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第5話 聖獣の卵?
しおりを挟む――これは、夢か現かそれとも幻か……?
眠気も吹っ飛ぶ異常事態に、混乱しながらも必死に考える。
確か、終電ギリギリまで残業させられて最終電車に乗ったところまではいつも通りだった。
それが、電車のなかで少しだけウトウトとうたた寝をして、人の気配にフッと起きると様子が一変していたんだった……。
なぜか電車と俺以外の乗客は何処かに消えるわ、真夜中近かったはずが明るい日差しが射す外にいるわ、凍えそうな冬の寒さが無くなって初夏のような気温になっているだわで、訳が分からない。
まるで眠っている間に、見知らぬ場所にいきなりワープしてしまったような……?
想定外の出来事にパニック寸前である。まさかこれ、お手軽に異世界転移しちゃったとか言わないよね!?
俺が目を覚まし、現状確認のために立ち上がってキョロキョロしだすと、更にザワつき出す周りの人々。
だがすぐに、理解できない状況に呆然と固まり動かなくなったのをみると、様子を伺っているのか段々と静かになっていった。
周りの空気が落ち着くと、徐々にこちらも冷静になってくる。
これだけ人がいるんだし、何か事情を知っている人がいるかもしれない。聞いてみるか? だが、このカラフルな髪色の人たちに果たして日本語が通じるんだろうか……それに、何をどう聞けばいい?
沈黙し続けていれば何も始まらないのは分かっているが、どうしたものかと途方に暮れ、無言で見つめ合っていると……。
「ハイハイちょっとごめんよ、通してくれ」
一際よく通る男性の声が聞こえてきた。
――え?
今の声! はっきりと言葉が理解できた!?
自慢じゃないが、俺は日本語しか喋れないから聞こえてきたのは日本語で間違いない!
と言うことは、やっぱりここは日本なのか? じゃあこの、ファンタジー小説の中の人ような服を着ている彼らはいったい……?
更に混乱してきたが、甲冑を着こんだ騎士のような格好をした人が人混みをかき分けつつ近づいてくるので、唖然としてばかりもいられなくなった。
うわぁ、この人大きい。それに剣帯しちゃってるし……甲冑といい本物なんだろうか? ちょっと怖いかも。
「驚いた。突然、辺り一面が光ったというから来てみれば……聖獣の卵持ちか。ってことは神殿関係者なのか?」
「え、聖獣の卵? 神殿?」
なんだなんだ、なんだか知らない単語がいっぱい出てきたぞ。
「ほら、頭につけてるそれだよ」
「え」
な、な、何だってぇ――――!?
そんなものが俺の頭の上にあるわけない……。
「……って、うおぅっ、あった!」
慌てて頭を触って確認すると、丸くて温かいものがてっぺん付近にくっついてた……嘘だろ、おい。
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