異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

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第3部 第45話 「湿地帯開拓、第一歩――試験田の挑戦」

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🧭 調査と測量
湿地帯の村に滞在し始めた陽介と紬は、毎朝まだ霧が立ち込める時間に村の若者たちを引き連れ、足首まで泥に沈みながら測量を行っていた。長靴がぬかるみに引き込まれ、「うわっ、また抜けない!」と村の青年が情けない声をあげる。
「踏み方にコツがあるんだ。体重を真下にかけると沈むから、こうやって分散させるんだよ」陽介は軽やかにステップを踏み、泥の上を滑るように進んで見せた。
「団長、これ剣術の足運びに似てませんか?」
「お、気づいたか。応用はどこにでも利くんだ」陽介が笑えば、周囲の緊張も少しほぐれた。
________________________________________
💬 作戦会議
夕刻、村の集会所に灯る蝋燭の炎が、壁に大きく影を揺らしていた。丸く囲んだ机の中央には詳細な地図と測量データが広げられている。
「水門はこの地点に設置します。潮の満ち引きを利用して水位をコントロールできる、最適な位置です」紬が冷静に指し示す。
「堤防は北と西を重点的に補強。東側は自然の高台があるから資材を節約できます」バルカスが緻密な図面を描き足す。
「なるほど……完成すれば洪水の被害は減るし、耕作地も倍になるな」村長が感慨深げに頷いた。
「問題は資材と人手だな」陽介が地図を見ながら言うと、紬が即座に「王都の土木支援部隊に要請しましょう。農場騎士団のネットワークも活用できます」と返す。
そのやり取りに、村の若者たちが目を輝かせていた。
________________________________________
🌱 試験田の開始
翌日、村人たちは慣れない農具を手に、泥まみれになりながら試験田の準備を始めた。油芋と湿地向けの穀物を混植し、どちらがこの土地に適しているかを見極める。
「この泥の感触、嫌いじゃないな」村の青年が笑い、陽介も頷く。「泥は作物を守る布団みたいなものだ。大事に扱えよ」
紬は少し離れた場所で土の状態や水温を測定し、手帳にびっしりと記録を取っていた。「この土地、まだ眠ってる力がある。引き出せば、この村はきっと変わるわ」
夕日が水面を黄金色に染める中、村の未来を変える第一歩が静かに踏み出された。
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