皆まとめて婚約破棄!? 男を虜にする、毒の花の秘密を暴け! ~見た目だけは可憐な毒花に、婚約者を奪われた令嬢たちは……~

飛鳥井 真理

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第5話 ご執心

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「……これは王家のご意向では無い、ですわよね?」

「まさか、あり得ませんわ。いくら王家とはいえ、強力な能力者に対して粗雑な扱いなど、陛下がお許しになるとは思えません」

 その疑惑に首を振って、即座に否定する。

「そう、ですわよね。国益を損ねますものね」

「勿論ですわ。当然、第一王子殿下もそのご意向はご承知のはず……なのですが」

 そこで一旦、言葉を切ると悩ましげな顔になった。

「エスコートすらされない、となると怪しいですわねぇ」

「ええ。今宵は、どうなるのかしら」

「……荒れるかもしれません、わね」

 貴婦人達は扇の影で、悩ましげに溜め息をついたのだった。



 そんな外のざわめきに、会場の中にいた人々も気がついたようだ。何に騒いでいるのかと気にする素振りをみせ、詳しい情報を得ようとチラチラと視線を入口へ向ける。社交界では話題に乗り遅れないことも、重要なのだ。

 人伝にどうやら、エスコート無しで来た者達がいるらしいと伝わると、娯楽に飢えた紳士淑女の好奇心が刺激されたようだった。その集団は誰なのかと益々気になって、ひそひそと面白おかしく陰口を交わしながら待っていたのだが……。

 主催者であるランスフォード公爵夫妻に挨拶を交わしてからこちらに歩いてきたその令嬢たちの顔を見て、紳士たちは皆、一様に納得した表情になった。

 彼女たちが来たくて一人で来たわけではないのだと、分かったからである。

「ふむ。とうとう、殿下まで。これは問題ですな」

「左様、左様。ここまで婚約者をないがしろになさるとは、いけません」

「側近の方々まで一緒になってエスコートをすっぽかされるとはねぇ? そこまで、夢中になられているということか。由々しき事態ですなぁ」

「これは、パートナーを同伴されなかったご令嬢方を攻められませんね」

「当然ですよ。むしろ、被害者と言えるでしょう。全く、あのの、どこがいいんだか。まぁ確かに、女らしい体つきはしているが」

「くくくっ、立派なものを持っておりますからねぇ。相当、ご執心なようですよ」

「ええい、笑い事ではないわ。本来、殿下をお諌めすべき立場の高位貴族の令息達までが、揃ってバカをやっておるとは……情けない」

「全くです。若気の至りとは言え、困ったものですねぇ」

 しかし、その彼らもまさか、話題に上がった愚かな者達のせいで、今まさに予断を許さない事態に陥っていることまでは、気づいていなかったのである。

 そして彼女達が笑顔の裏で、今後の人生を左右するような、深刻な会話を密やかに交わしていたことも。

 貴族なら、この状況に至る過程の情報を集めて大体は把握しているだろうが、それでも今夜の狂騒までは、推察できなかったらしい……。




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