元ブラック塾講師、銭湯の上でFIRE生活はじめました。

第3部 第32話「台湾・夜市発！薬膳ラーメン計画」

翌日。義春と紬は、リーメイに案内されて温泉街の奥にある薬膳研究所を訪れた。
木造の建物に入ると、壁一面に並ぶ薬草の瓶、天井から吊るされた乾燥ハーブ。まるで薬屋と厨房が合体したような空間だ。
「ここで、新しい“薬膳ラーメン”を開発しましょう！」とリーメイ。
「おお……これはテンション上がる」
「体調鑑定スキルは持ってないけど、健康オタクの血が騒ぐわね」と紬が笑う。
テーブルには、台湾特産の食材が並ぶ。
・枸杞（クコの実）
・当帰（トウキ）
・生姜
・八角やシナモンなどの香辛料
・そして夜市で人気の牛肉
「これを日本のラーメンスープと組み合わせると……」と義春が腕を組む。
「薬膳牛肉ラーメン！」と紬が即答する。
「それ、絶対おいしいやつ！」
――試作開始。
義春は鍋に牛骨と生姜を入れてじっくり煮込み、紬が横で薬膳スパイスを調合。
リーメイは香りを嗅ぎながら「うーん、八角は少し控えめにした方が日本人には食べやすいかも」とアドバイスする。
数時間後、完成したのは――
透明感のあるスープに浮かぶ牛肉と青菜、赤いクコの実が彩りを添える一杯。
「じゃ、いただきます！」
三人がレンゲを口に運ぶ。
「……！あっさりなのに、体にすーっと染み込む！」と紬。
「薬膳の香りが立ってるけど、ちゃんと“ラーメン”だ！」と義春も驚く。
リーメイもにっこり笑い、「これは夜市でも絶対人気出ますよ！」
――その日の夜。
三人は夜市の一角に即席の屋台を構え、試作した薬膳ラーメンを提供した。
屋台の赤提灯に「日台薬膳拉麺」と墨書きされ、行列ができていく。
「ヘルシー！」「サウナ後に最高だ！」
外国人観光客も含め、あっという間にSNSで拡散されていった。
カメラの前で、義春は湯気の向こうに向かって言う。
「“ととのい”は温泉でもサウナでも、そして食事でも――人を笑顔にする力があるんだと思います」
紬が笑顔で続ける。
「だからこそ、世界中の人に届けたい。“健康で、幸せに整う時間”を」
夜市のざわめきと拍手の中で、台湾編は最高の盛り上がりを見せて幕を閉じた。