皆まとめて婚約破棄!? 男を虜にする、毒の花の秘密を暴け! ~見た目だけは可憐な毒花に、婚約者を奪われた令嬢たちは……~

飛鳥井 真理

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第92話 明るい話題

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 不透明な将来に、ともすれば気分が沈み込みそうになるけれど、こうして一つでも明るい話題があるというのは救いだった。

 楽しいお茶会にするのにぴったりだし、シルヴィアーナ自身も詳しく知りたくて好奇心がうずく。

 いい機会だ。

 さりげなく会話を誘導して、彼女の恋バナを聞いてしまおう。

 きっとこの、モヤモヤした気持ちを吹き飛ばしてくれることだろう。



「……それにしても、驚きましたわ」

「何がですの、シルヴィアーナ様?」

「剣聖様やランドルフ様のことです。まさか、今宵の夜会に出席されるとは……失礼ながら存じ上げませんでした」

「ええ、それはわたくしもですわ。お二方の性格上、てっきり裏方に徹するおつもりかと思っておりました。思わず、二度見してしまいましたもの」

 ダフネも共感するように頷く。

 何しろ二人共、実力も十分な上にあの美貌である。

 年頃のお嬢様方を中心に、それはもう信じられないくらいの絶大な人気があるのだが、滅多にパーティーなどの社交場に足を運ばないことでも有名だった。


「そうですわね。せいぜい、私服の警備兵を増員するくらいの手筈かと思っておりましたのに」

「ええ、本当に。次々と、まるで仕組んであったかのようにタイミングよく出てこられましたものね。何でもない振りをするのが大変でしたわ」

 事前に、王宮との連絡役をつとめてくれた近衛騎士のエイドリアン・リンドヴァークから聞いてはいたのだ。協力者を何人か、夜会に紛れ込ませることを。

 しかし、それがよもや彼等だったとは……。

 今回はきっと国王陛下のご意向なのだろうが、そうでもなければ出向いて来なかっただろう。


 普通に立っているだけでも、すごく目立つ人達だし、目敏いご婦人方にすぐ見つかり捕まりそうなものを、しれっと招待客に混ざっていた彼らに誰も気づかなかった……不自然なほどに。


 おそらく後ろ暗いことのある連中を警戒させないために、気配を消すための隠蔽の魔法でも使用していたのだろうが、初めから関心を集めていなければ効きやすかったはず。


「勿論、ランドルフ様が援護射撃をしてくださったことには本当に感謝しておりますし、とても心強かったのですが……予想外の事でしたので、うまく動揺を隠し通せたのか自信がありませんの」

 高位貴族の令嬢として長年、厳しい淑女教育を受けてきた彼女でも、感情のコントロールに不安があったようだ。


「アンジュリーナ様、心配なさらないで。とても冷静に対処なさっていたわ。伯爵家の令嬢らしいお見事な手腕、素晴らしかったですわよ」

「まぁ、うふふっ」

 シルヴィアーナに手放しで褒められて、嬉しそうなアンジュリーナ。

「うれしいお言葉、ありがとうございます、シルヴィアーナ様」

「あらっ、真実を申し上げただけですけれど、お気持ちが軽くなられたようならよかったですわ」

 そう言うと、優しく微笑みかけたのだった。




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