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第6話 神殿へ
しおりを挟む自分では今、直接見えないし重さも感じないけど、片手で包めるほどの小さなものに触れられる。
これが聖獣の卵、なのか?
取ろうとしても引っ付いたままで全然離れないんですけど!?
「なななななっ。ど、どうして!?」
「まあまあ、まずは落ち着いてくれ。それ、取ろうとしても、生まれるまでは無理だぞ。 最初にくっついた場所から動かせないらしいからな。そのままにしておくしかない」
「マジでか」
「なんだ。知らなかったのか? で、あんたはどこから来たんだ? 通報してきた人の話では、光とともにどこからか突然、現れたって話だが」
「何だそれ……。それは俺が一番、聞きたいです……」
もう本当、何が何だかわからない。だがこれで、ここが地球じゃないことは確定したっぽいです……。
腰に剣を差し軍人みたいな格好をした男性は、アルフレッドと名乗ってくれた。この地区の警備を担当している騎士らしい。俺の名も聞かれた。
「圭一と言います。よろしくお願いします」
「おう、こちらこそよろしく。へえ、ケイイチか。変わった響きの名だなぁ。よし、ケイイチ。 色々聞きたいこともあるがまずは一旦、神殿に行くぞ」
とりあえず、いつまでもここに突っ立っている訳にはいかないので、移動することになった。聖獣の卵の件は神殿が担当しているらしく、詳しい話はそちらでと言われたのだ。
「分かりました。お願いします」
「おう、こっちだ」
彼が一緒にいてくれたので、興味津々の人々から痛いほどの注目をビシバシと浴びながらも人だかりを抜け出し、無事に公園から出る事が出来た。
神殿に着くまでの時間を利用して、状況確認のために色々と質問された。
「成る程、ニホンからねえ? 聞いたことないなあ。その電車とかいう乗り物なら、呼び名は違うが似たようなのがこっちの世界にもあるんだがな。俺は見たことはないが、魔石で動く魔動列車っていうのが隣国にあるらしい。で、それに乗っていて、気が付いた時にはあの公園に座っていたと」
「はい。信じてもらえないかもしれませんが、俺も今さっき気づいたばかりで、説明できる事も無いと言うかむしろこっちが聞きたいと言うか……」
「そうなのか。う~ん……パッと見た感じだと、何か特定出来そうな物もなさそうだしなぁ。その奇妙な服は初めて見るが……強いて言えば貴族が着ている服に似ているか?」
「これですか? これは普通のスーツなんですけどね」
「スーツ?」
「ええ。大人の男の仕事着というか?」
「……やっぱり聞いたことがないな」
「そう、ですか……」
「まあそう落ち込むな。神官さんなら何か知っているかもしれないからさ」
「はい、ありがとうございます」
慰められてしまった。見知らぬ世界に来て不安でいっぱいだったけど、 最初に話しかけてくれたのがアルフレッドのような良い奴でよかったよ……。
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