌い、陰湿な嫌がらせを繰り返していた王妃に向かったが、確たる証拠が出て来ず、そのまま側妃の死は有耶無耶にされてしまうことになった。
――その日を境に宮廷の雰囲気もガラリと変わっていく。
公然とロバート王子側に付く貴族が徐々に減って行き、キャメロン公爵家が婚約を期に後ろ楯となった後も、一度変化した時勢の流れが、第一王子側に戻ることはなかったのである。
今回、兄王子が引き起こした婚約破棄騒動が止めとなり、王妃派の優勢は誰が見ても確実と言えるものになった。
今はまだ危うい均衡を保っているが、国王を凌ぐほどの権勢を誇るようになるのも、もう時間の問題なのかも知れないと思わせるほどに……。
但し、王妃派にも全く不安材料がない訳ではない。
その事をユージーンが指摘する。
「だからと言って、すんなりと第二王子殿下の立太子が決まるとは思えないけれどね。先日も風邪を拗らせて数日間、床に臥されていたというし王座の重責に耐えられるかどうか……」
「そうですわね。カイン様ご本人は、とても良い方なのですけれどもね」
「まあね。あの王妃からお生まれになられたとはとても思えないよ」
あらゆる障害を人々の怨みを買いながらも強引に取り除いてきた王妃の計画を、最後に阻んでいるのがカイン王子が十五才になった今も尚、虚弱な体質であるということ。
こればかりは王妃がどんなにお金を積んで色々と手を尽くしても、遂に改善しなかったのだ……皮肉なものである。
結局、不安を取り除けなかった王妃としては、一刻も早く息子の立太子冊立とそれに続く婚姻を押し進めたいと願っているはずだ。
カインの婚約者も王妃派閥出身の令嬢だし、もし彼に何かあったとしても次代が用意できていれば問題ない、と……。
そして、これからは中立派の取り込みや、キャメロン公爵家のような国王寄りの貴族家にも何かしら仕掛けてくる可能性がある。
「……段々とやり方が大胆になってまいりましたわね」
「そうだな。焦っておられるのだろう。ここで一気に攻勢に出て、第一王子殿下と一緒に彼を庇う陛下の権勢も削いでおきたいといったところか……」
キャメロン公爵家の兄妹は顔を見合わせると、一筋縄ではいかない敵対勢力を思ってため息をついたのだった。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
悪役令嬢のお父様
ばぅ
恋愛
卒業パーティーで婚約破棄。
しかし、その断罪劇に現れたのは、悪役令嬢ではなく父親である筆頭公爵。
家と家、そして王位継承まで絡む婚約を、子供だけで勝手に壊せるわけがない。
「家の話であれば、私を通していただこうか」
その一言で、恋に酔った王太子の“物語”は終わりを告げて――!?
これは、婚約破棄を現実でやってしまった愚かな王太子に、大人たちが正論を叩き込むお話。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
無能令嬢の婚約破棄から始まる悠々自適で爽快なざまぁライフ
タマ マコト
ファンタジー
王太子妃内定を発表するはずの舞踏会で、リリアナは無能の烙印を押され、婚約を一方的に破棄される。幼少期の事故で封じられていた強大な魔力と、その恐怖を抱えたまま、彼女は反論すらできず王都から追放される。だがその裏では、宰相派による政治的策略と、彼女の力を利用し隠してきた王家と貴族の思惑が渦巻いていた。すべてを失った夜、リリアナは初めて「役目ではなく自分の意思で生きる」選択を迫られ、死地と呼ばれる北辺境へと旅立つ。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。