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第76話 嘘ばかりだった
しおりを挟む決してサリーナの言うような、良い待遇は受けていないだろう。
だが、彼らのその後の様子を、もしかしてもっと他にも知っているのだろうか。
「攫われた彼らが今どこにいるのか、何か聞いていないか? どんな小さな事でもいいから……」
「そんなの、知らないわよっ」
「そうよね、貴女の興味は彼らを売り渡すことで得られる報酬だけ……ですものね、貧乏子爵家のお嬢さん?」
「なによっ、またそうやってわたしをバカにして! お金は帽子屋さんが渡して来るから受け取ってあげてただけよ!」
「……報酬が出ていたのか? そうか、それが目当てだったのか」
魅了魔法で誘惑した若者達から、何もかも奪い取っていたとは聞いていたが、そこまでとは……。
耐えきれないというように顔を歪めるリアン。
「あなたにとってはおいしいお仕事だったということかしら? 魅了魔法で夢中にさせて、飽きてきたらサーカス団へ下げ渡す。楽しんでいるだけでお金をもらえるという仕組みだったのでしょう?」
「フンッ。態々聞かなくても、どうせもう調べてあるんじゃないの?」
開き直ったサリーナは、ふてぶてしかった。
「貧乏子爵家で、新しいドレスを買うお金も無いほど困っていると言っていたのも……あれも嘘だったと?」
「……」
「ええ。そうですわ、リアン様」
そっぽを向いてだんまりを決め込むサリーナの代わりに、ダフネが答えた。
「実家が金銭苦なのは事実ですが、彼女には不当に得た報酬がありましたもの。大体、そのお金がないという彼女の主張も、おかしいとは思われませんでした?」
「え?」
「髪も肌も、初めから潤っていて艶やかでしたわよね? 指先までしっかりとお手入れが行き届いておりましたでしょう?」
ダフネに指摘されて、当時の事を思い返してみる。
「……そう言われてみれば、そうだったかもしれません」
少なくとも握り返した手は荒れた様子もなく、見た目通り瑞々しく、滑らかだったのはよく覚えている。
「着ていたドレスや装飾品も色合いだけは地味でしたが、よく見れば公爵家のお支度にも劣らない品質のものでしたし。全て、魅了した殿方達からの贈り物かと思っておりましたが、どうやら一部は違ったようですわね」
不当に稼いだ報酬は全て、自分を磨き、着飾ることに注ぎ込んでいたらしい。
「そうなのかサリーナ?」
「だって、仕方ないじゃない! みんなサリーナの欲しいものを全部は買ってくれないんだもの!」
自分が悪くない、自分の願いを叶えなかった彼らが悪いんだと叫ぶ。
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