皆まとめて婚約破棄!? 男を虜にする、毒の花の秘密を暴け! ~見た目だけは可憐な毒花に、婚約者を奪われた令嬢たちは……~

飛鳥井 真理

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第123話 経過報告 後編

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「取り急ぎの報告は以上となります」

「ご苦労。頼むぞ、クロウ。最優先で取り組むように」

「はっ」

 公爵の激励に、影達の長は恭しく頭を下げる。



 いつの間にか、部屋の中には彼とランスフォード公爵の二人だけとなっていた。

 他の影達は全員、任務に戻ったらしい。



「いよいよ大詰めでございますね。厳しい戦いになりそうです」

「全くだよ」


 ぽつりと呟かれた長の言葉に、公爵も同意するように頷いた。


「何しろ今回は帝国と隣国という、厄介な二大大国が絡んでいるからね。長期戦は避けたい」


 友好条約を結んだ上で、表面上は敵対関係にはない状態でも緊迫した綱渡りをしなければならないのだ。

 三国の力が拮抗しているからこそ、早めに沈静化させないとまずい。

 両隣の国に隙を見せることになりかねないのだから。



「必ずや良い報告を持って参ります」


 真剣な顔つきで答える部下に頷きながらも、公爵にはある懸念を払拭出来ないでいた。


「いい決意だ。しかし今回無事、乗り越えたとしても頭の痛い問題が立ちふさがっている」


 クシャリと髪をかき混ぜながら、肩をすくめて呟く。


「暫くはこちらが不利な立場になるのが悔しいな」

「統括、それはランシェル王子のことでしょうか?」

「……そうだ」

「やはり、次期王位はこのままなのですか?」

「ああ」

「……っ!」

「まぁそう怒るな」


 王家の影達は長年、アランの実の母親を帝国から守りきれなかったことを悔いているのだ。

 あれは防ぎようがなかったのだと公爵や国王がいくら言っても、なんの慰めにもならなかった。

 可愛らしく賢いあのご婦人が、未来の王妃になると信じて仕えていた影達の、複雑な心中は察して余りある。



 頼むから王妃とランシェルをその手にかけないでくれよと祈りながら続ける。


「王位をアランに継がせたいのは私も同じだ。それがを考えれば最善だということも」

「……統括っ」

「だが、我が国の立地では周辺国の情勢を無視して事を推し進めることはできない。当然、帝国との約束もな」

「分かっては……いるのです」


 悔しそう俯くクロウ。

 しかし今度はそれ以上、何も言わなかった。


「次代が傷持ちではナメられるだろう。今後も水面下での戦いは続く。不利な条件は覆さなければ……な」


 悪いイメージを払拭するには、王子達に死ぬ気で名誉回復に励んで貰うしかない。


「今宵の醜聞は、瞬く間に周辺諸国に広がるだろう。いくらお前達が優秀でも人の口すべては防げまい?」

「そう……ですね」


 騒動は勿論のこと、サリーナが破滅する姿は視覚的にも相当、悲惨でショックだったはず。

 インパクトが強すぎたのだ。

 あれでは目撃者の記憶から、しばらく薄れることはないだろう。


「だが今回の件が片付けば状況は変わる。人の国で好き勝手するのはこれで最後にしていただこう」

「勿論です、統括」


  思い知らせてやる、と瞳をギラつかせる、普段の陽気な公爵からは想像できない姿に、クロウも心を熱くした。

 そして、必ずやりとげてやると拳をギュッと握りしめたのだった。




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